王将前社長射殺6年、ハトレース仲間が遺影肌身離さず「早く捕まえて」

鴫原さんが持ち歩く大東さんの遺影。「赤いネクタイがトレードマークだった。事件を忘れたくない」(大阪府枚方市)

 京都市山科区の王将フードサービス本社前で、前社長の大東隆行さん=当時(72)=が射殺された事件は、19日で発生から6年となった。温厚な人柄で多くの人に親しまれた大東さん。趣味のハトレースを通じて親交を温めてきた友人らは事件の風化を憂い、「早く犯人を捕まえ、真相を明らかにしてほしい」と訴える。

 「自分のハトは賞を取れるだろうか」。20年来の付き合いがあった渡辺秀司さん(65)=南区=は事件の数日前、大東さんから電話がかかってきたことを鮮明に覚えている。大東さんは近く開催される品評会に出品予定で、ベテランの渡辺さんにアドバイスを求める内容だった。「それが最後の会話になった。携帯電話に残したままの連絡先を見ると、あの時の元気な声がよみがえってくる」とつぶやく。

 今年2月まで京都府八幡市ですし店を営んでいた鴫(しぎ)原仁志さん(69)=大阪府枚方市=は6年間、大東さんの遺影を名刺入れにしのばせて肌身離さず持ち歩いている。大東さんはすし店近くの王将店舗を巡回後、頻繁に鴫原さんを訪問。ハトレースに限らず、仕事や私生活などさまざまな話を交わしてきた。鴫原さんは「何百人もいるパート従業員の顔と名前を『ほぼ覚えている』と言われた時は驚いた。会社内での信頼も厚かっただろう。大東さんのことを忘れることはできない」と懐かしむ。

 大東さんが所属した愛好家団体「日本鳩レース協会・城南競翔連合会」(現在の同協会・京都雅競翔連合会)は、高齢化などを理由に会員が減少。大会の運営に奔走する会員を気遣い、栄養ドリンクを振る舞うなどした大東さんの在りし日を知る人も少なくなった。当時はレースの打ち上げに「餃子の王将」を利用したこともあったが、こうした機会はほとんどなくなった。

 会員の新川良明さん(71)=京都府宇治市=は「仲間内で事件の話題が出ることも少なくなった」と複雑な思いを抱える。会長の古里治彦さん(51)=八幡市=は「『社長を退任したら、好きなハトレースを伸び伸びやりたい』と言っていた。悔しかったと思う」と言い、「早く犯人を捕まえて、真相を明らかにしてほしい」と願った。

≪王将フードサービス社長射殺事件≫ 

 2013年12月19日午前5時45分ごろ、京都市山科区の本社ビル前で、出勤してきた大東隆行前社長=当時(72)=が何者かに拳銃で腹や胸を撃たれて死亡した。現場から薬きょう4個と25口径の銃から放たれた弾丸が見つかった。京都府警捜査本部(山科署)は延べ約19万9千人の捜査員を投入し、現在も91人態勢で捜査。現場付近で見つかった遺留品などから福岡県を拠点にする暴力団組員の存在も浮上するが、事件への関与を示す証拠は乏しく、捜査は難航している。情報提供は捜査本部(0120)089110。

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