『今日もどこかで馬は生まれる』 引退した競走馬たちの悲しい運命

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 まだ若いうちに生涯を閉ざされる、引退した競走馬の現状にフォーカスしたドキュメンタリー映画。子供の頃から競馬ファンだったという映像ディレクターの平林健一がクラウドファンディングで資金を調達し、一人で企画・編集・監督をした作品です。

 この作品のテーマは「馬と人間の共生」。競馬業界では暗黙の了解だったそうですが、これまで、競走馬を引退したサラブレッドがどうなるかなんて一度も想像したことがありませんでした。実はその大部分が、若くして命を終えざるをえないことを初めて知りました。監督は、馬主や競馬を愛する人たち、騎手など馬に関わる多くの人たちへのインタビューを決行。全員に共通していたのは、馬への愛と、レースを戦い抜いてきた馬への尊敬の念。

 50年以上、食肉センターで働いてきた方もまた、いまだに動物たちの屠殺に心を痛めていることが分かります。「やってきた馬が大暴れする」という言葉はとても悲しくて辛い。自分の運命を悟り、屠殺スペースに入った瞬間に涙を流す馬もいるそう。「馬はある程度わかっているんじゃないかな」という職員の方は、「最後の瞬間はどうしても目が見れない」と馬に目隠しをしてから撃つことを明かします。

 馬に関わる人たち全員が心を痛めていて、多くの人が馬を救いたいと思っている。本当は20年以上生涯を送ることができる馬が、短く生涯を終える悲しみ。これまで全く知らなかったことだけれど、何かできることはないのかな? 公式サイトには引退馬支援をサポートする方法も掲載しています。こうした事実を映画を通して知ること、そしてみんなで考えることが最初の大きな一歩なのだと感じました。★★★★★(森田真帆)

12月28日(土)から全国順次公開

企画・監督・編集:平林健一

出演:荒木貴宏、大内龍一

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