住所不定の元夫が妊娠中の元妻を暴行 逮捕後も元妻へ聞くに堪えない暴言 それでも男が反省しない理由とは

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西巻健太(仮名、裁判当時36歳)とその妻葉子は結婚後、わずか1年たらずで離婚をしました。二人の間に産まれた子どもの親権は葉子に渡り、1人で子どもを育てていました。離婚後も二人は時々会っていたようで子どもが2歳になった頃、彼女は2人目の子どもを妊娠しました。

子育て、そして妊娠、とても1人の力で全てをこなせるはずもありません。

ある日、彼女は元夫である健太を呼び出しました。2人が会ったのはカプセルホテル脇の路上です。そこで事件が起きました。

住所不定の元夫

彼女は健太に会うなり話を切り出しました。

「ちゃんと昼間の仕事して働いてよ」

彼は離婚後、養育費をほとんど払っていませんでした。というより払うことができませんでした。というのも彼はずっと定職に就くこともなく、それどころか住所すら定めず友人宅やサウナなどで寝泊まりしているような有り様だったからです。

すでに離婚しているとはいえ、2人目の子どもが産まれるという時にそんな状態では困ります。口調などかなりキツい言い方をしていたとは類推されますが、彼女の要求は至極まっとうなものです。

しかし元妻にそう言われて彼は激高しました。2歳の子どもを抱いている彼女の両肩を押して転倒させ、顔を足で蹴りました。そして髪の毛を掴んで引きずりまわし、妊娠している彼女のお腹を蹴り、踏みつけました。

その後、逃げだした彼女を追いかけて殴りつけ、通報を受けて駆けつけた警察官の前でも再び頭を叩くという暴力に及んでいました。

幸い、被害者のケガは大したことはありませんでしたが彼は傷害罪で逮捕、起訴されました。

そもそも、2人が離婚した理由もDVです。

「言い合いになるとすぐに手が出てしまいました」

と、過去のことを振り返っていましたが相当酷い暴力をふるっていたようです。

二人で家にいる時にささいなことで口論になり妻を掴んで投げ飛ばしたことがありました。この時に彼女は顔をぶつけてしまい、その結果下の前歯が折れ、上の前歯が唇を貫くという大怪我になってしまいました。

事件になってもおかしくないほどの暴力です。

酔うとカッとなって……

彼が暴力に及んでしまう原因、それは酒でした。

「酒が入るとケンカっぱやくなります。カッとなってすぐに手が出てしまいます」

と自身の酒癖について話していました。

余談になりますが、このように裁判所の法廷で、

「酒を飲んでいたから事件を起こした」

と語る被告人はとても多いです。言うまでもありませんが、どんなに酒を飲んでも多少の失敗はあるにせよ公開裁判になってしまうような事件まで起こす人はめったにいません。このような言い訳をする人間のほとんどは、事件の原因は自分にあるにもかかわらず罪を犯した自分に向き合うことから逃げて安易に酒のせいにしている者ばかりです。

さて、彼の場合は酒癖の悪さは以前から自覚していました。自覚した上で事件時は、

「だいたい週に5日ぐらいは飲んでました」

という生活を続けていました。

養育費は払っていなかったのに酒を飲む金はあったようです。

元妻への暴言

今後の酒とのつきあい方をどうするのか、について検察官が質問していました。

彼は自身の供述によれば「酒を飲んでいたせいで」、子どもを抱いている妊娠中の女性に対して傷害事件を起こした人間です。たとえウソでも法廷では断酒宣言くらいはすると思いましたがそうはしませんでした。

「今後は、お酒を飲む時はその前にご飯を食べてお腹をいっぱいにしてからにします。そうすればそんなに量を飲むことはないです」

自分の起こした事件が、とても悲惨な結果を招きかねないものだったことを理解しているとは思えません。

逮捕後、拘置所に面会に訪れた元妻に対して、

「お前、一生恨むからな」

「タレ(被害届)取り下げろよ」

などと口走っていたことからも、何も理解していないことは明らかです。

その後二人は話し合って、もう二度と会わないと決めたそうです。傍聴席にも元妻らしき人はいませんでした。(取材・文◎鈴木孔明)

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