《開発者取材》アミアミで有名なドライナミックメッシュの実力を俺たちはまだ知らなかった・・・ 今や多くの登山者が着ているミレーのアミアミこと”ドライナミックメッシュ”。その実力はその折り紙付きですが、最近は似たような商品も多く販売されています。そんな中でもドライナミックメッシュが選ばれるのはなぜなのでしょうか?開発者の方に話を伺うと、そこにはミクロレベルでの工夫が隠されていました。

売れっ子ウェア”ドライナミックメッシュ”はもう使ってる?

(ドライナミックメッシュを着用しての鈴鹿山脈縦走)

登山では、肌を乾いた状態に保つのは重要。そこで多くの登山者から支持を得ているのがミレーから発売されている「ドライナミックメッシュ」。

(もはや下山後の温泉で見かけることも珍しくない)

インパクト抜群の見た目だけでなく、快適に登山を楽しむための機能性も抜群。ベースレイヤーの下に着ることで、素早く汗を乾かし濡れを肌から遠ざける役割を担っている。

実はその機能の惚れ込んでYAMA HACK編集部でも6人中4人が愛用中(未使用の1人も最近GET)。

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今回ドライナミックメッシュの愛用者の編集部員が、ミレーの本社でドライナミックメッシュの開発者の方に突撃取材。超マニアックだけど知るとおもしろいアミアミの秘密を聞いてきました。

(ドライナミックメッシュを着て、いざ突撃)

アミアミに隠された圧倒的ドライ感の秘密とは・・・

(ドライナミックメッシュの生みの親)

最近はドライナミックメッシュと同じように、水分を含まない素材であるポリプロピレンを使ったドライインナーが多く発売されています。

なかには、ドライナミックメッシュの半分くらいの価格の商品も・・・。「着比べた感じ、何か違う。でも、なんで違うかがわからない」ということで、ドライナミックメッシュの開発者であるミレー・マウンテン・グループ・ジャパン株式会社の櫻井さんにお話を伺いました。
※この記事では、汗を処理するためのインナーを「ドライインナー」として紹介します。

編集部 大迫

愛用品の開発者の方に会えるなんて感動です。

櫻井さん

よろしくお願いします。

編集部 大迫

最近は、ドライナミックメッシュを着た登山者が増えたように感じます。しかし同時にドライナミックメッシュと同じような役割、つまり「かいた汗を処理するウェア」も増えてきました。

種類がたくさんあるので迷う人も多いと思うんですが、他のドライインナーとドライナミックメッシュって何か違うんですか?正直、低価格はそれだけでうれし・・・。

編集部 大迫

(思ったよりも勢いが凄い!)具体的には、どんな違いが?

櫻井さん

アミアミの部分がまったく違います。主に2つの違いがあるんですけど、そこがドライナミックメッシュの圧倒的な汗を吸い上げる力を生み出しています。

これだけだとまったくわからないので、詳しく見ていきましょう。

《秘密①》ミクロにまでこだわった穴の構造

櫻井さん

ミクロレベルで見てみると、ニット状に編まれているドライナミックメッシュの繊維には細長い穴が空いています。それが汗を吸い上げる力の違いを生んでいます。

編集部 大迫

ごめんなさい。まったくわからないです。

水分の拡散力を穴のカタチで最大化!

(一般的なドライインナーのイメージ図)

櫻井さん

他のウェアの場合、繊維に規則正しく穴を空けているものが多いです。

その場合、糸が同じ力で縦横に伸びると規則正しいまま丸が広がります。

(ドライナミックメッシュのイメージ図)

櫻井さん

ドライナミックメッシュの場合は、細長い穴が空いています。なので、引っ張られると細長く広がるんです

これが毛細管現象の力を引き出し、ドライ感を実現しています。

編集部 大迫

毛細管現象って、細い空間を液体が浸透していくあれですか?植物が根っこから水や養分を吸い上げる時の

櫻井さん

そうです。毛細管現象は、広い所から狭い所にドンドン向かっていきます。なので、規則正しい丸と縦長で比べると、縦長の方が汗の拡散スピードが速いんです。

(ドライナミックメッシュの仕組みを再現したもの。どんどん水分を吸い上げます)

櫻井さん

ドライナミックメッシュは毛細管現象をうまく機能させ、吸い上げた汗を素早く拡散して乾かすために穴の細長くしています。グングン水分を吸い上げてるでしょ?

普通のTシャツのメカニズムの生地だと穴が均一なので、ここまでブワっと拡散できないんです。

その拡散力は他のスポーツでも実証済!

櫻井さん

サッカーをしている人に着てもらったことがあるんですけど、ハーフタイムまで外側のユニフォームをビショビショにできなかったんですよ。

編集部 大迫

あんなに激しいスポーツでもですか!?それは凄い。

櫻井さん

ドライナミックメッシュは水分の拡散力が凄いから、上のウェアに届く前に乾いていることもあるんですよ。水がポタッとつくと、ビュンっと汗が吸われるのも感じられます。真夏の暑い時期でないと、上の服をビショビショにすることは難しいですね。

編集部 大迫

例えば、大量に汗をかいてドライナミックメッシュの上のウェアが飽和状態(水分を吸えない状態)になった時って、吸い上げられた汗はどうなるんですか?

櫻井さん

行き場をなくしますね。ただ、ドライナミックメッシュはかさが高く潰れないので、水分が順番待ちしている間にも乾いていきます

空気に触れる面が多いので、ウェアに移さなくても乾かすことが可能です。

編集部 大迫

上のウェアに伝わったもの以外でも、乾くんですね。

櫻井さん

ウェアの構造状、必ず空間ができます。

編集部 大迫

かさが高いというポイントだと、ザックと背中の間の汗をあまり感じないのもいい。汗っかきなので、春夏秋は基本的に背中がびしょびしょ。下手したら冬も・・・

櫻井さん

ミレーはザックブランドなので、そこは相互にいい影響を与えますね。

編集部 大迫

ザックを下ろしたら背中ががびっしょりなんてこともあるんですけど、濡れを感じないのであまり汗で冷えることはないですね。

《秘密②》糸の構造が吸水力と着心地に効果大!?

ミクロの世界での工夫には、感謝しかありません。登山者の安全や快適性のために、いろいろと工夫がされているんだと感心します。

しかし、アミアミにはもう一つ隠された秘密が。次は謎のカバーヤーンについて聞いてみましょう。

汗を吸い上げる秘密は”糸”にあり

編集部 大迫

ずっと気になってたんですが、ポリプロピレンって水分を含まない素材じゃないですか。いくら毛細管現象があるからといっても、それだけであんなに汗を吸い上げるものなんですか?

櫻井さん

良い質問ですね。正直、穴だけだとどうしても入っていきにくいので、ドライナミックメッシュは素材の混率の部分で他では真似できない仕掛けをいれています。

それは、ポリプロピレンの糸とポリウレタンにナイロン繊維をグルグル巻いたものを使用していること。

(ドライナミックメッシュの糸のイメージ図)

櫻井さん

安価なドライインナーを電子顕微鏡で見たことがあるんですけど、繊維がまとまっているだけでカバーヤーン構造になっていないんですよ。

編集部 大迫

カバーヤーン構造?

櫻井さん

ドライナミックメッシュの場合、ポリウレタン繊維にナイロンを巻きつけている糸の構造のことです。

編集部 大迫

ポリプロピレンよりも水を吸いやすいナイロンを合わせることで、機能をアップさせているんですね。

ナイロンの効果は着心地にも

編集部 大迫

実はドライナミックメッシュ以外にもポリプロピレン素材のインナーを使っているんですけど、着心地が全然違っていて、ドライナミックメッシュの方が柔らかいんですよね。

櫻井さん

ポリプロピレンは、水分保有率ゼロの素材。つまり、発泡スチロールのような空気のかたまり。つまり、ポリプロピレン100%を着るということは、発泡スチロールを着ているような感じです。

編集部 大迫

発泡スチロールを着ると思うとなんだか、ゴワゴワしそうですね(笑)。

櫻井さん

なので、ここにもナイロンが役立っています。

ナイロンはシルクのような柔らかさがある素材なので、着心地もポリピロピレンだけのものよりもずっと良いんです。

編集部 大迫

着心地の部分にも、ナイロンは深く関わっているんですね。

櫻井さん

他にも、伸縮性に優れるナイロンと合わせることで生地にコシをプラス。耐久性にも貢献しています。

使い勝手良すぎ?相手を選ばない機能性

アミアミに隠された秘密がわかるにつれ、その凄さに感動です。いろいろ話を聞いているうちに、あることに気づきました。

実は、上に着るウェアを選ばない

(ミレーの社員さんは普段から着用している人も多いそう)

編集部 大迫

メーカー公式を見ていると

素材も吸水速乾のものを選択することが重要です。
引用:ミレー公式オンラインストア

編集部 大迫

こう書いているんですけど、これってつまり、ドライナミックメッシュから汗を移し続けられるように飽和状態になりにくい素材(素早く乾く、保水力が高い)を着てくださいということですよね?

櫻井さん

そうですね。

編集部 大迫

もちろん登山の場合はたくさん汗をかくので、吸水速乾性のウェアや保水力が高いメリノウールを選ぶんですけど、たくさん汗をかかないようなシーンの場合、綿でも着れるとか?

櫻井さん

はい。クライマーの方は綿を着たがる人がいるんですけど、そういう人にも喜ばれていますね。社員も普段から着ている人多いですよ。

(お仕事中、快く撮影にご協力いただいたミレーの社員さん)

編集部 大迫

僕も着用中なんですけど、空気の層ができるからか温かいんですよね。

櫻井さん

それはありますね。それに消臭糸を使っているので、においも出にくいですよ。

編集部 大迫

しかも、素材が持つ「水を含まない」という機能を生かしたアイテムなので機能が低下しにくいのも嬉しいポイントですね。

櫻井さん

長く使ってもらえる、アウトドアフレンドリーな商品です。

※登山などの、発汗量が多い場合は速乾性やメリノウールのウェアなどと組み合わせましょう。

知れば知るほどドライナミックメッシュが離せない!

櫻井さんに「こんなにぶっちゃけると真似される可能性もゼロではないと思うんですけど、どこまで記事にしていいですか?」と聞くと、

櫻井さん

全部書いていいですよ。また、新しいものを作ればいいんですから。

と、商品開発者の鑑の一言。

にドライナミックメッシュが選ばれる理由がありました。

安全に登山を楽しむため、インター選びは大切です。まだ試してみたことがない人は、ぜひドライナミックメッシュを使ってみてください。

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