マン島TT:クラス6連覇TEAM MUGENが神電プロジェクトを一時中止。参戦クラスの2年間開催中止が要因

 12月17日、マン島TTレースのTT Zeroクラスに電動バイク『神電』で参戦しているTEAM MUGENは、2020~2021年の2年間TT Zeroクラスが開催されないことから、無限ユーロのオフィシャルウェブサイトで神電プロジェクトを一時的に中断すると発表した。

 マン島TTレースは、1907年からイギリス諸島にあるマン島の一般公道で開催されている世界最古の二輪車レースだ。この伝統あるレースには、2009年から二酸化炭素を一切排出しないゼロエミッションカテゴリーのTT Zeroクラスが新設され、2019年で開催11年目を迎えている。

 ところが、TTレースのプロモーターであるマン島政府は10月21日、TT Zeroクラスの運営と新規参戦が難しくなってきたことから、TT Zeroクラスの開催を一時中止することを発表した。

 レースを行わない期間は2020~2021年の2年間であり、その期間はチームやマニュファクチャラーを含む出資者たちとより幅広い対話を行い、TT Zeroクラスの発展および拡大を目指すという。そして、これまでの成功に基づいて二輪レースとマン島TTの技術開発に関する長期的な計画を立てるようだ。

 そして、このクラスに電動バイク『神電』で2012年から参戦していたのがTEAM MUGENだ。2014年から6連覇を達成していたが、2020年から2年間TT Zeroクラスが開催されないことをうけ、TEAM MUGENも神電プロジェクトを一時的に中断することとなった。

 TEAM MUGENは同クラスでの優勝だけでなく、電動パワートレインシステムの技術を身につけることも目標に設定しマン島TTへの挑戦を開始した。

ジョン・マクギネス(TEAM Batham’s MUGEN)

 2012年にジョン・マクギネスを起用し、平均車速100マイル(約161キロ)オーバーを達成。22分8秒85で初年度から2位表彰台を獲得。2013年もマクギネスが2位に入ると、2台体制で臨んだ3年目にマクギネス、ブルース・アンスティの順でワン・ツー・フィニッシュを達成した。

 2015年もマクギネス、アンスティがワン・ツー・フィニッシュすると、2016年はアンスティが優勝したもののマクギネスが4位と初めて表彰台を逃す。

 2017年はマクギネスが別カテゴリーで転倒し負傷したためライダーを変更したが、アンスティが2年連続優勝、ガイ・マーティンが2位を獲得し再度ワン・ツー・フィニッシュを果たす。

 2018年はマクギネスとアンスティが欠場を余儀なくされたが、マイケル・ルターが優勝しリー・ジョンストンが3位。2019年はルターが18分34秒172でフィニッシュし2連勝を飾り、マクギネスが2位を獲得。ルターの平均車速は121.909マイル(約196キロ)と参戦初年度から考えるとパフォーマンスが大きく向上している。

 TEAM MUGENはこの8年間で初代の『神電』から『神電 八』まで毎年改良を行い、電動バイクに欠かせないモーター、インバーター、バッテリーシステムを開発。そしてモーターの出力、バッテリー容量を大幅に向上させ、冷却性能を上げ航続距離も大きく伸ばしたため表彰台の常連になり6連勝を飾ることに成功した。

 電動バイクによる選手権のMotoEが始動するなど、4輪だけでなく2輪モータースポーツにも電動化の波が来ている。2022年はTT Zeroクラスの復活とTEAM MUGENの神電プロジェクト再始動が実現し、マン島TTレース、そして電動バイクの開発加速が叶うだろうか。

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