イチロー氏、現代を生きる少年少女へ伝えたいこと「自分で自分を教育しないと」

「イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式に出席したイチロー氏【写真:編集部】

イチロー氏が閉会式に出席、指導者転身へ意欲「みんなと別の場所でまた会うことができるかも」

 今年3月に現役を引退したマリナーズのイチロー会長付き特別補佐兼インストラクターが22日、愛知・豊山町の社会教育センターで行われた「イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式に出席した。自身が大会の会長を務める同大会は今年の第24回大会が最後。黒のスーツ姿で登場したレジェンドは指導者転身への思いを打ち明け、故郷の野球少年、少女へメッセージを送った。

 球界の未来を支える野球少年と少女へ――。イチロー氏はシーンと静まり返った会場で熱く切り出した。

「これからみんなが野球を続けていくかどうかは分からないけど、僕は先日、学生野球資格回復という研修を受けてきまして。ひょっとしたら、みんなと別の場所でまた会うことができるかもしれない。なるべく、みんなにこれから野球を続けて欲しいなと思っています」

 12月中旬に「学生野球資格回復制度」の研修会を受講。来年2月7日の日本学生野球協会による審査を経て、翌8日から指導が可能になるが、まずは「指導者・イチロー」としての再会を約束した。

 イチロー杯の大会会長としての最後のメッセージ。少年少女へ身振り手振りを交えて話す姿は、“イチロー先生”だった。テーマは2つ。1つ目は自分自身を律し成長へつなげることだ。

「教えてくれる人たち、先生たちは、なかなか(厳しく言うのが)難しいらしい。先生よりも生徒の方が力加減でいうと強くなってしまっているような状況があるみたい。このことを僕は今、心配している。『どうやって教育するんだろう』とよく考えることがあります」

「みんな小学生だけど、高校、大学、社会人になる前に経験する時間、そこで自分自身を自分で切り開いてほしいと思います。厳しく教えるのが難しい時代、自分で自分のことを教育しないといけない時代に入ってきた。自分は小、中、高となかなかそうは思えなかった。自分には厳しい先生がいた。今を生きているみんなには、それが大切なことと覚えておいていってほしい」

インターネット社会の現代へ「外に出て分かることがたくさんある」

 2つ目は自ら体験することだ。インターネットなどが発展した現代社会について、「いろんなことが情報として、すぐ頭に入れられる時代。いろんなことが分かる。すぐに携帯、スマホで調べられる」と表現。だからこそ、積極的に外に出て学ぶことが重要と説いた。

「僕が27、28歳に大リーグに挑戦したわけだけど、外に出て分かること、行ってみて初めて分かることがたくさんあった。野球の世界は狭い世界だった。外に出て、気が付くことがあるし、勉強不足もいっぱいあった。それを知識として持っているじゃなく、体験して感じてほしい」

「日本は素晴らしい、と外で感じました。そういう経験を将来して欲しいなと思います。今まであった当たり前のことは決して当たり前ではない。価値観が変わるような出来事を体感して欲しいなと思います」

 1996年にスタートした同大会は今大会が最後。この日の閉会式には300人を超えるファンが集結し、イチロー氏のメッセージに耳を傾けた。この日の熱弁について、イチロー氏は「日本で9年間、アメリカで19年間、プロ野球選手として過ごしてきて、何かみんなに伝えられないかと」、「28年の現役を終えて、みんなに覚えておいて欲しいこと」と話した。故郷の野球少年少女への“ラストメッセージ”に満員の会場から温かい拍手が送られた。(Full-Count編集部)

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