老後資金は足りる?50代夫婦「退職金はなし、年金は二人で20万」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、定年を8年後に控えた50代夫婦です。年金は2人で20万円ほど。退職金はなく、65歳から手取りも減るといいます。老後の生活費は足りるのでしょうか。FPのたけやきみこ氏がお答えします。

給与の手取り額が少なく、退職金もないため老後が不安です。貯蓄額は現在1600万円くらいです。定年は60歳ですが、その後は65歳まで働けるものの、手取りは10万円くらいではないかと思います。

妻と2人、老後はどうやって暮らしたらよいでしょうか? 現在の家計で見直すべきところはありますか。年金は2人で20万円ほどになると思います。

〈相談者プロフィール〉

・男性、52歳、既婚(妻:50歳、パート)、26歳の子どもはすでに独立

・職業:会社員

・居住形態:持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:30万円

(夫:22万円、妻:8万円)

・年間の手取りボーナス額:50万円

・毎月の世帯の支出目安:26万円

【支出の内訳】

・住居費:8.2万円

・食費:5万円

・水道光熱費:1.5万円

・教育費:なし

・保険料:2.5万円

・通信費:1万円

・車両費:2万円

・お小遣い:4万円

・その他:2万円

【資産状況】

・年間の貯蓄額:60万円

・現在の貯蓄総額:1600万円

・現在の投資総額:なし

・現在の負債総額:980万円(住宅ローン)


たけや:定年まであと8年ほど。定年後のご夫婦の生活について、リアルに考えるようになるのが50代ですね。じつは当の私も相談者様とほぼ同じ年齢です。老後の暮らし向きについて一緒に考えてまいりましょう。

老後の経済設計の考え方

定年後の主となる収入は公的年金になります。その収入だけで生活ができるのかも気になるところですね。それでは、老後の経済設計について考え方をお伝えします。

(1)定年後に得られる収入
まず、65歳から受給できる公的年金を90歳まで生きたと仮定して総額を計算してみます。

【公的年金の金額×先の人生の年数=生涯のうち受け取る年金収入】

年金額20万円(暫定)×12ヵ月×25年=6000万円

なお、原則、年金から税金や社会保険料が差し引かれますから、実際の手取りはこの年金額どおりではなくなる可能性があります。

このほか、65歳まで現状の貯蓄額を積み立てた場合の貯蓄額も計算してみます。この先、積み立てできる貯蓄額が、60万円×8年間=480万円として、現在の貯蓄残高1600万円に加算すると、60歳時点では2080万円が準備できそうですね。

(2)定年した先の人生にかかる生活費
次に、65歳以降の夫婦の生活費を計算してみましょう。

【65歳以降の生活費(年)×先の人生の年数=生活に必要なお金】

18万円×12ヵ月×25年=5400万円

(※先の人生の年数は90歳まで生きたと仮定)

相談内容から引用すると、支出は18万円くらいでしょうか。いただいている情報からですと65歳時点では住宅ローンは完済されていますので、住宅ローン返済額は支出には含んでいません(住宅関連の費用として、固定資産税や修繕費を忘れないこと)。

この試算額は、夫婦揃って90歳まで生きた場合のケースです。夫婦のどちらかが先に亡くなれば、生活費が減ると考えることもできます。例えば80歳時点から70~80%に生活費を抑えて計算してもいいでしょう。ただし、この支出は、最低限度の生活費用である点に注意しましょう。

緊急的な費用は含んでいませんので、下記の費用も加算しておくと安心です。

・突然の入院費用
・災害に遭った場合の費用
・介護費用
・その他(住居の修繕費、大物家電や車の買い換えなど)

(3)収支のギャップを確認して、対策を考える

最後に収支のギャップを確認して、対策を考えましょう。

【収入―支出=ギャップ(過不足額)】

(6000万円+2080万円)-5400万円=プラス2680万円(←嬉しいギャップ)

夫婦が90歳まで生活するためには、現状の情報での収入で足りています。

繰り返しますが、生活するための試算でしかないので、この先に介護や入院、災害などに遭った場合の経済的損失、または老いによる施設への入所などの費用は含まれていません。

したがって、これで安心せずに、できれば奥様は60歳まで働き10年間収入を増やし、その分を積極的に貯蓄に回すことも考えてみましょう。会社員は、自営業の方とは違い、就労して現金を得られる期間が限られています。働ける時にしっかり収入を得ておきましょう。

“現状のまま”なら最低限度の生活はできる?

住宅ローンがあと10年くらいで完済されると思います。年金生活に入る年齢の時には、住宅ローンがないため、毎月の支出は26万円-8.2万円=約18万円です。年金の収入だけでは足りないという事態が生じた場合は、節約して切り詰めるのか、不足分を手元の貯蓄から取り崩すのかはご夫婦で話し合っておきましょう。

このほかに、定年を見据えてできることは、生命保険の見直しです。定年後の不要な保障を見直しすると保険料は今よりも減らすことができます。死亡保障の見直しをすることが一般的ですが、奥様が長生きされて資金不足になることが不安で、そのまま保障を残しておいてほしいと考えていらっしゃる可能性もあります。生命保険の見直しで減額される場合は配偶者の気持ちも確認しておきましょう。

また、車が必要な地域の場合、車両費は必要な費用になります。車の買い換えはもう1回はありそうですので、買い換え用の資金も準備しておく必要があります。

退職金は自分でも作ることができる

退職金がない場合、ご自分で退職金をつくることも検討できます。iDeCoを利用して仮に月額2万3000円を掛けることができれば、投資による運用成績を考慮しない場合、8年間で約220万円を準備できます。また、iDeCoの掛け金は、所得控除を適用することができるので節税が期待できます。

50歳代の場合、定年はまもなくやってくる大きなライフイベントです。今すぐにできることはすぐにでも始めることが大切です。定年退職までは残り8年ほどです。奥様にも手伝ってもらう!くらいの気持ちを持って、ご夫婦でラストスパートをかけてみましょう。

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