これまでにもあった現役国会議員の逮捕事件 逮捕されたら議員の資格はどうなる?

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業の参入をめぐって、中国企業から現金数百万を受け取ったとして東京地検特捜部は、現役の衆院議員である秋元司議員を25日に収賄容疑で逮捕しました。

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現役の国会議員には「不逮捕特権」がありますが、国会会期中に限られています。これまでに国会議員が逮捕された事件はどのようなものがあったのでしょうか。振り返ってみましょう。

不逮捕特権とは…警察や検察などから逮捕されない特権。国会議員や外交官、公務中の在日米軍兵士等が持つ。国会議員の場合、国会期間中は逮捕されない。例外として、会期中でも現行犯や所属議院の許諾のある場合は逮捕されるケースもある。

 

秋元議員の前は誰だった? 10年前のあの事件

現役の国会議員としての秋元議員の逮捕は、2010年1月の「陸山会」政治資金規正法違反事件で逮捕された石川知裕・衆院議員(当時)以来のことです。

石川氏は、小沢一郎氏の資金管理団体・陸山会で事務担当者を務めており、2004年に陸山会が購入した土地をめぐり、政治資金収支報告書に4億円の収入を記載しなかったとして、衆院議員となっていた2010年に逮捕され、2014年に最高裁で禁固2年、執行猶予3年が確定しました。

立憲民主党、連合北海道などの要請を受け今年4月の北海道知事選挙へ出馬。日本共産党、社会民主党、市民団体も支持を表明する野党統一候補となりましたが、前夕張市長の鈴木直道氏に60万票余りの大差で敗れました。

実刑確定、服役後も当選 14戦無敗の「日本一選挙に強い男」

1994年、埼玉県の建設業者をめぐる談合事件で、業者からの依頼で公正取引員会への口利きをしたとして、当時、自民党旧竹下派のプリンスと呼ばれていた衆院議員の中村喜四郎前建設相(当時)があっせん収賄容疑で逮捕されました。

取調べでは黙秘権を行使し、完全黙秘を貫いたため、供述調書が1通も作成されず、検察官の雑談や挨拶などにも一切応じなかったといいます。「建設業界全体の刷新と改革のための政治資金だった」として賄賂(わいろ)性を否定し無罪を主張。最高裁まで争いましたが懲役1年6か月の実刑が確定し、失職しました。

服役後は無所属で選挙に出馬し、当選。衆院選14戦無敗の現職で、「最強の無所属」「日本一選挙に強い男」などと呼ばれています。

95年12月には、元労相で「政界の牛若丸」の異名を取った山口敏夫衆院議員(当時)が、特捜部に背任などの容疑で逮捕されました。国会会期中でしたが、衆院本会議で逮捕許諾請求が可決されたため、逮捕されたものです。

政界の牛若丸は、その派手な立ち回りから付けられてものといいますが、竹下登元首相は山口氏を「すき間政治家」と評したといいます。自民党内では異端児でありながら、安倍晋三首相の父である安倍晋太郎氏や金丸信氏ら実力者の周辺に身を置き、立ち回ることで存在感を発揮したからとのことです。山口氏は実刑確定ののち、2016年の都知事選に出馬しましたが小池百合子・現都知事に敗れています。

まだまだある 現役国会議員による「詐欺」に「弁護士法違反」に「政党助成法違反」!?

ほかにも、現職の参院議員・友部達夫氏(故人)が、「オレンジスーパー定期」という年6~7%の配当をうたって約90億円もの資金を集めたが借金返済や有効費などに使ってしまった「オレンジ共済」事件も特筆すべきできごとでした。1997年に参議院で逮捕許諾決議案が可決され、友部氏は詐欺容疑で逮捕、2001年に懲役10年の実刑が確定しました。

また、98年10月、政党交付金(助成金)約1200万円を自宅マンションの経費や海外旅行、外車購入に充てていたなどとして、特捜部は自民党の故・中島洋次郎衆院議員(当時)を政党助成法違反などの容疑で逮捕しました。95年に施行された助成法違反での摘発はこれが初でした。

珍しいところでは、弁護士である西村眞悟・衆院議員(当時)が1997年から2004年にかけて、右翼活動家の男性に自身の弁護士名義を違法に使用させ、交通事故の示談交渉などにあたらせた上で利得の一部を受け取っていたとして、弁護士法違反の罪に問われた事件などもあります。

逮捕されたら議員資格はどうなるの?

通常、何らかの容疑で逮捕されただけでは議員資格を失うことはありません。公職選挙法11条では、執行猶予の付かない禁固以上の刑が確定した場合などに、被選挙権を失うと定めています。国会法109条は「被選挙権を失ったときは退職者になる」と規定しています。

先に挙げた陸山会事件の石川氏の場合、2010年に逮捕され、2013年に辞職。比例北海道ブロック次点だった鈴木宗男氏の長女・鈴木貴子氏が繰り上げ当選しました。2014年に最高裁で有罪が確定し、公民権停止となり、これにより2017年まで被選挙権もない状態となりました。

また中村喜四郎氏の場合、1994年に逮捕され、最高裁で有罪が確定したのは2003年で、この時に衆議院議員の職を失いました。中村の失職に伴う茨城県第7区の補欠選挙では、2000年の第42回衆議院議員総選挙に無所属で出馬して落選した永岡洋治が自民党公認で出馬し、初当選しました。

事件の容疑で現役の国会議員が逮捕されると、その時点で国会議員の資格を失うと考えがちですが、有罪が確定するまで数年は議員の職を失うことはありません。もちろんその議員が自ら辞職した場合は別で、補欠選挙が行われることとなります。

 

今回、およそ10年ぶりとなった現役国会議員の逮捕事件でしたが、今後明らかになる事件の詳細や、秋元議員の立場はどうなるのかなど、選挙ドットコム編集部では引き続き注目していきたいと思います。

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