社説:日韓首脳会談 対話重ねる足がかりに

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 安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が昨年9月以来、1年3カ月ぶりに会談した。

 両国関係悪化の発端となった元徴用工訴訟問題で双方の主張は平行線をたどったが、朝鮮半島情勢を巡る緊密な連携を確認し、外交当局間での協議継続で一致した。

 日韓の応酬は経済や安全保障の分野にまで広がり、複雑化している。一度の対話で隔たりを埋めるのは難しい。今回の会談が関係修復の足がかりになるよう、両首脳は定期的に対話を重ねるべきだ。

 元徴用工問題で首相は、1965年の日韓請求権協定で賠償問題は解決済みとする従来の立場を崩さず、韓国側の責任で解決策を示すよう求めた。

 これに対し、文氏は日本企業に賠償を命じた韓国最高裁の判断には介入できないとする姿勢を変えなかったが、「問題解決の重要性は認識している」と述べた。

 対韓輸出規制では、文氏が規制強化の撤回を要求し、首相は安全保障上の観点から規制を強化したと重ねて説明するにとどめた。

 両国間では首脳会談に向け、韓国側が破棄を通告していた軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効回避を決め、日本側も半導体材料3品目に関する輸出規制を一部緩和するなど、歩み寄りへの地ならしもみられた。

 ただ、韓国は来年4月に総選挙を控え、文氏の支持層に対日強硬策を求める意見が多い。

 韓国の国会議長が日韓で寄付金を募って元徴用工らに支給する法案を提出したが、同国内には日本側の謝罪がないとする意見があり、今回の会談では言及しなかったとみられる。

 首相も「桜を見る会」を巡る疑惑や2閣僚の辞任などが続き、内閣支持率が低下している。

 ともに譲歩したと受け取られることは避けたい意図がみえる。

 両国の対立は観光客減少や不買運動となって双方の経済に打撃を与えている。政治が国民の間に溝をつくっている現実を両首脳は直視してほしい。

 日韓首脳会談と、これに先立つ日中韓3カ国の首脳会談では、朝鮮半島の非核化に向けた米朝協議を後押しする方針を確認した。北東アジア安定への一歩といえる。

 首脳会談で日韓は関係修復への道を踏み出したが、元徴用工訴訟で差し押さえられた日本企業の資産売却手続きが現実となれば後戻りできなくなる。なお綱渡りの関係であることを踏まえ、両首脳は歩み寄りの努力を続けるべきだ。