地球温暖化で変わる北海道・下

農業は変化をチャンスに

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今週のけいナビは、2週連続シリーズ「地球温暖化で変わる北海道」の2回目。
まずは、日本の食卓を支える一次産業。

記録的な不漁で関係者は頭を悩ませている

漁業では、サンマ・サケ・イカなどの深刻な不漁。正確な原因は分かっていないが、温暖化による海水温の上昇で、魚の回遊ルートが変化していることも指摘されている。比較的量が獲れるマイワシなどに魚種を転換したり、養殖に力を入れたりと、安定した収入を得る工夫が続く。

一方の農業。1km四方単位で気象データを集め、気候変動を研究している農研機構。農研機構北海道農業研究センタ-・寒地気候変動グループの廣田知良グループ長は、「今のところ北海道農業の生産は、むしろ伸びている」と話す。

農研機構 北海道農業研究センタ-・寒地気候変動グループの廣田知良グループ長

その代表例が、ワイン用ブドウ。純国産のワインとしては全国一の生産量を誇る北海道ワイン。温暖化の恩恵を感じているのは、特に「赤ワイン系の品種」。気温が上がったことで、これまで以上に実が熟すようになったという。

北海道ワインによると、赤ワイン系の品種で特に温暖化の恩恵を受けているという

北海道ワインの斎藤浩司取締役は「20年前とことしでブドウの木は変わっていない。外的な気象条件の変化が大きいと思う」と話す。北海道ワインは、約50年前からワイン用ブドウの栽培を始めた。当初は寒さに強い白ワイン系の品種が7割を占めていたが、現在は赤ワイン系が逆転。さらに、実が熟すことで香りが強くなり、樽の香りに負けなくなったという。

斎藤取締役は「温暖な気候は、選べる選択肢が広がる大きなメリット。温暖化で雨が増えるのはデメリットだと思うが、山梨や長野など雨の多い地域でブドウづくりをしているので、本州の技術を導入できる余地もあり、あまり心配はしていない」と話す。また、大きな影響を与えたのがヨーロッパ系の高級品種「ピノ・ノワール」。

気温の上昇で、北海道は20年ほど前から「ピノ・ノワール」の栽培に適した気温に。道内で新規参入が相次ぎ、ワイナリーは10年で2.5倍に増えた。さらに、ピノ・ノワールの本場、フランス・ブルゴーニュ地方の老舗ワイナリーが、函館に進出した。

斎藤取締役は「北海道が産地として世界に認められる可能性に期待している」と話す。
これまで、北海道の農業は寒さとの戦いだった。しかし、気温の上昇で、最近ではサツマイモや落花生なども栽培できるようになった。農研機構の廣田グループ長は「栽培できる作物の品種・種類が増え、農業側はどのような作物を作り、売るか選択肢が増えてくる」と話す。

栽培できる品種・種類が増え、農家の選択肢は広がっている

もちろん、良いことばかりではない。これまで北海道の農業を支えてきたジャガイモやタマネギは、悪影響を受ける。中でも深刻なのは、収穫後に残ったイモが春に雑草となる、「野良イモ」だ。

原因は雪。これまで、畑に残ったジャガイモは冬の冷気で凍死していた。農研機構によると、30年ほど前から十勝で雪が増え、断熱材の役割を果たすようになった。これではイモが凍りきらず、成長してしまう。

野良イモが発生する原理

廣田グループ長は「いろんな作物が作れそうな状況になってきているので、もしかしたら、イモづくりが大変になってきているから止めたいということも起きかねない」と話す。そこで、農研機構は雪を人の手で割る「雪割り」で、土が凍る深さを調整。野良イモを防げることに加え、適度に凍らせることで土がきめ細かくなり、栽培するジャガイモの質や量が改善されたという。

廣田グループ長は「農家がイモを止めるピンチから、イモづくりが良くなるという方向に変えている。異常気象は世界のどこでも起きるが、そこに対していち早く取り組んで、対策が打てるということは競争力の強化につながる」と話す。

続いて、温暖化の原因と言われる二酸化炭素を地中に封じ込める取り組み。苫小牧の施設では、経産省による「CCS」の実証実験が行われている。CCSとは、二酸化炭素を回収し、貯めるという意味。

工場などで排出されたガスからCO2だけを取り出し、地下深くに長期間、封じ込める技術だ。CCSは、2008年の洞爺湖サミットでの宣言に盛り込まれ、日本でも研究が進められた。国際機関の報告書によると、パリ協定の目標を実現するため、2060年までに削減するCO2のうち、14%をCCSが担うと期待されている。

苫小牧の施設は、約300億円かけて建設され、2016年から稼働。年間70億円から100億円ほどの予算で実験を続けてきた。特徴は、CO2を陸上から海底の、さらに下の地層に埋める点だ。

世界で19のCCS施設が稼働しているが、この技術は苫小牧だけ。複数にまたがる地権者の合意を得る手間が省け、経過も監視しやすくなるという。この技術が、比較的土地の乏しい日本でCCSを可能にした。日本CCS調査・苫小牧CCS実証試験センターの小島裕昭センター長は「17万都市で、近隣に住宅街・商店街がある中でCCSをやっている。これまで30カ国を超える国の見学者が来ているが、世界の環境に関する会合で苫小牧の知名度は上がっている」と話す。

安全性や、CO2が漏れ出ていないかなどを監視しながら、ことし目標の30万トンを達成した。国は実用化を目指し、1億トン規模で貯留できる土地の選定を進めている。全国からCO2を集めて地中に埋める計画だ。
経産省がCCSの先に見据えるのが「カーボンリサイクル」。CO2を炭素資源としてみなし、 燃料などのエネルギー源として活用しようという取り組み。すでに日本でも研究が進められていて、2030年ごろから普及させる計画だ。

見学に来ていた学生たち

地球温暖化による変化にどう対応するか。前向きな取り組みに注目したい。
番組の最後は杉村太蔵さんの一言。コメントのフルバージョンはYouTubeなどのSNSで公開中。

(2019年12月28日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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TVh「けいナビ」