アルヴェルとどっちが快適!? トヨタ 高級ミニバン「グランエース」の気になるすべてを徹底比較&解説

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

アルファード超えの高級ミニバン登場!

最近話題の新型車といえば、コンパクトカーのホンダ フィットやトヨタ ヤリス、軽自動車のスズキ ハスラーなど、大量な販売を目的としたコンパクトな車種が多い。

その一方で、価格の高いLサイズモデルとして注目されるのが、トヨタ グランエースだ。これはトヨタ アルファード&ヴェルファイアよりも大きなLサイズの上級ミニバンとなる。

グランエースは、アル/ヴェルと似て非なるクルマ

ベースは海外版トヨタ 新型ハイエース

グランエースは、タイやフィリピンなどで売られる海外版の商用車、トヨタ 新型ハイエースバン(※仕向け地により車名は異なる)をベースに開発された。国内版の現行型ハイエースバンはエンジンを前席の下に搭載するワンボックスカーだが、海外仕様はボンネットの内部に収めるミニバンスタイルだ。そのために乗用ミニバンを開発できた。

基本設計が商用車ということもあって、グランエースは耐久性の高いシャシーを備えた後輪駆動車だ。アルファード&ヴェルファイアは前輪駆動だから、同じLサイズミニバンでもクルマの素性はまったく違う。

そしてグランエースはボディが大きい。全長は5300mm、全幅は1970mm、全高は1990mmに達する。全長はVIPセダンのトヨタ センチュリーと同程度で、全幅はさらにワイドだ。アルファード&ヴェルファイアは全長が4950mm、全幅は1850mm、全高は1935mmだ。フロントマスクこそ相当な迫力とデカさだが、ボディ全体で見比べてみればアルファード&ヴェルファイアはグランエースに対し短く、そして小さく見える。

トヨタ 新型アルファード Executive Lounge S[4WD/ボディカラー:ダークレッドマイカメタリック]
トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

グランエースに搭載されるエンジンはすべて直列4気筒2.8Lクリーンディーゼルターボで、ランドクルーザープラドと同じタイプになる。実用回転域の駆動力が高く、車両重量が2700kgを超えるグランエースのボディに適したエンジンだ。

床の位置の高さに要注意

グランエースで注意したいのは、後輪駆動で床を平らに仕上げたミニバンだから、床の位置が持ち上がったことだ。

アルファード&ヴェルファイアの床面地上高は450mm前後だが、グランエースは600mmくらいに達する。ヴォクシー系3姉妹車は低床設計で400mm以下に収まるから、グランエースの床はかなり高い。サイドステップ(小さな階段)を介して乗り降りする。ミニバンとして乗降性はあまり良くない。

トヨタ 新型グランエース Premium スライドドア開口部 2019年12月発売

床が高いから、全高は2m近くても、室内高は1290mmだ。アルファード&ヴェルファイアの1400mmを110mm下まわる。

気になる車内、座り心地は?

3列目も快適!

それでも車内は快適だ。主力グレードのグランエース プレミアムは3列シートの6人乗りで、2/3列目には、アルファード&ヴェルファイアと同様のエグゼクティブパワーシートを装着した。固定されたアームレストと、電動リクライニング機能と足を支える電動オットマンが備わる。

アルファード&ヴェルファイアの場合、豪華なミニバンではあるが、特等席は2列目だ。1列目も相応に快適だが、3列目は一気に下がる。左右に跳ね上げて、荷室として使うことも考慮したから、3列目は背もたれと座面が薄い。座り心地が良好とはいえず、床と座面の間隔も足りないから、足を前方へ投げ出す座り方になってしまう。快適に乗車できるのは、1/2列目シートに座る4名だけだ。

その点でグランエース プレミアムは、2列目に加え、3列目にも大型のエグゼクティブパワーシートを装着したから、3列目の快適性も2列目にさほど劣らない。

3列目は天井が少し低く開放感は乏しいが、セダンの後席に似た落ち着き感が伴う。グランエース プレミアムは2/3列目が特等席で、1列目の座り心地も良いから、6名全員が快適に移動できる。

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]
トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

4列シートのグランエース Gは?

グレードは3列シートのプレミアム以外に、4列シートで8人乗りのGも用意した。

Gの場合、2列目はエグゼクティブパワーシートだが、3列目は電動式ではないリラックスキャプテンシートになる。4列目は座面を持ち上げて前方に寄せられるベンチタイプだ。

室内長は3列シートの6人乗りと同じだから、4列のシートを収めると1人分の足元空間が狭まる。4列のGは“高級なマイクロバス”的な仕様と考えたい。グランエースの主力はあくまでもプレミアムのほうだ。

トヨタ 新型グランエース G(ホワイトパールクリスタルシャイン) 2019年12月発売
トヨタ 新型グランエース G(内装色:ブラック) 2019年12月発売

Gとプレミアム、どちらが買い得?

プレミアムは割高だが、豪華シートは捨てがたい

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

価格はGが620万円、プレミアムは650万円となる。アルファードのV型6気筒3.5Lエンジン搭載車に当てはめると、2列目にエグゼクティブパワーシートを装着したGF(518万5000円)と、2列目をさらに豪華なエグゼクティブラウンジシートに変更したエグゼクティブラウンジ(726万9000円)との中間に位置する。

グランエースはボディが大柄で内外装を豪華に飾ったとはいえ、基本は海外版のハイエースだから、プレミアムの650万円は少し割高だ。3列目までエグゼクティブラウンジシートを備えることを考えても、600万円くらいが妥当だろう。

トヨタ 新型グランエース インテリア(ナチュラルベージュシート×ブラックルーフ) 2019年12月発売

それでも先に述べた通り、2/3列目に豪華なシートを備えた室内は注目される。今までのミニバンはすべて3列目の快適性が見劣りしたが、グランエース プレミアムなら、すべての乗員が高い満足感を得られる。

例えば大切な顧客を送迎する時、従来は2台のクルマを必要としたが、2/3列目が両方ともに豪華なグランエースであれば1台で済む。用途によっては、合理的で経済性の伴ったVIPモデルになり得る。

グランエースは多様化する次世代ハイエースのひとつ

現行型ハイエースにも豪華なワゴンタイプのスーパーロングボディが存在

5代目新型ハイエース スーパーロンググランドキャビン

なお商用バンとされる国内版の現行型ハイエースも、多人数乗車可能なクルマを求めるユーザーの間で人気が高い。

大きな荷室を備えるハイエースバンとは別に、4列シートを備えたハイエースワゴン(10人乗り)が用意され、豪華なスーパーロングボディのグランドキャビンも選べる。乗車定員が14名のコミューターを運転するには中型免許が必要だが、10名以下のワゴンとグランドキャビンなら普通免許で扱える。

グランエースの登場でハイエースワゴンは廃止される!?

5代目新型ハイエース スーパーロンググランドキャビン インテリア

今回グランエースが発売され、4列シート版も設定されたとはいえ、現行型ハイエースワゴンやハイエース グランドキャビンなどがいきなりモデル廃止されるとは思えない。

ハイエースワゴンのボディは全幅が1880mmとワイドだが、いくつかの架装メーカーの手により、4ナンバーサイズに収まるバンを4列シート/10人乗りのワゴンへと改造し独自に販売している例もある。それだけ多人数乗車の需要があるということの表れだ。

ハイエースワゴンは全席に3点式シートベルトとリクライニング機能が備わり、運転のしやすさと多人数乗車の機能を両立させた。グランエースは、このように多様化するハイエースのひとつと見ることもできる。

海外版のワイドで超ロングな新型ハイエースバン、国内発売はある?

グランエースのベースになった海外版ハイエースの商用モデル(新型ハイエースバン)を、国内で売る予定はないのだろうか。

トヨタの販売店に尋ねると「その話は聞いていない」という。背景には国内で売られるハイエースバンの優れた空間効率があるだろう。ボンネットを備えずにエンジンを前席の下に搭載したことで、全長が4695mmのボディでも荷室長は3000mmに達する。

トヨタ 海外向け新型ハイエース
トヨタ 海外向け新型ハイエース

グランエースのベースになったボンネット内部にエンジンを搭載する海外版ハイエースでは、全長が5265mmに達するのに、荷室長は2910mmだから、国内で売られる4ナンバー車のハイエースを下まわってしまう。ハイエースは日本津々浦々に点在する狭い裏道を走ったり、限られたスペースの倉庫内で荷物を収納することも多く、4ナンバーサイズを守ることは大切だ。

まとめ:グランエース/新型ハイエースは、まだまだ可能性が広がる1台だ

トヨタ 新型 グランエース[東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース 参考出品車]

それにしてもトヨタ ハイエースシリーズは商用バンのベストセラーであり、世界には新旧併せてさまざまな仕様が用意されている。国内でも、貨物需要のみならず送迎車両やキャンピングカー、さらには高規格救急車のベースとしてもポピュラーな存在だ。

新型グランエースのベースになった海外向けの新型ハイエースバンは、大柄な車体ということもあって、国内のビジネス需要で使うには合理性に欠けるかも知れない。しかしレジャーカーとして考えれば、また新たな用途も広がる。グランエースや海外向け新型ハイエースの2/3列目を取り去りフリースペースにしたようなベース車があると、広々したキャンピングカーや移動販売車などの楽しいクルマも造れそうだ。今後の更なる展開にも期待したい。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:茂呂 幸正・トヨタ自動車]

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