魚の締め方で美味しさが変わるってホント? 正しい締め方知識で美味しさ爆発!【津本式】

まさにこめかみあたりをズドン。これで魚は生命活動のための司令塔を失い、死を迎える。美味しくたべてあげる処置だけど、苦しまずに絶命させてあげるのも情ってモノです。

「ねぇ、あなた。脳締めにする? それとも神経締めにする? それとも津本ノヅル……」
と、ただいま、各所で話題沸騰中の魚の仕立て技術「津本式」の解説本、「魚食革命・津本式 究極の血抜き」の編集真っ最中(発売は来年1月20日)な小生が、そこから、スポンと抜き出したコアネタをご紹介します。魚の締め方で「脳締め」と「神経締め」という方法があることをご存じの方も多いかと思います。でも実際のところ、これって何をやったらいいの? どちらかだけじゃだめ? という疑問もよく聞く話。魚の専門家、津本光弘さんに伺った締め方の話を元に、どう締めたらいいのかを解説いたします!

締め方は大きく分けて脳締めと神経締めの2つ

美味しく魚を持ち帰るために、必用な処理がいくつかあるのですが、魚を締めることはとても大事だということが科学的にもわかってきました。締めるとは、簡単に言うと魚の息の根を止めること。ちょいと物騒な話ですが、そういうことです。

そして締め方には大きく分けて2種類あります。「脳締め」と「神経締め」です。

まずは、その定義について解説しておきましょう!

「脳締め」は魚の旨味の元を減らさないことが目的

「脳締め」は文字通り、魚の脳にナイフやピックを刺し入れて、脳死状態にする行為です。これにより魚の生体的活動は停止します。これがなんで美味しい魚として持ち帰るために必要な作業なのかというと、魚の生命エネルギーを高く保持する必用があるからです。なぜかというと、生命活動を停止した直後から魚の生命エネルギーはイノシン酸という魚の旨味成分に変貌していくからなんですね。

で、生命エネルギーレベルが高ければ高いほど、その魚は美味しく変貌していく。と、単純に考えてくれて大丈夫です。

まず最初に脳締めをしましょう

じゃあ、脳死させないで、クーラーに生きた状態の魚を入れて、途中で死ぬし、その状態で持って帰るのはいけないの? という話になりますが、魚は絶命するまで、その生命エネルギーを消費していくことになるんですね。とうぜん美味しさの元がどんどんと減っていくということになるのです。

(釣った後の身焼けの回復云々の話については、長くなるので今回は置いておきます)

ならば、釣って写真とって、ドヤ顔したのをSNSに上げたらすぐに、魚を絶命させてやればいいのです。もっと言えば、釣ってすぐに締めてあげるのがベストなんですね。そうすることで、より美味しくなる魚を持ち帰られるのであります。

他にも絶命させることには副次的な利点を内包してはおります。例えば、魚を暴れさせないので、人間で言う打ち身やうっ血状態を避けられる。そういった時に使うエネルギーの消費を抑えられるなのです。

その、絶命させる手順の1番手が「脳締め」なのです。

まさにこめかみあたりをズドン。これで魚は生命活動のための司令塔を失い、死を迎える。美味しくたべてあげる処置だけど、苦しまずに絶命させてあげるのも情ってモノです。

「神経締め」は魚の痙攣などを防ぐことが目的

えと、じゃあ、「神経締め」ってなんなの? ということですが、脳締めを行えば、神経組織も時間を経て活動を停止します。生命維持の司令を出している脳の活動が停止するのですから当然と言えば当然です。でも、脳締めをしても、しばらくの間は神経が誤作動を起こしながらも生きております。その誤作動により、魚が痙攣したり、筋肉を硬直させたりすることがわかってきました。

つまり、魚が痙攣する、筋肉硬直のためには少なからず生命力を消費しているということなんですね。ならば、脳締めのあとに、より生命力の消費を抑えてやるために、神経組織の活動も停止させてやろうというのが「神経締め」の役割となります。

神経組織は脳のある場所から、魚の脊柱に沿って上側に通っており、尻尾まで通じている。そこを針金などを使ってグリグリすることで、神経活動を停止する。津本さんは尻尾側から専用のノヅルで、この作業をやられる。ちなみにですが、神経締めは極論やらなくても良い。やったほうがいいけれど。脳締めさせることよりは生命力の低下ファクターにはなりづらいという意味でございます。

よく議論される、脳締めと神経締めの順番は?

ずばり「脳締め→神経締め」が正解です。異論は認めないっ!

もし、歯医者で麻酔をせずに歯を削られたらどうなります? あまりの痛さに悶絶して暴れませんか(魚には痛覚はないと言われてはいますが)?? その時のストレスたるや確実に生命力を削られますよね。

あえて痛みと表現しますが、痛みを感じない脳死状態で絶命していれば、大きなストレスを感じないで神経活動も停止できます。魚にとっても、苦しまずに済むルートの最適解と言えます。

要点は、魚を暴れさせないこと

よく、暴れる魚の脳天を棒などで打って昏倒させ、そこから締めるという話がありますが、それは脳締めに至るまでの最適処理のひとつと言えるので、理にかなっていると思います。大きな魚になればなるほど、脳天を締め具でズドン!なんて、ちょっとテクニックいりますしね。

暴れる魚を下の写真のように曲げて動きを止めるといいうテクニックを津本さんは教えてくれたりしましたが、これはちょっとした小ネタ。

写真を見ただけで、養殖のブリだと認識できたかたは、釣り人か魚通です。こうやって、くの字に曲げてやると、魚の動きを止めれるとアドバイスしてくれた津本さん。

ふふふ、そうそう。生命エネルギー、アデノシン三リン酸(ATP)の保持は大事。知ってる知ってる。それがイノシン酸に変わるからね。寝かせれば寝かせるほど美味しくなるんだよねー。って頷いた方、ちょっと驚愕の事実がございますので、そちらは、ぜひ本で御覧くださいマセ。

魚食の概念が変わっていく事実が....。じゃ、小声で。寝かせれば、寝かせるほど、魚のイノシン酸は減っていきますYO! 増えるけど減りますYO!。

だからこそ、津本式が生きるんですよ。では!

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