日銀長崎支店長が分析 特長ある産業集積を 投資呼び込む好機を活用

人口社会増減と産業集積の相関

 長崎県内で企業進出や大型設備投資が増えている現状について、日銀長崎支店の下田尚人支店長は「特長のある産業を集積すれば、社会減(転出者超過)が縮小する可能性がある」と分析した。都市圏に比べ有効求人倍率が低く、景気回復局面の今がさらなる投資や進出を呼び込むチャンスと捉える。
 長崎県の人口減少は、自然減(出生数が死者数を下回る)よりも、働き手や子育て世代が関わる社会減の要因が大きい。
 下田氏はまず社会減と産業集積の関係に着目。全都道府県を比較したところ、人口流入が多い大都市圏は、全ての産業分野がバランス良くそろっている。これに対し地方は、特定分野の集積が大きく進んでいる県ほど人口流出が少ない。
 流入超となっている地方の県は、県外や海外の需要を取り込む製造業の集積が進んでいる。群馬県は自動車や家電、富山県はアルミサッシの企業がそれぞれ求心力となり、日本人が減っても、それを上回る数の外国人が入ってきている。一方、長崎県は全就業者に占める製造業の割合が低く、外国人の流入も全国で最も少ない部類という。
 ただ、長崎県では最近になって、半導体や再生エネルギー、航空機などの分野で大型設備投資が持ち上がり、IT系など県外企業の進出も相次いでいる。下田氏は「こうした動きが今後も続き、特長のある分野を柱に産業の集積が進む場合、社会減の縮小に結び付く可能性がある」と指摘した。
 さらに、労働需給との関係も分析した。これまで全国の景気回復が続いて企業の求人数が求職者数を大幅に上回る時期には、長崎県の人口流出が増える傾向があった。現在も全国は同様の局面だが、その割に長崎県の人口流出は緩やか。この一因として、進出企業による雇用拡大があるとみている。
 全国に比べると有効求人倍率が低い分、人材を確保しやすい長崎県の経済環境が、企業進出を後押ししていると下田氏は推定。「長崎県にとって今こそ県外企業や投資を呼び込む好機。これを最大限活用し、特長のある産業の集積をさらに進めるべきだ」と提言した。

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