長崎県内交通事故25%が高齢者の過失 被害男性「怒り消えない」 県警「運転不安ある人は自制を」と呼び掛け

高齢者が運転する車に追突された車(被害者提供)

 長崎県内で今年1~11月に起きた交通事故のうち、過失の度合いが大きいとみられる「第1当事者」の年代別割合は、高齢運転者(65歳以上)が最も多い約25%に上ることが、県警のまとめで分かった。

 近年、交通事故が減少する中で高齢者の事故の割合は増加しており、県警は「高齢者の生活の足の確保という問題も根底にあるが、少しでも体調や運転に不安がある人は自制を」と呼び掛けている。25日まで年末の交通安全県民運動。
 11月上旬の朝。佐世保市内で飲食店を営む自営業の男性(40代)は買い出しで近隣のスーパーを訪れ、店舗前の駐車場に車を止めた。5分後、買い物を終え外に出ると、店舗前に設置された自動販売機に自分の車の前部が衝突している光景が目に飛び込んできた。「エンジンは切ったはず」。慌てて駆け寄ると、別の乗用車が後方から追突した状態で止まっていた。
 運転席で高齢男性(後で70代と判明)がうつむいたまま。ぶつかった理由を尋ねても「具合が悪い」「体調が悪い」「足も痛い」と繰り返す。自営業の男性にとっては3年間こつこつ貯金し、3カ月前に購入したばかりの新車だった。「怒りは消えない。運転操作ミスとしか思えない。体調が悪かったのならなおさら運転を控えれば良かったのに」。そうため息をつく。
 今年4月、東京池袋で高齢者が運転する乗用車が暴走し母子2人が死亡するなど、相次いだ高齢者の危険な運転が社会問題化している。免許返納が増え、高齢者とその家族の中では、生活の利便性と安全に向き合った模索が続いている。警察庁は、一定の違反歴がある高齢者に対する「運転技能検査」を創設し免許更新時に試験を義務付ける方針を固めるなど、制度も変わろうとしている。
 県警交通企画課によると、県内では今年11月末現在、高齢者が第1当事者となった事故は906件(前年同期比60件減、死亡事故は9件)と全体の約25%。年代別で次いで多かったのは20代の約18%だった。また、今年11月末現在で「ぼんやり」「脇見」など安全運転義務違反が原因となった交通事故の第1当事者をみると、高齢者は610件(約23%)と年代別で最も多かった。
 県警運転免許管理課は「高齢者は『何十年も無事故無違反だから大丈夫』という意識が強い。免許返納とは別に、高齢運転者の事故防止には家族の見守りや、不要不急な車の利用は避けるなどの意識が重要」と指摘する。

交通事故の第1当事者の年代別内訳

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