“孤軍奮闘”の吉田正、MLB282発ジョーンズ加入で? 19年のオリ打者陣を振り返る

オリックス・吉田正尚【写真:荒川祐史】

ルーキーたちにも明暗、ドラフト1位太田は出遅れスタートも同7位中川は大活躍

 2019年シーズンを6位で終え、5年連続のBクラスとなったオリックス。チームとしては悔しい結果に終わったが、選手個人の成績に注目すると、それぞれの2019年が見えてくる。特集動画「シーズンレビュー2019」では試合を振り返りその中から打者にフォーカスする。

 今季、最も苦しんだのが打線の固定だ。シーズン中の要所におけるスタメンを見ると、以下の3試合だけでも大きくメンバーが変更されていることがわかる。

開幕戦(3月29日)
4福田 8西浦 Dメネセス 7吉田正 5頓宮 9小田 3T-岡田 2若月 6安達

オールスター前(7月10日)
4福田 6大城 7吉田正 Dマレーロ 3モヤ 9中川 8宗 5小島 2若月

9月初戦(9月1日)
8宗 4福田 7吉田正 Dロメロ 3モヤ 5小島 7小田 6安達 2若月

 シーズンを通して打線が不安定な状態であったことは間違いない。実際、チーム打率.242、チーム得点数544はいずれもリーグ6位と、攻撃面では大きく苦しんだと言える。そんな中でもシーズンを通して戦い抜き、規定打席に到達した2選手を紹介したい。

チーム唯一の全試合出場、打線の心臓となった吉田正尚外野手

 今季は主に3番、4番に座り、2年連続となるシーズン全試合出場を達成した。リーグでも全試合に出場したのはたったの7選手で、ルーキーイヤーから2年連続でケガに泣いた過去を忘れさせるようなタフさを見せつけた。成績も申し分なく、打率.322(リーグ2位)、168安打(同2位)、29本塁打(同8位)と、いずれもキャリアハイだった。チーム不動の主軸として、苦しい野手陣のなかで気を吐いたといえよう。

 特に目覚ましい活躍だったのが7、8月の2カ月間だ。7月は月間打率.357、7本塁打、21打点で自身初となる月間MVPを受賞。翌月もバットの勢いはとどまることを知らず、驚異の月間打率.407を記録した。全23試合中で3度の猛打賞を含む計13度のマルチ安打を記録。フルスイングが印象的だがミート力にも優れており、全アウト数に占める三振の割合は約18%だ。これは首位打者を争った西武、森友哉捕手の約28%よりも低い数字だった。

 今季は2年目にして主将に任命され、重圧がかかる中で自己最多135試合に出場。走塁ではリーグ2位タイの30盗塁を記録する一方で、盗塁死の数はリーグワーストの14だった。守備機会の多い二塁手の難しさは当然考慮しなくてはならないが、リーグワースト3位タイの12失策は改善の余地があり、来季は今季の経験を生かして成長していってもらいたい。

 中川は規定打席到達とはならなかったが111試合に出場し、チーム3位の105安打、打率.288の好成績を残した。チームの新人野手が100安打に到達するのは2012年以来、7年ぶり。特に交流戦では全18試合で一塁手としてスタメン出場し、10試合でマルチ安打を記録、打率.386で交流戦首位打者となった。新人野手が交流戦首位打者を獲得するのはNPB史上初の快挙だ。守備面でも外野手から一塁手、三塁手などの多様な起用に応える一方で、失策数は0と安定していた。同期のなかでは最も低い7位指名だったが、実力と入団順位が無関係であることを証明してみせた。

 シーズン中盤から頼もしい存在になったのがモヤだ。7月2日に中日よりトレードで加入すると、翌3日に即スタメン出場。移籍後初打席でいきなり右中間スタンドに飛び込むソロ本塁打を放つ衝撃のデビューを飾った。今季は10本塁打を放ったが、2桁本塁打はチームで3人のみ。貴重な大砲の役割を果たしたと言える。

 これに触発されたのがステフェン・ロメロ外野手だ。故障で離脱したものの、モヤが加入した7月の後半から戦列に復帰。翌8月には月間打率.385、7本塁打、25打点と大活躍だった。特に印象的だったのが8月15日の西武戦。5番に座ったモヤが1本塁打5打点の活躍を見せると、4番のロメは2本塁打6打点。2人で計11得点の大暴れをみせた。これに影響を受けたチームメイトも快音を連発し、球団9年ぶりとなる20得点を記録した。

 一方で、2人合計でシーズン142三振。試合数を考えれば多いと言える。ロメロは来季のオリックスからは外れるが、モヤにはより確実性を高めた打撃を期待したい。

メジャー通算282発の超大物・ジョーンズ加入で打線に厚み

 打線が今季以上の成果を出すためには、ここに挙げた選手以外の活躍は不可欠だ。まず今季91試合出場し、打率.262の成績を残している大城滉二内野手。特に年号が令和に変わった5月1日から、15試合連続安打を放って話題を呼んだ。この感覚を取り戻し、競合の多い内野争いから頭一つ抜け出したい。

 ドラフト2位ルーキーの頓宮裕真内野手はいきなり開幕スタメン、しかも5番に座った。新人が開幕クリーンアップに名を連ねるのは球団62年ぶり。その試合でプロ初打席、初安打、初打点を同時に達成し、大器としての潜在能力を見せつけた。しかし7月以降はプロの壁に跳ね返され、ファームに戦いの場を移した。ファームでは26試合に出場し、打率.275だった。秋季練習から捕手に再転向している。

 宜保翔内野手は高卒1年目の今季、ファームで111試合に出場した。打率.227、20失策とまだまだ未熟な部分が目立つが、成長次第では今季固定できなかった遊撃手のポジションを射程に収めることもありうる。

 ドラフト1位太田椋内野手は骨折で開幕に出遅れ、復帰直後の6月は月間打率.203とプロの壁に跳ね返された。しかし続く7月は同.271、8月は同.281、9月は同.286と尻上がりに成績を上げ、秋季練習では西村監督が宜保と太田の遊撃手の定位置競争を示唆。フレッシュな布陣が見られる可能性も十分にある。

 2014年以来となるAクラス復帰のためには、打線の中心に座る吉田正を引き立たせる打者の台頭が不可欠だ。打率に加え、チーム長打率もリーグ最下位の.353だったが、これはモヤの加入だけでは不十分。既存戦力、そしてオフに獲得したMLB282発の超大物・ジョーンズの加入でどのような化学反応が生まれるのか。安定した得点が見込める打線が固定できるかが重要になってくるだろう。(「パ・リーグ インサイト」吉田貴)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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