株式投資と投資信託どっちがいい?その答えに正解はあるのか

2019年は投資をする人が増えた印象を受けた1年でした。やはり、つみたてNISAやiDeCoの制度が大きく影響していると思いますし、日米の株式市場が年初から年末にかけて右肩上がりだったことも影響しているかもしれません。来年から始めてみたいと思っている人も多いでしょう。最近はネットでも有益な情報を得られるため、投資をする前に自分で勉強する人が多いのですが、少し知識がついてくると逆に悩むことも増えてきます。今回は独学で多くの人が抱く疑問について答えます。


株式投資と投資信託どっちがいい?

ひと言に投資といっても、投資手法も金融商品もさまざまです。ネットを中心に独学する人の話を聞くと、自分と同じ個人投資家という立場の人たちのブログなどを参考にするようです。個人投資家のブログを見ていくと、株式投資をメインとするブログと、投資信託をメインとするブログの2つが大半であり、どちらも参考になるのですが、「いきなり両方はできないから、どちらから始めればいいですか?」という質問をよく受けます。

筆者はそのような質問をされた場合は、投資信託から始めることをおすすめしています。つみたてNISAやiDeCoなどの制度を活用すれば、本来かかるはずの税金を払わなくてよくなったり、iDeCoであれば節税効果もあるからです。また、最近では金融機関の企業努力によって、手数料が非常に低く抑えられている投資信託が増えていることも、おすすめの理由です。

メリットとデメリットを考える

ものごとにはメリットとデメリットがありますが、株式投資と投資信託も例外ではありません。筆者は投資信託を勧めましたが、それぞれのメリットとデメリットを理解したうえで、株式投資から始めてもいいと思います。筆者も投資は株式投資から入って、その後に投資信託に投資するようになりました。

まず、投資信託のメリットですが、何よりも手軽に分散投資ができることが挙げられます。仮に自分で世界中の株式に分散投資をしようとすると、1銘柄ずつ発注することも面倒ですし、それなりの資金がないとできません。

しかし、投資信託であれば、証券会社によっては100円から積立投資も可能で非常に手軽です。一方で、デメリットとしては自分が投資したい企業の株だけに投資をするなど、オリジナリティを持った投資はできません。たとえば、日経平均に連動する投資信託に投資をすると、日経平均を構成する225銘柄に投資することになりますが、その中に投資したくない銘柄があっても、それを除くことはできないのです。

株式投資のメリットはこの逆で、自分で分析をして、自分がいいと思った銘柄だけに投資することができます。しかし、デメリットとしてはその分析の手間があります。財務諸表や決算説明会資料などを読み込んで、その企業の将来の業績を予測し、かつマクロ経済環境やその企業が属する産業・業界の動向などもしっかりと分析する必要があります。

筆者の場合は、色々なデータを見て分析してシナリオを作り、そのシナリオを基に投資することが楽しかったので、これをデメリットと感じたことはありません。しかし、多くの人々はあくまで将来の資産形成のための投資であり、投資以外に時間を使いたいのが一般的と考えると、この点はデメリットでしょう。

投資の目的は何か?

簡単にメリットとデメリットをあげましたが、大事なのは投資の目的です。数年のうちに資産を増やすことが目的であれば、株式投資の方が可能性は高くなると思います。しかし、投資の世界に限らず、この世の中はローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンが常です。投資の目的が将来に備えるためのもの、たとえば子どもの学費や住宅・車の購入費用、老後資産であれば、やはり手軽に分散投資が可能な投資信託の方がよいでしょう。

先日、「株式投資と投資信託のどっちがいいのか」という質問をされたときに、このような話をしました。

5つの銘柄があって、それぞれ1年後には-50%、-25%、+25%、+50%、+100%になるとします。株式投資の場合は、色々と分析をすることで、この5銘柄のなかから1銘柄を選びます。銘柄選択がうまくいけば+100%になるかもしれないし、失敗すれば-50%になるかもしれません。一方で投資信託で日経平均などのインデックスに投資すれば、これら5つにまとめて投資することになるので、全体の平均値が得られます。こう考えてもらったところ、自分は銘柄を選び抜く自信がないから、結果、投資信託にしようと思うとなりました。

金額ではなくリスク量で考える

最後に、少しだけ難しい話をします。投資をする人の多くの目的が老後資産の形成など、過度にリスクを取らずにジワジワと増やしていきたいケースが多いので、分散投資が重要だよと伝えるようにしていますが、あまり複雑な事はわからないし、やりたくもないので、株式と債券を半分ずつ投資するように投資信託を購入します、という人もいます。

しかし、それはあくまで金額ベースで半々に分散しているだけだよ、と話しています。一般的に株式は債券よりも想定されるリスク、リターンともに大きいとされています。

ですから、仮に金額ベースで株式と債券に半分ずつ投資をしたとしても、そのポートフォリオでは株式のリスクが多めになってしまっています。そこで、金額で比率を考えるのではなく、リスク量で比率を考える方が重要なのです。

つまり、金額的には債券の比率が多かったとしても、リスク量でみたときに株式と債券で取っているリスクが半分になるように投資をすると、よりリスクを抑えることができます。

2019年の株式市場は非常に好調でしたが、かたや消費増税後の経済指標は軒並み悪化しています。不況下での株高ということもあるかもしれませんが、2020年はリスクのコントロールにも意識を向けた方がよいでしょう。投資に「正解」はありませんが、筆者は2020年のテーマにリスクコントロールを掲げたいと思います。

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