産業交流拠点施設 建設進む 2021年度供用開始 指定管理者も決定

▲施設東側から見た完成イメージ

 2021年度の供用開始を目指し、2019年4月「山口市産業交流拠点施設」の建設が開始された。本事業の概要を中心に、新山口駅周辺の安全性・利便性・回遊性の向上および小郡都市核全体の機能強化へ向けた取り組み等について紹介する。

 同施設は、交流人口創出と産業支援・人材育成機能の役割を果たす拠点として整備される。施設全体の延べ床面積は約1万4900平方メートルで、事業費は約109億8000万円。2017年3月、公募型プロポーザル方式で同施設整備等の事業者が森ビル都市企画グループに決定しており、このほど指定管理者に森ビル都市企画・コンベンションリンケージ共同企業体が選定された。指定期間は2021年4月1日から2036年3月末まで。

 最大2000席の収容能力を持つ可変型の「多目的ホール」をはじめ、産業支援機関等と連携した事業者支援や、ビジネスコミュニティ創出のためのセミナー・イベント等を行う「産業交流スペース」、ワンストップ総合窓口機能の充実を図ろうと、やまぐち産業振興財団・山口しごとセンター・山口県福祉人材センターなどが入居する「公的機関等オフィス」などが設けられる。

 また、市民の健康意識の醸成や健康寿命の延伸等を目的として、地域医療と連携したメディカルフィットネス施設「ライフイノベーションラボ」、学生や若い社会人などに向けた居住型の人材育成施設「アカデミーハウス」(21人入居)、市有地を活用した民間の独立採算事業「環境配慮住宅」(3棟35戸)も配置。音楽スタジオ、会議室、駐車場(立体・平面約500台)、駐輪場などの整備も予定されている。

 施設の東側と西側には、それぞれ広場が誕生。駅前は多目的ホールのホワイエに面した「出会いの広場」、西側は「ライフイノベーションラボ」や「アカデミーハウス」に隣接した「地域交流広場」で、イベント等と連携した利活用や市民・施設利用者間の交流、コミュニティーづくりが見込まれている。二つの広場をつなぐ吹き抜けの自由通路やロビーにはテーブルやいすが設置され、気軽に読書や学習に利用できる。

▲多目的ホール

持続可能なにぎわい創出目指し
「ターミナルパーク整備」プロジェクト佳境

 山口市産業交流拠点施設の建設も含め、「出会う・つながる・生まれる・広がる」を全体コンセプトに2007年度から山口市が進めているのが「ターミナルパーク整備」事業だ。総事業費約160億円の巨大プロジェクトで、「新山口駅ターミナルパーク整備(基盤整備)」では、①南北自由通路②橋上駅舎③北口駅前広場④新幹線口(南口)駅前広場⑤既存自由通路⑥県道新山口停車場長谷線⑦アクセス道路の構想が策定された。

 これまでに①②③⑤が完了。現在は、2020年度末完成予定で④南口(新幹線口)駅前広場および⑥山口宇部道路長谷ICと駅前とを繋ぐアクセス道路「県道新山口長谷線」(山口県事業)の整備が、2022年度末完成予定で⑦市道矢足新山口線(通称・駅前通り)の整備が進められている。

 南口駅前広場では、これまで混在していたタクシーと一般車の駐停車・乗降場を分離。送迎時の混雑解消につながる。自家用車ゾーンとタクシー・観光バスゾーンの間には交流スペースも設けられる。また、長谷ICと駅が直結することで、アクセス性・回遊性の向上や駅の交通結節機能強化も期待される。山口県事業として広範囲の道路のネットワーク工事が進められている。

 さらに、駅前通りは北口駅前のシンボルロードという位置づけ。「安全で快適な都市空間の形成」を目指し、電線の地中化工事、歩道の美装化や緑化が進行中だ。

▲15年10月完成の南北自由通路

生まれ変わった広場や通路に高評価も
「街と駅をつなぐ0番線」

 2015年10月に南北自由通路が完成。壁面を彩る「垂直の庭」は、山口に自生する約140種類の植物が用いられた全長約100メートル、高さ約5メートルの垂直庭園で、フランス人の植物学者兼アーティストのパトリック・ブラン氏が監修した。一般市民サポーターを含む定期的メンテナンス、庭案内人によるツアーやワークショップ、マルシェなどの催しも実施。在来種活用のための綿密な取り組みと地域住民との協働活動であること、プロジェクト全体の完成度の高さが評価され、2018年11月に「第17回屋上・壁面緑化技術コンクール」で国土交通大臣賞を受賞した。

 2018年3月に全面供用が開始された北口駅前広場は、「街と駅をつなぐ0番線」がテーマ。カフェスペースやエフエム山口と連携したサテライトスタジオをはじめ、県内の自生植物が植樹されたデッキ「0テラス」、交流広場、交流活動ホールなどが設けられている。2018年7月、第52回SDA賞(日本サインデザイン協会)金賞受賞。

 2019年8月には、日本建設業連合会が優良な建築物を表彰する「第60回BCS賞」に南北自由通路と北口駅前広場が選ばれた。

 山口市は、2007年度に総合計画を策定、2009年度までに小郡都市核の企業と地域住民をはじめとする市民へのアンケートを実施した。2015年度に具体的な計画を策定し、パブリックコメントを募集。説明会なども行い、市民の意見を反映させて整備を進めてきた。「新山口駅が新しい人の流れや交流を生み出す場所として、山口市内の皆様の拠点であるとともに山口市外の人を呼び込む起爆剤になれば」と期待を寄せる。

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