記憶の酒瓶 度数まで正確に 障害者の犬塚弘さん絵画展

大好きな酒瓶を手に、作品の前に立つ犬塚さん=長崎市、県美術館

 日本酒や焼酎の瓶、ラベルを見詰めて、その記憶を基に絵を描く犬塚弘さん(51)=長崎県雲仙市在住=の初個展「酒びん×人生」が24日、長崎市出島町の県美術館県民ギャラリーで始まった。幼少期から現在までの作品約360点が並び、来場者を楽しませている。28日まで。入場無料。
 犬塚さんは知的障害者で同市伊王島町出身。現在は社会福祉法人南高愛隣会(本部・諫早市)が運営するグループホームに入居。酒瓶やラベルに強いこだわりがあり、一度見た酒瓶を記憶だけで本物そっくりに数分で描ける。酒造名や価格、アルコール度数なども正確に覚えている。
 同展は、犬塚さんの才能を周知し芸術家としての一歩を踏み出してもらおうと、南高愛隣会や雲仙市の有志、福祉関係団体などでつくる実行委が企画。会場には、県産酒の瓶やラベルの絵画約60点、県外の酒造の酒瓶の絵約40点、幼少期の作品約20点のほか、知人らに贈っているラベルなどを描いた色紙約200点などを展示。温かみを感じさせる一点一点に来場者は見入っている。
 犬塚さんは個展開催について「うれしい」。母の幹子さん(81)も「障害がある中で立派な絵を描き、個展をできるようになったことをうれしく思う」と話している。

© 株式会社長崎新聞社