「今年の貯蓄額は50万」貯蓄スピードが落ちた共働き夫婦の家計簿

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、貯蓄はしっかりあるものの、今年の年間貯蓄額は50万円だけだという共働き夫婦。家族の楽しみも優先させたいといいますが、そのためには家計をどうやりくりしたらいいのでしょうか。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

共働きの夫婦です。子どもが2人います。現在6歳と2歳の保育園児です。今までできるだけ将来のためにお金を残そうと貯めてきたつもりですが、この子たちの教育費が順調に貯まっているのかを知りたいです。公立でも、私立でもどちらにでも進学できるような選択肢を残したいと思っています。

また、平成21年に住宅ローンを組んでマンションを購入しました。今、ローン残高は2600万円ほどあります。これも効率よく繰り上げ返済などをして、早めに完済したいと思っています。

ですが、今年できた貯金は50万円だけです。家族サービスとして、みんなで沖縄に行くなどの旅行も楽しみたいと思っています。今後、どのようにやりくりをしていくとよいでしょうか。

〈相談者プロフィール〉

・女性、38歳、既婚(夫:41歳、会社員)

・子ども2人:長男6歳、長女2歳

・職業:会社員(時短勤務中)

・毎月の手取り金額:41.9万円

(夫:31.4万円、妻:10.5万円)

・年間の手取りボーナス額:204万円

(夫:110万円、妻:94万円)

・普通預金:約500万円

・財形:約180万円

・株式投資:約250万円

【支出の内訳(37.1万円)】

・住居費:11.3万円(ローンと管理費)

・食費:10.5万円

・水道光熱費:1.5万円

・交通費:0.5万円

・通信費:1.8万円

・被服・美容費:2万円

・趣味・娯楽費:0.9万円

・教育費:5.8万円(保育費)

・保険:1.5万円

・その他:1.3万円


FP:ご相談ありがとうございます。貯蓄は比較的よくできているように感じますが、この1年間で50万円というと、貯蓄のスピードは下がっているように感じます。毎月黒字でボーナスもしっかり支給されているように思うので、少し年間貯蓄額が少ないようです。

ボーナスはどこに?毎月の生活費以外の支出もきちんと把握して

毎月5万円弱の余剰金が出ているようですので、単純に計算するとその余剰金だけで年間60万円近くは貯金が増えそうです。ですが年間50万円の貯金ということは、ボーナス含め、使ってしまっているということですよね。

それならば、何に使ってなくなってしまったかをきちんと把握することが必要でしょう。お二人で年間200万円近く出るボーナスがそのままなくなってしまう状況は、ちょっともったいないです。

一般的に貯め時は“お子さんが小学生の時”といいますが、いまでも余剰金が出ている状況なので、しっかり貯めることを考えてよいと思います。生活を楽しみながらしっかりと貯めるために、不要な支出は削り、必要な支出にしっかりお金をかけていくようにメリハリをつけていきたいですね。

毎月の支出でも、見直せそうなところはいくつかあります。スマホはプランの見直し、または通信会社の見直しをするとか、美容費のかけ方を見直すとか。食費も一度使い方を見直してもよいと思います。共働きの場合、一週間の予算を作り、その中でやりくりするような習慣を作ると、コントロールがしやすくなります。

貯蓄額でいえば比較的よく貯められていると思いますが、今後何にお金がかかるかわかりませんから、貯められる時はしっかりと貯めておくということが大切だと思います。

楽しみにされているご家族での旅行も、計画的に出かけるようにすると、貯金と楽しみが両立できると思いますよ。

「3つの条件」に当てはまるなら、住宅ローンは借り換えの検討を

住宅ローンの繰上げ返済も検討されているようですが、そのためにはやはり、お金を貯めておかなくてはいけませんね。そのほか、住宅ローンの対策としては「借り換え」を検討されてもよいと思います。借り換えで効果が得られる条件の目安として、以下の3つがあります。

・借入残高が1000万円以上ある

・返済期間が10年以上残っている
・借り換え前後の金利差が1%以上ある

いまは借り換え手数料が安くなっている傾向があるので、金利差が0.5%ほどでも、総返済額が少なくなる場合があります。

相談者さんの場合、平成21年に住宅ローンを組んでいますから、その金利は3~4%ほどあったのではないでしょうか。今の住宅ローン金利は1%前後のものが多いですから、借り換えで総支払額を下げることが可能になると思います。

繰上げ返済もよいですが、まずはそこから検討してみてもいいですね。その上で、教育費とのバランスを見ながら繰上げ返済をすると、予定より早めの完済も実現できそうです。

よく「いくら貯まったら、またはいくら残して繰上げ返済をしたらいいの?」と聞かれますが、これはそのご家庭の状況により、一言では言い難いものです。お子さんの教育費がかかるご家庭では、その分をしっかり残して、使わないお金で繰上げ返済しましょうということになります。それも、生活防衛資金を残して、しばらく使わないお金で繰上げ返済できると、よりベターだと思います。

老後資金はコツコツ積み立て、40代になったら準備を

ところで、相談者さんご自身は30代後半、ご主人は40代。教育費や住宅ローンも気になりますが、ご自身の老後資金の準備もそろそろ気にした方がよいと思います。

老後資金は急に作れませんから、少しずつコツコツ積み立てることも検討しましょう。たくさんの金額を積み立てなくても構いません。現金の蓄えは教育費に使うにしろ、ある程度ありますから、投資信託などを積み立てて作るとよいと思います。

老後資金作りのために、国が非課税制度を2つ準備しています。私的年金制度の1つである「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と、非課税投資制度の「つみたてNISA」です。

iDeCoは、投資商品だけを取り扱っているわけではありませんが、商品の選び方次第では比較的リスクが高い運用をすることにもなり得るので、慎重に商品選びをしたほうがいいでしょう。一方つみたてNISAは、金融庁が定めた基準をクリアしたリスクの少ない商品がそろっているので、初心者の方は安心して始められます。また、つみたてNISAはいつでも引き出すことができますが、iDeCoは今のところ60歳まで引き出すことができないので、目的によって使い分ける必要があります。

ご自分たちはどういう制度なら安心して積み立てられるのか検討してみて、それぞれの制度のメリット、デメリットも理解したうえで、ぜひ取り組んでいただけるといいのではないかと思います。

相談者さんのご家庭の資産状況は決して悪い状況ではありませんが、まだ改善できるところがあり、よりよくすることができる状態です。今を楽しむことも大切ですが、その楽しみを将来まで継続できるよう、お金の使い方、持ち方を考えてみてください。

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