長崎スポーツ この1年(6) ラグビーW杯日本大会 歴史刻み 多くの財産

スコットランド代表の事前キャンプ中に開かれたラグビー教室で、チームの元主将とふれあう子どもたち=長崎市総合運動公園かきどまり補助競技場

 今秋、日本で初めて開催されたラグビーワールドカップ(W杯)。史上初の8強入りを果たした日本代表のスローガン「ONE TEAM」が新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれるなど、ラグビーが日本中を席巻した。
 長崎県は開催地にこそ落選したが、長崎市がスコットランドの事前・公認キャンプ地、島原市がトンガの公認キャンプ地に選ばれた。両市は代表選手らによる教室や交流会、本番の試合を観戦するパブリックビューイングなどを実施。子どもたちをはじめ、大勢の県民が競技の魅力に触れた。
 中でも、長崎市の功績は大きかった。キャンプ誘致を始めた2015年ごろから、歴史的に縁があるスコットランドと継続して交流。互いの中学選抜チームが現地に遠征するなど、関係を深め、発展させた。
 世界ランキング上位のナショナルチームのキャンプ実施は、県スポーツ界にとっても意味があった。合宿や大会の誘致に新たな「実績」ができ、受け入れ側も経験値が向上。県ラグビー協会の松本浩理事長は「各競技が誘致にどんどん手を挙げて、今後につなげてほしい」と願う。
 今回の盛り上がりは、ラグビー界にとって競技普及のチャンスにもなった。全国的に増加中という子ども向けスクールの入会問い合わせに対応して、県ラグビー協会もホームページ内で各スクールの活動予定を発信。キックやパスなどを気軽に体験できるイベントも定期的に開いている。
 このように“ラグビー熱”が高まった最大の要因は、やはり日本代表の大健闘。これまでは「世界と戦うのは厳しい」という印象もあったが、今回はアイルランド、スコットランドと格上の2チームを連破した。松本理事長は「子どもたちがラグビーに現実味のある夢を持ってプレーしてくれるようになるのでは」と期待を込める。
 普及、強化の両面で大成功に終わった自国開催のW杯。日本のスポーツ界に多くの財産を残した大会だった。

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