華やか江戸角凧に魅せられて 自己流で制作、今では本格派

凧の骨組みをチェックする石田さん=山北町向原

 江戸時代に大流行したという伝統的な和凧(だこ)の「江戸角凧」に魅了された人がいる。神奈川県山北町向原の石田精二さん(72)は5、6年前から自己流で角凧を制作し、今では自ら武者絵を描いた本格的なものまで手掛ける熱の入れようだ。28日からは町立生涯学習センター(同町山北)で、これまで制作した角凧を披露する作品展を開催する。

 写真が趣味の石田さんは5、6年前、撮影の題材に浜松市の「凧揚げ合戦」会場を訪れた。その際に関係者から凧を見せられ、「自分でもできそうだ」と思ったのが凧作りの始まりという。

 所属する山北写真同好会メンバーの親族に凧作り経験者がいると聞き、“見本”を分けてもらい自作した。「教えてもらうのは苦手。自分で考えながら作っていくのが好き」という石田さんは試行錯誤を重ね、骨組みとなる竹ひごを細く切る道具まで自身の手で作り上げた。今では骨組みの制作段階で揚がるかどうか分かるという。

 角凧作りは、見た目以上に手間が掛かる。近所の竹林で分けてもらった竹を縦に細く切って2年間乾燥させる。その後さらに幅8ミリほどに切り、竹ひごにして骨組みを作る。これに自身で描いた武者絵や役者絵を張り、14カ所から目糸を通してバランスをとる。

 以前の趣味だった魚釣りの経験も生かしている。凧を揚げる際の糸は強度を重視して釣り糸を使い、リールにつないで大空に舞わせる。「少しの風で、ふわーっと揚がっていくのが角凧の魅力」と石田さん。風に乗って約380メートル上空まで揚がったこともあるといい、「凧が点にしか見えなかったよ」と目を細める。

 作品展の開催は、ふとしたことがきっかけだった。毎年11月に開かれる町民文化祭の出品数が高齢化の影響で減少しているのを寂しく思い、角凧を出展したところ大反響。同センターから“個展”の開催を要望された。江戸火消しや風神・雷神などを描いた9点を出品する予定で、「正月気分を味わってもらえれば」と期待する。

 石田さんは「最近は子どもが洋凧しか揚げないのでさみしい」とも。作品展で多くの人が興味を持ち「河村城跡でみんなで凧揚げできればいいね」と、角凧を活用した地域振興にも思いをはせる。

 作品展は入場無料。来年1月19日まで。年末年始などは休館。問い合わせは、同センター電話0465(75)3131。

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