住宅ローンの完済は67歳、学費はなんとかなっても老後がこわい…

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、ボーナスがあっても貯蓄が思うようにできず、教育費と老後資金に不安を抱える34歳のパート主婦。不安の原因は3つのローンにあるようです。FPの山本節子氏がお答えします。

今の家計のままでいくと、学費はなんとかなっても老後がこわいです。住宅ローンが重く、ローン完済は67歳の予定です。現状、月2万円を老後に向けて貯金していますが、学費に回すことになるかもしれないと思うと不安です。

ボーナスは年間で160万円ありますが、子どものピアノに年10万円ほど、収入保障保険に年3.6万円、車の保険に年7万円、親への返済に年12万円、がん保険2人分で年2.2万円、住宅修繕積立に年15万円、家電購入積立に年4万円、帰省費に年25万円など、ボーナスから支出している費目が多くあまり残りません。

子どもの教育費と老後資金を貯めるためには、何を見直して、どのように備えていけばよいのでしょうか。よろしくお願いします。

〈相談者プロフィール〉

・女性、34歳、既婚(夫:34歳、会社員)

・子ども2人:6歳(年長)、2歳

・職業:パート

・居住形態:持ち家(戸建て)

・毎月の手取り金額:27~28万円

(夫:19万円、妻:8~9万円)

・年間の手取りボーナス額:160万円

・毎月の世帯の支出目安:26万円

【支出の内訳】

・住居費:8万円

・食費:4万円

・日用品:1.5万円

・水道光熱費:1.3万円

・教育費:4万円(保育園代3万円含む)

・保険料:年間支払い

・通信費:1.2万円(スマホ2台、Wi-Fi)

・車両費:1万円

・お小遣い:4万円

(夫:3万円、妻1万円)

・奨学金の返済:1.23万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:2万円

・現在の貯蓄総額:

-使う予定の貯金80万円

-子どもの貯金100万円

-老後資金60万円

・現在の投資総額:

-つみたてNISA50万円

-ロボアド25万円)

・現在の負債総額:

-住宅ローン4250万円(月8万円、ボーナス時25万円×2回)

-奨学金148万円(無利子、月1.23万円、残期間10年)

-車のローン50万円(親に返済)


山本:老後資金が貯まるかどうかご心配のようですが、その原因は3種類のローンの支払いがあることです。なかでも住宅ローンが重すぎて、完済は67歳です。

でも、しっかり家計管理をしていらっしゃるので大丈夫。成功のカギは早めの対策です。その見直し方法を見てみましょう。

住宅ローンは繰り上げ返済して完済は「60歳まで」に!

夫の手取り年収は388万円(月19万円×12ヵ月+ボーナス時160万円)、住宅ローンの年間返済額は146万円(月8万円×12ヵ月+ボーナス時50万円)です。手取り年収に占める住宅ローンの年間返済率は37.6%になります。

ローンはこれだけではありません。親への車のローンの返済額は年12万円、奨学金の返済は年14.76万円(月1.23万円×12ヵ月)です。これらを住宅ローンの返済額と合計すると年172.76万円です。手取り年収に占めるローンの総返済負担率は、なんと44.5%にもなります。現在の家計に占めるローンの返済額が大きいと実感されるのはもっともですね。

ただ、親への車のローンは、あと約4年で完済。さらに、奨学金もあと10年で完済です。10年後になると、現在3本のローンは住宅ローン1本のみになるわけです。ですから車のローンや奨学金の完済後の浮いたお金は、しっかり繰り上げ返済にあてましょう。今からお金に目的を持たせておくと、生活費に消えてなくなることはありません。

住宅ローンの金利は低金利が続いています。「繰り上げ返済よりは投資に回したほうがいいのでは……」と思われるかもしれません。しかし元本保証の商品で住宅ローンの金利より高い商品はありません。ここは住宅ローンの期間短縮型の繰り上げ返済をして、60歳完済を目指しましょう。

なぜなら、以下の図にあるように、繰り上げ返済は早ければ早いほど効果が大きいからです。

その時の注意点が2つあります。1つは繰り上げ返済をし過ぎて、住宅ローン控除の金額が減らないように気をつけることです。平成26年1月1日から令和元年9月30日までに住宅ローンを借りた人の住宅ローン控除は、年末残高の1%の金額が10年間にわたって所得税額から税額控除できます。控除額は最大4000万円(住宅の取得等が特定取得以外の場合は2000万円)です。相談者の現在の住宅ローン残高は4250万円ですから、住宅ローン控除の終了までは250万円を繰り上げ返済できることになります。

もう1つは、繰り上げ返済の手数料と返済できる金額の単位を金融機関に確認しておくことです。これらは金融機関によって異なります。仮に繰り上げ返済の手数料が無料で、1円単位からだと、「1円貯まったら返す、1円貯まったら返す」ことができますね。ご主人の所得税額をチェックしながら、目いっぱい住宅ローン控除の制度を利用して繰り上げ返済をしてください。

人生100年時代と言われる昨今です。定年延長で60歳以降も働ける会社が多くなっています。60歳までに住宅ローンを完済できると、その後は働きながら老後資金を効率よく貯めることができます。

次は、そのための家計の見直し方法を見てみましょう。

子どもが小さい頃が貯め時!しっかり貯蓄を

支出の内訳を拝見しました。車両保険に加入していらっしゃるのでしょうか。車の保険で年7万円は高めですね。車両保険を外すととても安くなります。見直し項目の1つとして検討してみてください。

住宅修繕積立や家電購入積立は忘れがちな項目ですが、必ず将来支払う金額です。これらを計画的に積立していらっしゃるのは家計管理の上手な証拠。お見事です。家計全体もしっかり把握していらっしゃるので、この調子で家計管理を続けてください。

児童手当の資金は、「つみたてNISA」で運用していらっしゃるのでしょうか。若いうちから投資に慣れておくことはとてもいいことです。つみたてNISAは、ドルコスト平均法を使って毎月商品を購入していく方法なので、時間分散の効果があります。

2020年度の税制改正大綱で、2024年から「NISA」は「新NISA」に移行しますが、「つみたてNISA」の大筋は変わりません。注意点としては、預けっぱなしではなく運用成績を1年に1度はチェックしましょう。また、ロボットアドバイザーを利用していらっしゃるようですが、金融機関によって、アドバイス料が必要なところとそうでないところがあります。こちらもチェックしておくといいですね。

今後、2人のお子さんが小学校、中学校、高校、大学と成長されるとともに、子どもにかかるお金は、お稽古代、塾代、クラブ活動費、おこづかい、食費……と膨らんできます。今はまだ本格的に教育費がかからない時期なので、今が貯め時です。18歳前後の進路を決める頃に必要になる大切な教育費として、しっかり貯蓄しておきましょう。

若いうちから金融や経済に関心を持つと老後の安心につながる

現在、相談者の仕事の形態はパートです。子育てが一段落して仕事を増やしたくなったときに気になることが、これからも夫の扶養内で働くか、扶養の枠から出てしっかり働くかの選択だと思います。

扶養内で働く際に老後資金を確保する方法として、個人型確定拠出年金(愛称iDeCo:イデコ)への加入があります。現行では上限の年27.6万円(月2.3万円×12ヵ月)までイデコの商品を購入することができ、小規模企業共済として所得から控除できる制度です。他の所得がなければ、年収130.6万円(103万円+27.6万円)まで働いても、所得税や年金、健康保険も夫の扶養内で働くことができます。

若いうちからお金の諸制度を知り、投資に慣れておくと経済感覚を養うことができます。これから経済のしくみや制度は益々変化が激しく複雑になることが予想されます。金融や経済に関心を持ちアンテナを張っておくことは、ご自分の家計を見直すときに役立ちます。ひいては老後資金を貯めることができ、安心した老後に備えることにもなります。これからもこの調子で、繰り上げ返済をしながら、1年に1度は家計を見直して改善に努めてください。

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