「引退後の人生考え」Jリーガーも副業時代? ユーチューバーにアパレル経営

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自身がデザインしたサングラスやTシャツを着用するJ1神戸の田中順也(右)。宇井愛美さん(左)と夫婦でアパレル事業を展開する(田中選手提供)

 Jリーグ1部(J1)ヴィッセル神戸の選手たちが、本業のサッカー以外にも活動の場を広げている。あるベテランはユーチューバーとして活躍し、中堅選手の一人はアパレルブランドを立ち上げた。今や、Jリーガーも副業を考える時代だ。(有島弘記)

 「一般層、特に若い子たちへの影響力がすごく強い。色んな人にサッカーの素晴らしさ、選手のことを知ってもらいたい」

 動画サイト「ユーチューブ」に着目し、投稿を続けるのがDF那須大亮(38)。2004年のアテネ五輪日本代表で、J1リーグ通算出場は歴代24位の400試合を数える。27年の歴史を積み重ねるJリーグを代表するプレーヤーで、16日に今季限りでの引退を発表したばかりだ。

 配信を始めた昨年夏は、現役選手との対談形式が多かったが、最近は「若年層が見て学べる」と、共演した選手に技術を披露してもらう動画が増えている。同僚の日本代表FW古橋亨梧(24)にはラストパスを引き出す「抜け出し」の動き、日本代表MF原口元気(28)=ドイツ・ハノーバー=には1対1のドリブル突破の極意を学んだ。那須のチャンネル登録者数は約9万人に増え、閲覧数に応じて広告収入が入る。

 趣味が高じて、アパレル事業を始めた選手もいる。元日本代表FW田中順也(32)は8月、妻でモデルの宇井愛美さん(32)と、洋服やサングラスなどを扱うブランド「CEUEU」(セウエウ)を立ち上げた。

 17年に加入した神戸で得た刺激も大きかったという。元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ(35)はワインやスニーカーを販売。元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキ(34)も衣料品の企画、販売など複数の事業を手掛ける。田中は「いい手本。現役が終わった後、家族を養う意味でも(ノウハウを)吸収したい」と語る。

 J1神戸の練習は午前中が基本で、午後は自由時間になることが多い。田中はこの時間を使って商品開発に取り組むが、あくまでも本業はサッカー。「おろそかになったら絶対に良くない。試合の2、3日前には予定を入れない」と切り替え、今季はチーム3位タイの10得点を奪った。

 神戸の2選手のように、今後はサッカー界にも副業が広がるのだろうか。

 田中は浦和レッズのDF鈴木大輔(29)がアスリート同士の対談動画を配信する自前のメディアを立ち上げたことを例に、「人生をプランニングする種類が増えている。キャリアが終わった後の人生を考え、空いた時間の努力の仕方を変化させることは、サッカーへのモチベーションにもなる」と強調する。自身も、副業が本業で活躍する力になっているという。

■現実は若くしての引退

 プロスポーツ選手が副業に手を広げられるのも、本業での実績や知名度があってこそ。ヴィッセル神戸の田中順也が「(サッカーを)頑張っても30歳を超えられず辞める選手がたくさんいる」と言うように、多くの選手が若くして引退に追い込まれているのが現実だ。

 Jリーグ育成部によると、現役を退いた選手の半数が指導者を含めたクラブスタッフに転身。一般企業への就職・起業、サッカースクールの経営や学校での指導-が後に続く。Jリーグは就学支援も行い、複数の大学と提携。加盟各クラブの中高生年代と、プロになりたての若手にキャリア設計の大切さを伝える研修も開いている。

 野球界では、独立リーグ「ルートインBCリーグ」が今年6月、キャリアサポートセンターを設けた。阪神タイガースなど日本野球機構(NPB)入りできる選手は一握りで、引退を見据えた支援は欠かせない。

 今季は全球団の選手に、引退後の希望職種など意向を調査。転職を決めた選手には協力企業を仲介した。神戸市須磨区出身で、自身も別の独立リーグでプレーした、同センターの吉川孝介さん(33)=関学大出=は「人と人、どこに縁が落ちているか分からない」とし、マナー面の勉強会にも力を入れる。