製造現場の作業員が楽に動かせるロボット ―2019国際ロボット展レポート6

「2019国際ロボット展(iREX2019)」(12月18日~21日、東京ビッグサイト)のレポート第6弾は「製造現場の作業員が楽にロボットを操作できる」を切り口に住友商事マシネックス、不二越の展示を紹介する。

Doosan Roboticsの協働ロボット

住友商事マシネックスは韓国のDoosan Robotics(以下、Doosan)の協働ロボットを展示し、組立作業などのデモンストレーションを行っていた。(トップ画像)

2019年11月、住友商事マシネックスはDoosanと総販売代理店契約を締結し、協働ロボットの日本国内での販売を開始している。Doosanの協働ロボットは主に産業用途である一方、韓国国内では調理ロボットとして導入する飲食店もあるなど汎用的に使われているという。住友商事マシネックスとしては、その汎用性を活かし顧客の側で用途を工夫しながら製造業での協働ロボット普及を目指す狙いがある。

Doosanのアーム型協働ロボットは6軸にトルクセンサが搭載されている。これによって力覚制御や衝突検知を行い、安全で精度の高いロボット操作を行うことができる。下記の動画にあるように、手が軽く触れた程度でもアームが止まり、動作の方向を修正するようになっている。言い換えれば特殊な操作なしに、現場の作業員でも手を使ってロボットの方向を変える、あるいは障害物を認知させることが出来るということだ。

ロボット本体を手で直接動かして動作を覚えさせる「ダイレクトティーチング」についてはレポート2で触れているが、Doosan製の協働ロボットでもアームを動かしながら「ダイレクトティーチング」を行う事が出来る。今回、その「ダイレクトティーチング」を体験してみた。

上部にあるボタンを押しながらアーム本体を動かし、部品を所定の位置にはめ込む動作を覚えさせる。覚えた動作については、下記写真にある「ティーチングペンダント」と呼ばれるタッチパネルを操作して再生させる。

筆者がアームを垂直に下ろそうとしたところ、角度が斜めに入ってしまった場面があった。ここで説明員は「ティーチングペンダント」を使って、アームの降下角度を直角に修正した。X軸・Y軸・Z軸それぞれで精度の高い垂直移動が出来るのがDoosan製協働ロボットの特徴であるという。

「ダイレクトティーチング」による直接動作を教え込ませる方法や、「ティーチングペンダント」を使って指一つで再生する点など、ロボットの知識がない作業員でも操作し易い印象を受けた。

不二越の音声認識ロボット

切削工具などのマシニング事業を行う不二越は、総勢12台のロボットが一斉に動いて自動車の溶接を行う「高密度スポット溶接システム」など大規模な産業ロボットの展示をする一方で、Microsoft Azureと連携した音声認識AIロボットのデモンストレーションを行っていた。

筐体のなかにアーム型ロボットがあり、その下にお菓子がばら撒かれている。デモンストレーションではロボットを音声によって前後左右に動かし、目当てのお菓子を拾い上げるというゲームを行う。

まずプレイヤーはマイクに向かってアームを動かしたい方向を読み上げる。するとMicrosoft Azure上にある音声認識AIがプレイヤーのコマンドを判断し、ロボットへ動かす方向の指示を送る。音声が良く聞き取れない場合は「もっと大きな声で指示をお願いします」と再度発声を促す。AIとのやり取りは下記写真にあるように、チャット形式で文字化され、確認することが出来た。

基本的には前後左右の指示を出してロボットを動かすが、例えば「やや左」「もう少し右」といった指示を送った場合はセンチ単位で動かす長さが変わるという。

現時点では産業用途に利用する段階には至っていないが、最終的に不二越は製造現場に導入できるようにしたいそうだ。その理由は「音声ならば、作業員の知識や技量如何に関わらず、簡単にロボットを操作することが出来るから」だという。

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