2019年に「SNSを最も賑わせた株式銘柄」ランキング

2019年も残すところ、1週間足らずとなりました。今年の株式市場は「日経平均2万円割れ」という波乱の展開で幕開けし、米中貿易戦争の激化で株価が乱高下した1年でした。しかし秋以降は持ち直し、足元では2018年9月につけた最高値2万4,448円を再び狙う展開となっています。

終わってみれば、日経平均株価は始値1万9,965円より2割ほど高い水準で引けそうな2019年。このような相場で、最もSNSを沸かせた銘柄は何だったのでしょうか。


優待銘柄やテーマ株が人気化

今回コメントを集計したSNSは、スマートプラスの株取引アプリ「STREAM」です。同社のコミュニティは証券口座を開設した本人確認済みの顧客しかコメントできません。そのため、荒らしや違法な煽りコメントがほとんど存在せず、他のSNSと比較して投稿の信頼性が高いことから集計対象としました。

まずは、2019年に最もコメントされた銘柄ランキングの15位から6位までを振り返ります。

ランキングでは、オリエンタルランドやイオンといった「株主優待に特色がある企業」が根強い人気を誇っています。

【オリエンタルランドについて】

私の取得単価が1683円現在の株価が16750円近辺 もうすぐテンバガーです。東日本大震災直後に買いました。8年間保有です。やはり長期投資は素晴らしい!(ヒデゾーさん 86いいね)

「ドラクエウォーク」相場で大きく株価を上昇させたコロプラや、スマホゲーム「マリオカートツアー」で注目を集めた任天堂といったゲーム株もランクインしています。STREAMでは、身近なゲーム株で投資デビューを果たしたという趣旨の書き込みもみられました。

【コロプラについて】

とりあえず買って売るという流れをやってみた!晩飯代にはなりましたという訳で初銘柄はコロプラでした⤴️これから本格的に楽しみますねー(キュウさん 25いいね)

それでは、残りのトップ5を詳しくみていきましょう。

“今年の顔”が並ぶ上位陣

トップ5となった銘柄は、いずれも”今年の顔”と言っても過言ではない銘柄が並びました。

第5位:サンバイオ(740件)

サンバイオといえば、成功がほぼ確実視されていた新薬「SB623」の治験失敗で株価が大幅に下落したことで有名となってしまった銘柄です。治験成功期待で膨らんだ株価は1万1,710円の最高値で引けた1月28日に治験失敗が判明し、2月5日まで4連続のストップ安となりました。翌6日に2,440円で寄り付くという、壮絶な株価下落となりました。

SNSや匿名掲示板では、損失を抱えた個人投資家に追い打ちをかけるような投稿が一部目立ちましたが、STREAMではそのような風潮に疑問を投げかける投稿がみられました。12月13日に大日本住友製薬との「SB623」共同開発中止が発表されたことも、投稿数増加の要因となっています。

【代表的なコメント】

ここの掲示板は違いますが他のサイトではサンバイオ・ホルダーやサンバイオ自体に対する蔑みの声が結構あって目にする度に鬱々とした気分になります。もう充分衝撃を受けているのですからこれ以上の追い討ちをかけてどうしたいのでしょう。その力はむしろ強者に対して向けられるべきです。 (一部抜粋 誠さん 15いいね)

第4位:Zホールディングス(755件)

11月19日にLINEとの経営統合を発表したZホールディングスが、短期間でのランクインとなりました。

【代表的なコメント】

なぜZかというと、Y(ヤフー)からZへ一歩進むから??。Zホールディングスはその名からも分かるように持ち株会社。その下に事業会社として新たに設立される新ヤフーや、金融系企業がぶら下がるらしいです。ヤフーの変化はそれだけではない。グループ内の位置づけも変わろうとしているとのこと。(一部抜粋 medicuseさん 26いいね)

3位は投資家の不安感の表れ?

第3位:NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(812件)

一定の投資家層に根強い人気があるETF(上場投資信託)といえば、通称「ダブルインバース」です。これは日経平均が1%下がれば2%値上がりするという、特殊な銘柄です。有り体にいえば、「日本経済が悪化すれば儲かる」という投機性が高い商品です。

今年10月には、ある証券会社のジュニアNISA買付ランキング1位がダブルインバースとなったことで、大きな話題となりました。ダブルインバースは下落相場において値上がり率上位に踊り出しやすい性質を持っているため、十分な知識がないまま購入してしまう例も多くみられます。STREAM上では、注意喚起を促す投稿も多くみられました。

【代表的なコメント】

下落時のリスクヘッジとして奨められるこの銘柄ですが、それはあくまでも、前日までにポジションをとっていない限り、損失することが多いわけで、安易にここに飛び付くのはよした方がいい。 (一部抜粋 らいちさん 20いいね)

第2位:ソフトバンクグループ(1,031件)

WeWorkを運営するウィーカンパニーの企業価値が急減したあおりを受け、15年ぶりの営業赤字となったソフトバンクが、2位にランクインしました。

足元では、2017年4月から下値の目安として意識されていた4,000円ライン近辺で横ばいとなっています。この水準を下回ることがあれば、需給面からもさらなる下落を引き起こす恐れがあるため、予断を許さない状況です。一方、STREAM上では、株主総会に参加したユーザーのルポ投稿が注目を集めていました。

【代表的なコメント】

今年も株主総会行って来ました!最近では結構多い参加者でしたね。孫さん得意の大ボラ(2040年に時価総額200兆円!)も出て、株主の皆さん苦笑い^_^;AIバブルが来るのか、それとも信用収縮が来るのか分かりませんが、上がれば買いコスト0円株の売り上がり 暴落すれば引きつけて買い下がりのスタンスです。未来はどっちだ??社外取締役のユニクロの柳井さんが「孫さんが暴走しない様に私も注意しますから、株主の皆さんもブレーキ役になって下さい!」の発言が印象的でした。(masaru30さん 41いいね)

トップは何かと話題の“EC企業”

意外に思われるかもしれませんが、SNS投稿の人気トップに輝いたのは楽天です。

第1位:楽天(1,046件)

足元では、ふるさと納税の話題や、楽天モバイルの動向を気にする話題が多く見られました。しかし、投稿が盛り上がる大きな要因としては、多くの投資家が楽天のサービスを利用しており、共通の話題で話すことができる点にあるのかもしれません。

知名度がありビジネスモデルがわかりやすい楽天は、初心者がSNSを通じて他の投資家に疑問を投げかけるコミュニケーションの場となっています。楽天モバイルについては既存キャリアとの激しい競争が予想されていますが、少なくともSTREAMにおける個人投資家の間では、懸念よりも期待として受け入れられているようです。

【代表的なコメント】

初めて買った株で初めての利益。とても嬉しかったです。楽天ありがとう。(小田八家さん 30いいね)

楽天が12日発表した2018年12月期連結決算は売上高が前期比16.6%増の1兆1014億円となった。純利益も28.7%増の1422億円で増収増益だった…との事。私は楽天市場で楽天カードを使って5の倍数の日にたくさん買い物して、ポイント貯めてる楽天愛好家です。ただ、愛用していた店舗が楽天から撤退してしまって悲しい。これだけ業績好調であるならユーザーだけでなく、出展企業からも愛されるようになって欲しいです。(月給 安夫さん 27いいね)

個人投資家のコミュニティ投稿は、相場の過熱感や多角的な投資判断をするうえで武器になる情報の1つです。周囲に株取引していることを打ち明けられず、孤独になりがちな株取引。そんな時、気軽に相談できる相手がオンラインにいることも今や珍しくありません。

書き込みの信頼性やトラブルには十分注意が必要ですが、うまく使いこなせば株取引をする個人投資家にとってSNSは強い味方にもなるでしょう。

<文:Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古田拓也>

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