Jリーグへの入会を決めたFC今治について、Qolyでは「サカつく」の宮崎伸周プロデューサーと共に「リアルサカつく」の実態に迫っている。
矢野将文社長、経営企画室長の中島啓太氏に続き、マーケティンググループ長である青木誠さんに現場での運営について伺っている。
これまで6回にわたってお届けしてきた特集も今回がいよいよ最終回。FC今治は、Jリーグでどのように運営していくのだろうか。
クラブも応援の仕方を模索
青木:応援の仕方も、例えばJクラブなら応援の仕方というのはクラブごとで特色が出ていますが、うちはおじいちゃんおばあちゃんも多いですし、子供も増えてきているので、応援の仕方はまだこれからという感じがします。
――そこは全然、一緒にする必要ないんじゃないですかね。
宮崎:うん。あの“色”は素敵だと思います。子供も一緒にやってるんですよね。
だいたい熟成していると、おっかない兄ちゃんがゴール裏にいて「オラオラ」言ってたりするんですけど(笑)。僕らが観戦したメインスタンドでは後ろにいるおばあちゃんとかも声を出してるんですよ。それってすごいなと。
青木:なんか、孫とかそういうのを応援してるような感じなんですかね。
――年齢的にもちょうどそんな感じですよね。特に普段から交流されているのであれば親近感もありますし。
宮崎:試合前もブースのところにも選手の方が出ていましたね。直接コミュニケーションをとっているのは大きいなあと。選手との接点が多いですよね。
青木:接点はなるべく作ろうと思っています。スタジアムの距離も近いので、“距離感”は大切にしようと。
うちにガンバ大阪さんや浦和レッズさんみたいな応援がマッチするかといえば、どうなんだろうと。そこはこれからちょっとずつ時間をかけて、FC今治なりの応援を見つけていければいいなと思っています。
宮崎:応援も一緒に成長していければいいですね。
青木:はい。サッカーって普通、負けた後にゴール裏にいったら殺伐とした雰囲気で、罵声が飛び交ったりするクラブもあると思います。でもFC今治のファン・サポーターは今のところまだ「次も頑張れよ!」みたいな感じで声をかけてくれたり、拍手を送ってくれます。
それを修行(智仁)さん、大分トリニータからきたGKなんですが、彼もインタビューで「それはそれでアリだな」と、「選手はもちろん勝ちにこだわるけど、サポーターのそういう雰囲気を否定することなく、今治らしさとして大切にしていきたい」と話してて、改めて素敵な選手だなと思いました。
今治の人は勝ち負けよりあの場をお祭りとして楽しんでくれている感じがします。
――スポーツの文化が根付いていないと、勝ち負けしか見えなかったりするものですが、最初の段階でそこが楽しめてるのはいいですね。これも今治さんの企業理念が浸透しているのではないでしょうか。
青木:岡田さんのフットボールパーク構想が「勝っても負けても楽しんでもらえる」というスタンスなので、僕たちもその方向で取り組んでいます。
トップパートナーのデロイトトーマツコンサルティング合同会社様に実施いただいたアンケートによると、試合前後の満足度が高くて、逆にちょっと試合が落ち込んでいるというか、「まだ伸びしろがある」みたいな結果が出ているんですよ。
――あとはより結果が付いてくれば…という感じでしょうか。
青木:サッカーを見にくるわけですからね。昨日は雨の中で、ああいう試合(後半ATに決勝ゴールを奪われ0-1で敗戦)になっちゃうと正直、辛い部分はありますね。
台風のなか約1700人の方が来てくれて、一進一退の攻防の中、最後にやられると「うわーっ」てなりますが、こればっかりは勝負事ですから。
宮崎:これもたぶん、お客さんも一緒に成長していく過程なんでしょうね。こういう負け方もあるし逆に勝ち方もある。そこを越えていくと、ほんとに“コアサポーター化”していくのかなと。過酷ですけどね、この体験って(笑)。
青木:そうですね。今は一番、そこが課題というか。試合の内容とか結果は僕たちスタッフが変えることはできないので。
でも結果には影響を与えることができなくても、試合中に楽しんでもらう取り組みはまだまだできると思います。一体感のある応援とか、負けたけど応援が楽しかったねって帰ってもらえたらまた来てくれるかなと。そこをなんとか、先ほどのFC今治らしい応援というか、一体感を作れたらと思うんですけど、そこはこれからサポーターの皆さんとも一緒になって時間をかけて築けていけたらと思います。
宮崎:でもチームが一緒に模索するって面白いですね。
矢野社長とのお話の中にもありましたが、Jリーグだとクラブとサポーターの距離がほぼ定まっていて、応援も完成されている。特に熟成しているクラブはその線が強いので、一線を引かざるを得ない。そういうところは今しかできないのかなと。
試合の雰囲気を見ていて、あのコールの内容だったら“爆心地”じゃないところでも同じようにやると思うんですよ。「声を出せ」というタイプじゃなくて、盆踊りっぽい、お祭りに近いというか。
――極端にいえば360度ワーっていう感じでもアリかもしれませんね。
青木:そうですね。それこそバスケットボールのBリーグみたいな感じで。Bリーグは音楽も流せるしDJも入れられるからできているとは思うんですけど、ああいう感じのほうが今治には合っているかもしれません。
Jリーグではどう運営する?
宮崎:間もなくJリーグに上がれそうな位置にいる(※その後J昇格決定)。スタジアムも新しく建てたいという構想がある。
今よりも大きい15,000人を収容することを想定しているなかで、運営は今後どのように変えていくかなど考えておられますか?
青木:僕個人としてはまだ漠然としていて特別なものはないんですが、まずはホーム戦の運営は無事故・無事件というのが絶対というか。そのうえで楽しんでもらえる、また来たいと思ってもらえる運営をしたいと思っています。
ボランティア組織のVOYAGE(ボヤージュ)さんにすごくご協力いただいています。今80人くらいいて、常時30人くらいが試合に来てくれているのですが、その活躍がとても大きいので、彼らと一緒にJ2のスタジアムでも運営したいなという想いはあります。
イベントとか、具体的な部分はまだ全然です。たぶん今やっていることがもう一回り大きくなるイメージかなと。グルメだったり、出店だったり。あと今はビジョン(映像)がないので、その辺りをうまく使えれば。
宮崎:近隣のサービスを充実させて、試合以外にそこに訪れてもらう機会を作るのが狙いなのかなと。
青木:僕はあまりスタジアムのプロジェクトにはかかわってないんですが、その話はずっと出ています。
例えば食事どころもそうですし、岡田さんのなかでは障がい者の子供や学校に行けていない子供の集まる場所など、そういうものを考えているみたいですね。
宮崎:ボランティアのVOYAGE(ボヤージュ)さんはどういう組織さんなんですか?矢野社長からもうかがっていたのですが。
青木:以前は僕とコーチだけで一緒に運営していたのですが、それでもなんとかまわってたんですよ。何十人とかしかお客さんが来なかったので。
でも岡田さんがきて、800人になって、これはやばいと。これはもうボランティアを作らないとまずいと思い、ボランティアを募集しました。それで定期的に説明会を開いてちょっとずつ増えていった感じです。
そのなかで、なにか名前が出来たらいいねということで、その時の初期メンバーの人と一緒に名前を考えて、VOYAGE(ボヤージュ)に決まりました。
今年は初めて公募もしましたが、基本的にはメンバーの家族や紹介などで参加して、また来てくれている人がほとんどですね。小学生から70代まで、幅広い年代の方々に関わっていただいています。
J2のスタジアムが完成した時は、100人くらいいて、常時50人くらいは試合に来て運営のサポートをしていただけたらなと思っています。
青木:あとイベントというと、以前、鹿島アントラーズの試合を見に行ったのですが、鹿島さんはうちと真逆なんだなぁと個人的に思いました。
うちはほとんどの試合でハーフタイムに、地元の子たちがダンスのパフォーマンスをするんです。40~50人くらい。
なかなか2,000~3,000人の前で自分のダンスを披露する場所ってありませんよね。なのでそれを励みに練習してくれていたりして。ダンスや太鼓など、日々いろいろな習い事をしてる人たちの「晴れの場」というか、そういう場所になっているのかなという想いがあって、そこは今治ならではなのかなと。
でも、鹿島さんの試合を見に行ったら一切そういうのがなかったんです(笑)。それはそれですごいなと。試合自体がエンターテイメントという意識がクラブに浸透してるんだなと感じました。
宮崎:Jリーグのクラブはあまりそういうのはないですね。だから今回、ハーフタイムにいろいろあってびっくりしましたよ。
――最近はJリーグもDAZN(ダゾーン)さんの影響か、芸能人の方などもよく見かけますね。今治も今回の試合に来られていたのは芸人さんでしたかね?
青木:はい。昨日の試合は吉本興業のたけだバーべーキューさんと、元NMB48メンバーの門脇佳奈子さんに来ていただきました。
本当はピクニックシートでバーベキューもやってもらう予定だったんですが、台風の影響でことごとく…。
――ちなみに今スタジアムの開門は試合の何時間前ですか?
青木:3時間前ですね。
――そうなると長いですよね。Jリーグはだいたい2時間前で、J1なんかになるとスポンサーさんのCMなどもあるので、秒単位で忙しいんですが。
青木:確かに鹿島さんの試合ではそんな感じでした。これまではJFLで自由度が高かったので、いろいろと挑戦させてもらいましたが、Jリーグに行くといろいろと制約が出てくるんだろうなとは思っています。
宮崎:Jの試合だとだいたい「後半まだかな~」って思うんですよ。それでビールなんかを頼んで待つんですけど、今治では今回、雨も降っていたのに長く感じなくて、あっという間に後半が始まりました。
例えばトラックがあると全然見えないんですけど、ここはピッチが近いじゃないですか。だからお披露目をする価値がありますよね。ここがプチ“檜舞台”みたいな。
青木:そうですね。前日にリハーサルもやっているので大変ではありますけど。
でも、子供たちは楽しみにしていて、それを小学校の詩とか作文に書いてくれたりするんですよ。そういうのを見ると、クラブが掲げる「心の豊かさ」みたいなものを感じますね。
彼らにはJ2仕様のスタジアムになっても「1万人の前で踊ってくださいね」と伝えているので、その子達のためにも実現できるように、僕たちも頑張り続けます。
――ありがとうございました!
『プロサッカークラブをつくろう! ロード・トゥ・ワールド』は、セガの大人気サッカーゲーム「サカつく」の面白さをスマートフォン向けに再現。
クラブ運営や選手育成・補強、手に汗にぎる試合展開などを手軽に楽しめます。
プレイヤーは自分だけのオリジナルクラブの全権監督となり、クラブを育て、選手をスカウト。そして、育てた選手とともに世界の頂点を目指します。
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