村田製作所、「3D触力覚技術」を手掛けるミライセンス社を買収

人は視覚や嗅覚、触覚などの五感から入手した情報を脳に渡し、脳内で複雑な処理を行うことで、物事を認識している。
ただし、脳が必ずしも事象を正しく認識しているかといえば、実はそうでは無い。

例えば錯視だ。

ポッゲンドルフ錯視を例にあげると、斜線が遮蔽物に遮断されると、本来は直線で結ばれているはずが、線がずれているように感じてしまう。

このような、脳の誤解は視覚情報だけではなく、実は触覚情報でも同様だ。

脳を騙すミライセンスのハプティクス・ソリューション技術

株式会社ミライセンスが提供するハプティクス・ソリューション技術(3D触力覚技術)は、触覚情報を脳に誤解させることで、任意の感覚を人に与える技術だ。

最近では、VR/ARの登場により、実空間での体験をデジタル空間上で体験できるようになってきた。また、5Gの普及により、映像体験を用いたサービスやアクテビティは、今後ますます活発になっていく可能性が高い。

没入性が高くかつ手頃なウェアラブルデバイスは数多く登場しているが、実世界の情報のうち、視覚ならびに聴覚情報のフィードバックを主としており、ここに触覚情報を加える事で、より人間の実感覚に近い体験が可能となるだろう。

このような背景から、触覚情報を体験できるデバイス開発が盛んになってきているが、その多くは実世界の事象をコピーするといったアプローチを取っている。つまりは、アクチュエーターなどの機構を使って、実世界と同じ力や動きを利用者にフィードバックするが、重量や消費電力など様々な開発の難しさがある。
(デバイスが力や振動を利用者に与えることで、利用者に触覚情報をフィードバックする技術をハプティクス技術という)

ミライセンスの3D触力覚技術は、上述した錯視のような、脳の誤解を逆手に取った脳科学、心理学的なアプローチをとっている。具体的には、人の触覚に振動を与える事で、あたかも何かに引っ張られているような、何かを押しているような感覚を脳に与える。

参考:ミライセンス デモ動画

語弊があるかもしれないが、デバイスは振動すればよく、少なくとも複雑になりがちな機械的な機構を作りこむ必要がなく、小型かつ低価格な筐体開発が可能になるという。
ただし、振動の制御は単純なものではなく、アナログ信号は非常に複雑な波形となり、高度なロジック設計とディジタル信号処理が求められるだろう。

株式会社村田製作所はこのような優れた技術を持つ、ミライセンスを買収し完全子会社とした。
電子部品において世界的な技術・開発体制を持つ村田製作所とミライセンスの技術が融合する事で、デジタル体感ビジネスはますます加速していくだろう。

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