令和2年度政府案を閣議決定 社会保障関係は

2020年12月20日、政府は令和2年度の予算案を閣議決定した。最大規模の支出と新規国債発行の減少が話題となっているが、膨らみ続ける社会保障費にどう対処しているのかも注目すべきポイントだ。政府の発表資料からその傾向を読み取る。

医療は薬価値下げ分で、全体として削減

政府による説明資料より https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/01.pdf

 医療については、働き方改革などの関連で軒並み微増としている。これは全業種のうち残業が特異的に慢性化していることや、構造的な問題であることから早急に削減することもままならないこともあり、まずは人件費を増やして対応することしかない、ということが背景である。

 他方、薬価についてはここ数年の流れに沿ったかたちだ。合計1.0%の国費削減を実現するとしており、医療全体としては0.45%、500億円弱の削減効果を見込んでいる。

消費増税分の費用は「無償化」「自助努力支援」「マイナンバーカード普及」に

政府による説明資料より https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/seifuan2019/01.pdf

 政府が来年度予算全体のポイントとしてあげるのが「消費税率引上げ分による社会保障充実」だ。今年度予算で実現した「幼児教育・保育の無償化」の通年実施による予算増加に加え「高等教育の無償化」もスタートする。若い世代への投資として政府が以前からアピールしている点だが、一方で待機児童解消への取り組みに対しては、かなり薄い予算配分となっている。自治体が主として関与する部分が大きいことは否めないが、基金等の仕組みで差配することは十分可能なだけに、バランスの悪さを指摘されても致し方ないだろう。

 また「予防・健康づくりの取組の抜本的強化」として、新規予算700億円がつけられているが、これはいわゆる「保険者努力支援制度」のことである。これは、自治体を「特定健診の受診率」「生活習慣病(ほぼ糖尿病)の重症化予防の取り組み」「努力する被保険者へのインセンティブ」「ジェネリックの使用割合」などの基準で評価し、高得点を得た自治体に、得点に準じた財政支援を交付金のかたちで行うという仕組みだ。来年度予算は700億円だが、運営状況を見て拡充される見込みとされている。今後は、住民の健康維持に努力しない自治体は予算を削られていくことになる。

 また、普及率の上がらないマイナンバーの普及に向け、以前からある「医療情報化支援基金」に760億円あまりを追加して対策を強化する。これは先日から報道されているキャッスレス機能を付加した場合の25%還元の予算は含まれていないが、4月以降、様々な普及策がメディアで話題となるだろう。

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