タダ乗りできるJR特急はこれだ!

「鉄道なにコレ!?」(第5回)

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大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)

共同通信社編集局経済部次長

大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)

共同通信社編集局経済部次長

1973年東京都生まれ。97年に入社し、松山支局、本社経済部、ニューヨーク支局などを経て2020年10月から現職。運輸と旅行、国際経済の分野を長く取材し、日本一の鉄道旅行を毎年選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」の審査委員を務めている。

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特急「かもめ」などに使われているJR九州の783系=2019年 2月19日、宮崎市で筆者撮影

 令和初の年末年始を迎え、帰省や旅行でJRを利用する方も多いだろう。この時期に重宝される普通列車乗車券「青春18きっぷ」は、「JR全線」で利用できるものの「特急(新幹線含む)急行列車及びJRバスを除く」と注釈が記され、新幹線や特急では原則として乗車券として使うことができない。ところが、「青春18きっぷ」を持っていれば、特急列車の自由席に乗れてしまう場合もある。その区間とは―。 (共同通信社福岡支社編集部次長・大塚 圭一郎)

 ▽指定席を“放棄”

 JR九州の博多駅(福岡市)で乗り込んだ午前8時34分に出発する佐世保(長崎県佐世保市)行きの特急「みどり」3号は、鹿児島線と長崎線、佐世保線を駆けて途中駅の早岐(はいき)駅(佐世保市)に近づいた。到着前の車内放送で、「次の早岐では5分間ほど停車します」という声が響いた。

 この列車は、博多―早岐間でハウステンボス(佐世保市)行き特急「ハウステンボス」3号と連結し、8両編成で運転しているが、早岐駅で4両編成の特急みどりと、4両編成の特急ハウステンボスに切り離されるのだ。

 切り離した特急みどりは早岐駅を出発すると、スイッチバックして佐世保線の佐世保へ向かう。これに対し、特急ハウステンボスは大村線を1駅だけ進んで佐世保市の大型リゾート施設、ハウステンボスに近いハウステンボス駅へ赴く。

 佐世保市に住む大学時代の同級生と約11年ぶりに再会するために佐世保駅へ向かっていた私は、そのまま指定席の決められた座席に腰掛けていても良かった。しかし、私は残る早岐―佐世保間の指定席の権利を“放棄”し、5分ほどの停車時間にプラットホームへ出て佐世保方面に向けて歩いた。

 ▽特急券なしで展望席

 なぜそんな無意味に映る行動に出たのか?ホームに降り立つと、その理由を説明してくれるアナウンスが流れた。

 「佐世保行き特急みどり号は、乗車券のみでご利用いただけます」

 この時に乗った特急みどりと特急ハウステンボスは、特急用車両783系「ハイパーサルーン」を使っていた。1988年3月に登場した車両で、旧日本国有鉄道(国鉄)の分割民営化に伴い、87年4月1日に発足したJRグループの中で最初の新造車両だ。その先頭車両は運転席の後ろに展望席があり、床を高くしたハイデッカーに設けた座席は見晴らしが利くのが持ち味だ。

 特急みどりは早岐駅で反対方向へ走るため、それまで最後尾だった佐世保側の8号車が先頭車に早変わりする。8号車は自由席のため、早岐から佐世保までは8・9キロ、わずか約10分の乗車ながら展望席に陣取って特急券を持たずに乗れるのだ。前面の流れゆく景色を堪能していると、大塔、日宇の両駅を通過して終点の佐世保駅に定刻の午前10時26分に着いた。

 私の場合は通常の乗車券と指定席特急券を持ち、展望席を楽しむためにあえて自由席へ移動した変わり種だ。ただ、この区間は自由席ならば「青春18きっぷ」を含めた乗車券だけでも利用できる特例区間なのだ。

特急「かもめ」の展望席から見た、区間快速「シーサイドライナー」 との行き違い=19年12月21日、長崎県佐世保市で筆者撮影

 ▽特急無料化の理由

 特急みどりの早岐―佐世保間の自由席が特急券不要になったのは、2018年3月17日のダイヤ改正からだ。JR九州はこのダイヤ改正で在来線の運転本数を大幅に減らしており、それが特例区間に変わった要因だ。

 このダイヤ改正の際、佐世保線の肥前山口(佐賀県江北町)方面と佐世保をつないでいた普通電車の多くの運転区間は早岐駅までに短縮された。また、長崎線と大村線、佐世保線を経由して主に長崎―佐世保を結ぶ快速・区間快速の「シーサイドライナー」も減便となり、佐世保市中心部への通勤通学利用も多い早岐―佐世保間はダブルパンチを受けた。

 そこでJR九州は救済措置として、特急みどりを早岐―佐世保間でそれまで大人300円を徴収していた自由席の特急料金を不要にした。ただ、指定席に乗る場合は大人520円、グリーン車は大人770円の追加料金が必要だ。

 JR九州ではほかに、日豊線と宮崎空港線の宮崎―宮崎空港間(6キロ)も特急料金を払わずに「にちりん」(主に大分―宮崎空港)などの特急列車の自由席に乗ることができる。この区間は宮崎空港を発着する航空便の利用者が多く乗っており、普通電車だけでは需要に追いつかないため特急列車で補完しているのだ。

自由席の特急料金が不要な区間の宮崎駅以南を走る特急「にちりん」 の787系=19年3月25日、宮崎市で筆者撮影

 ▽特急しか走らない区間では?

 空港ではなく、新幹線と乗り継ぐ足を確保するために特急列車の自由席料金を免除している区間もある。JR東日本の青森市内の青森―新青森間(3・9キロ)は、青森と秋田を結ぶ特急「つがる」の自由席に特急券を持たずに乗れる。これは東北新幹線の八戸(青森県八戸市)―新青森間が10年12月に延伸して全線開業した際、青森市中心部と新青森駅を移動する利便性を高めるために導入された。

 一方、JR北海道の石勝線新夕張(夕張市)―新得(新得町)間のように特急列車しか走っておらず、普通列車も快速列車もゼロという区間もある。この場合は特例として、特急券がなくても乗車券だけで乗れる。

 それでは、旅客列車は北海道新幹線しか通っていない青函トンネルを隔てた北海道新幹線の奥津軽いまべつ(青森県今別町)と木古内(北海道木古内町)の間はどうか。この区間を走っている列車は全車指定席の「はやぶさ」だけのため、指定席特急券と乗車券を買うと通常期で大人1人4240円もかかる。普通車の空いている座席に腰掛けられる特定特急券を利用すれば割安になるが、それでも乗車券を含めて大人3200円が必要だ。

 このため、奥津軽いまべつ―木古内間は「青春18きっぷ」だけでは乗車不可だ。ただし、ここでも特例措置が用意されている。大人、子どもとも2490円の「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」を別途買って併用すれば北海道新幹線の奥津軽いまべつ―木古内間と北海道南部を走る第三セクター、道南いさりび鉄道の木古内―五稜郭(函館市)間を1枚に片道1回利用できる。

「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」で乗れる道南いさ りび鉄道のディーゼル車両キハ40=18年10月28日、北海道北斗市で筆者 撮影

 今までご紹介した特急列車の自由席料金が不要な区間や、「オプション券」の設定区間にとどまらず、特急列車が普通列車扱いで運用されているため「青春18きっぷ」で特急用車両に乗り込める区間もある。そんな“お買い得メニュー”を盛り込みながら、「青春18きっぷ」を生かした節約旅行に出掛けてみるのもいかがだろうか。

 【青春18きっぷ】春と夏、冬の年3回発行している普通列車乗車券。日本国有鉄道(国鉄)時代の1982年春に「青春18のびのびきっぷ」として登場し、翌年の83年春から現在の名称になった。若年層の利用を意識して命名されたが、全年齢が利用できる。国内のJR普通列車と快速列車の普通車自由席とバス高速輸送システム(BRT)、広島県にある世界文化遺産の宮島・厳島神社に近い宮島フェリーターミナルとJR山陽線宮島口駅近くの桟橋を結ぶJR西日本宮島フェリーに自由に乗り降りできる。5回分で料金は1万2050円(大人、子ども共通)。2019~20年の冬は19年12月1日~12月31日に発売され、利用期間は19年12月10日~20年1月10日に設定されている。

 ※「鉄道ナニこれ!?」とは:鉄道と旅行が好きで、鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」の執筆者でもある筆者が、鉄道に関して「なにコレ!?」と驚いた体験や、意外に思われそうな話題をご紹介する連載。2019年8月に始まりました。更新時期は不定期ですが、月に1回のペースを目指します。ぜひご愛読ください!