2019年「理容業・美容業倒産動向」調査(速報)

 2019年の「理容業・美容業」の倒産は12月25日現在で、114件に達した。すでに2018年の110件を上回っており、件数は4年連続で増加した。12月に入っても倒産増のペースは続き、集計を開始以来、過去最多だった2011年の118件を超える可能性が強まっている。
 負債総額は23億6,100万円で、前年1年間の32億2,300万円を下回っている。このままのペースで推移すると、4年ぶりに前年を下回り、平均負債額は30年間で最少になる見込みだ。
 人口減少や少子高齢化が進み、顧客は初回限定クーポンの利用やカラーリングの持ち込みなど、安さを求める顧客は様々な方法で支出の手控えに努めている。一方、「理容業・美容業」業界もリピート客の繋ぎ止めに2回目以降クーポンの発行や、料金支払い時の次回予約の取り付けなど、知恵を絞った攻防戦が激しさを増している。
 労働集約型業種の「理容業」と「美容業」だが、大都市は限定地域に乱立し、大手同業や低価格チェーンとの競合に巻き込まれやすい。また、経営者の高齢化なども重なり、倒産だけでなく廃業の動きも目立ってきている。

  • ※本調査は、日本産業分類(小分類)の「理容業」「美容業」の倒産を集計、分析した。
  • ※2019年は12月25日現在の速報値。

 

「美容業」の倒産は過去最多を記録

 2019年の「理容業・美容業」の倒産は12月25日現在、114件(前年比3.6%増)に達し、2018年の110件を上回り、4年連続で増加している。
 このうち、「理容業」は14件(同6.6%減)と減少した。一方、「美容業」は100件(同5.2%増)と増加し、過去最多だった2018年の95件を上回り、最多記録を塗り替えた。
 負債総額は23億6,100万円(同26.7%減)で、前年の32億2,300万円を大きく下回り、4年ぶりの減少が見込まれる。
 業種別では、「理容業」は1億8,400万円(同11.1%減)で、4年連続で前年を下回る見込み。「美容業」も21億7,700万円(同27.8%減)と前年を下回り、4年ぶりの減少が見込まれる。
 倒産件数が増勢を強めながらも、負債総額は減少するなど、小・零細規模の「理容業・美容業」の脱落が目立っている。

理容業・美容業の倒産 年次推移

原因別 業績不振が8割を超える

 原因別では、「販売不振」が95件(前年比5.9%減)で最も多かった。構成比83.3%と8割以上を占めたが、前年の91.8%より8.5ポイント低下した。
 また、『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は103件(前年比1.9%減、前年105件)で、全体の9割(構成比90.3%)を占めている。
 同業者との競合で業績が低迷し、経営不振から抜け出せない小・零細規模の窮状を浮き彫りにしている。

 「理容業・美容業」の倒産は2019年12月25日までに2018年の年間件数を超え、4年連続で前年を上回った。小・零細規模を中心に件数を押し上げ、12月に入っても倒産は増え続けている。このペースで推移すると、過去最多の倒産を記録する可能性が高まっている。
 理容業や美容業は1店舗の経営からチェーン展開による多店舗など、幅広い。さらに、安定顧客を抱えた高額の店舗から、「千円美容室」などの低価格を売りにした美容室も登場するなど、まさに下剋上の様相を呈している。こうしたなか、10月の消費増税に合わせ従業員の待遇改善を打ち出した施術価格の値上げを実施した店もある。
 競争が厳しさを増すなか、代表者の高齢化や人材確保、他店舗との競合などから、ここ数年、休廃業や解散法人数も大幅に増え、2018年の休廃業・解散は初めて300件を超えた。今後もこの動きは続く可能性が高いだけに、「理容業・美容業」業界の今後の動向が注目される。

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