日大アメフト部危険タックル問題はなぜ穏便に解決したのか 危機管理学部のあやしげな面々

撮影・編集部

12月6日に日本大学は、2018年5月6日に行われた日大フェニックスと関西学院大学ファイターズ定期戦において、日大のディフェンスラインM選手が、関学のクォーターバック(QB)のO選手に対して後方からタックルして3週間の怪我を負わせた件により、懲戒解雇されたことを不服として大学を提訴していた内田正人前監督と和解したと発表した。内田前監督は、11月15日に東京地検立川支部において、I元コーチと共にM選手への指示が認められなかったとして不起訴処分になっている。

司法は、コーチや監督の指示をはき違えたM選手が、勝手に悪質タックルを行い、相手選手に怪我をさせた、と判断したわけだ。

あるアメフトファンのメディア関係者は、次のように語っている。

「M選手は日本記者クラブでの謝罪記者会見で、正直にありのままを語ったと思います。スポーツマンらしい潔い態度に多く視聴者が感銘を受けた。内田前監督が反則行為を容認するかのような発言をし、日大関係者の大人たちが責任回避をしようとした中、M選手の率直な謝罪は、現代日本の若者も捨てたものじゃない、と思わせた。ところが、司法はM選手を監督やコーチの指示を勘違いして暴走したアホの子にしてしまった。酷い話です」

昨年5月22日の記者会見におけるM選手の説明を見てみよう。

一人の選手を追い込む

5月3日、実戦形式の練習から外され、監督・コーチから「やる気がない、闘志が足りない」と言われる。監督から、Mは「やる気があるのか、ないのか分からない。そういう奴は辞めていい」、コーチからも「お前が変わらない限り練習にも試合にも出さない」と言われる。

5月4日、監督に6月に中国で開催される第三回大学世界選手権に日本代表を「辞退しろ」と言われた。1年生の前でハンドダミーを持って手本を見せたら、コ―チに「なぜお前が最初にダミーを持つんだ」と言われ、グランド10周を走らされ、練習からも外された。

5月5日、この日も練習から外された。練習後にコーチから「監督にどうしたらお前を試合に出せるか聞いたら“相手のQBを1プレイに目に潰したら出してやる”と言っている」と告げられ、「“QBを潰しに行くので、僕を使ってください”と監督に言いに行け」と言われた。さらに「相手のQBと知り合いなのか? 関学との定期戦がなくなってもいいだろう。相手のQBが怪我をして秋の試合に出れなくなったら、こっちの得だろう。これは本当にやらなくてはいけないぞ」と念を押され、「髪型を坊主にしてこい」と指示された。先輩からも「コーチから“Mにアライン(ポジション)はどこでもいいから、1プレイ目からQBを潰せ”と言っておけ」と言われた旨、告げられた。

M選手が危険タックルをするに至った説明を聞くと、監督とコーチが関学のエースQBに怪我をさせることを目的にしていたように思われる。アメフトやラグビーで、QBがゲームの司令塔であるのは分かるにしろ、反則覚悟でここまで執拗に狙うのは、不可解としか言いようがない。

怪しい面々

ある関係者は言う。

「関学のエースQBが狙われたのは、彼の父親が、当時おおさか維新の会に所属する地方議員だったからではないか、と囁かれています」

2015年4月15日、第189回国会・文教科学委員会で牧義夫衆議院議員が、JOC副会長だった田中英壽日大理事長と暴力団との関係を、当時の下村博文文科大臣に質問しており、下村大臣は調査することを明言している。

2017年6月のJOC役員会で、田中日大理事長は、JOC副会長を辞任している。当初は辞めることを渋った田中氏も、他の高齢の役員も辞めるのだから、と説得され、渋々辞任に同意したという。

牧議員は“維新の党”。関学のQBの父親は“おおさか維新の会”。もちろんおおさか維新の会と維新の党は、政治的には同一ではないが、そのあたりの区別が、大学役員でありながら、「切れる」だの「暴れる」だの、という言葉を使っていた脳筋監督にあったのだろうか?

内田前監督やゲイビデオ出演の過去まで発覚したIコーチも、不起訴となり,晴れて青天白日の身になったワケだが、日大三軒茶屋校舎にある危機管理学部の20人の教授のうち、9人が、

『法務省、検事、警察庁、公安調査庁、自衛隊、警察OB』

であり、日大の汚職疑惑を報道した読売新聞のOBもいることを指摘しておきたい。

日大の危機管理は、一見成功したかのように見える。だが、本当の危機はまだこれからかも知れない。

なぜなら、JOCの役員の中には、田中理事長以外にも暴力団の密接交際者がいると言われているからだ。来年のオリンピック時期に海外メディアが、いっせいに報道するのではないか。

田中理事長と暴力団幹部との写真も、今度はマイナーなネットのニュースサイトではなく、ニューヨーク・タイムズやCNNやBBCのような一流メディアで大きく報道されるかも知れない。(文◎高田欽一)

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