「令和」を迎え、今年の山口は? 渡辺純忠山口市長に聞く

 今年の干支は庚子。前回の庚子は、高度経済成長まっただ中の1960(昭和35)年。その前年に東京への64年の夏季五輪招致が決定していた。時代は「令和」になり、今年は56年ぶりに東京五輪が開かれる。山口における2020年はどのような年になるのだろうか。渡辺純忠山口市長に聞いた。

(聞き手/サンデー山口社長 開作真人)

「教育・子育てなら山口」など推進

 

 -あけましておめでとうございます。まず最初に令和最初の年、2019年を振り返っていただけますか。

 渡辺 昨年は、「国の内外にも天地にも平和が達成される」という「平成」から、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」との意味が込められた「令和」という新たな元号になりました。すべては紹介できませんが、令和元年における主な取り組みを挙げると、まず2021年度の供用開始に向け、山口県内最大の2000席を有する多目的ホールを備えたJR新山口駅北口の産業交流拠点施設の建設工事に着手しました。さらに県との連携のもと、アクセス道路となる都市計画道路新山口駅長谷線の今年3月の供用開始に向けた整備など、山口県ナンバーワンの「ビジネス拠点」形成に向け都市基盤の強化も進めています。次に、小郡、佐山、二島の各地域交流センターを建て替え整備。地域づくりや地域防災の拠点となる地域交流センターですが、市町合併後の建設整備は、これで9施設になりました。そして7月には、秋穂二島の美濃ヶ浜海浜広場がオープン、9月には道の駅長門峡がリニューアルオープンしました。地域の魅力発信と回遊性の更なる向上を図っていきたいと考えています。さらに、こども医療費助成制度の対象拡充により、小学6年までのすべての児童の医療費を無料に。また、全小・中学校へのタブレット端末や電子黒板の導入による先進的なICT教育の環境づくりを進めました。幼稚園・中学校の普通教室に加えて特別教室にもエアコンを導入するなど、子育て世代の皆様が「教育・子育てなら山口」と思っていただけるような魅力を高めることができたと思います。

▲渡辺純忠山口市長

今春「山口市防災ガイドブック」全戸配布

 
 -ここのところ、全国各地で大規模な自然災害が相次いで発生しています。掲げられている「安全安心のまち」の取り組みについて、ご説明をお願いします。

 渡辺 市民の皆様が安全で安心して暮らせる、集中豪雨に強いまちづくりとして、2015年2月に「山口市総合浸水対策計画」を策定。雨水調整池や貯留槽の設置、河川のしゅんせつ、雨水貯留施設等への補助制度創設など、ハード・ソフト両面での防災・減災への取り組みを進めています。さらに、地域防災力の向上に向けた自主防災組織への支援、防災講座の実施、防災行政無線のデジタル化等にも取り組んでいます。

 -昨年は、8月末の九州北部豪雨で佐賀県などに、9月と10月には大型台風で東日本に、それぞれ甚大な被害が発生しました。

 渡辺 これらの被災状況を受け、早期避難の重要性をあらためて認識しました。現在、自然災害による被害範囲を地図化したハザードマップの改訂を進めており、春には新しいマップを掲載した「山口市防災ガイドブック」を全戸配布する予定にしています。手に取られたらまず、避難場所や避難経路の事前確認をお願いいたします。そして、災害発生前後のあらゆる状況下において、全ての市民の方々が情報を取得できるよう、緊急速報メール、エリアメール、防災メール、ツイッター、防災行政無線等、可能な限り多くの伝達手段を使い、情報発信もしていきます。

「観光立市・やまぐち」を具現化

 

 -昨年3月、「山口市観光交流加速化ビジョン」を策定されました。

 渡辺 観光産業は裾野が広く、経済波及効果の高い総合産業です。その一方で、国内外の熾烈な競争を勝ち抜くことが求められます。ビジョンの計画期間は2019年度から2027年度までで「観光客数600万人、宿泊客数100万人、外国人観光客数16万7000人」が目標。旅行者の嗜好をしっかり捉えた戦略を構築することが重要です。

 -初年度における具体的な取り組みは?

 渡辺 本市出身の卓球日本代表の石川佳純選手が出演する、食(イート)と芸術(アート)をテーマにした観光プロモーション動画を制作。また、新たに任用した台湾出身の国際交流員によるインスタグラムでの情報発信などに取り組みました。東京オリンピック・パラリンピックが開催される今年は、本市の観光需要を喚起する上で重要な年となります。外国人観光客の誘客強化、コンベンション誘致に伴う湯田温泉のにぎわい創出、特別な会場での会議やレセプションによって地域特性等演出する「ユニークベニュー」調査研究など、計画的かつ戦略的に推進することで「観光立市・やまぐち」を具現化していきます。

 -そのためにも、他県からの玄関口・山口宇部空港およびJR新山口駅と、宿泊拠点・湯田温泉および観光拠点・大内文化ゾーンとを結ぶ公共交通の強化が必要だと思います。

 渡辺 仰せの通りです。今後、MaaS(サービスとしての移動)や自動運転等の新技術を取り入れた移動手段を検討する必要があると考えています。また、県との連携も図りながら、鉄道、バス、タクシー等既存の公共交通と、カーシェア等新たな手法・先進技術を組み合わせることで、多様なニーズに対応した移動手段の確保を模索していきます。まずは、中山間地域での実証実験に取り組みます。

中小企業の「人不足」を解消

 

-大企業の市内への進出が続く一方で、市内中小企業における働き手不足が顕著になっています。

渡辺 全体の雇用情勢が着実に改善している一方で、中小企業における人材不足感は高まっています。そのため、若者、UJIターン者、女性、高齢者、障害者など、さまざまな人材の市内企業への就業を促進する各種施策を実施。加えて、外国人労働者の就業支援にも取り組んでいきます。

 -中小企業においては、後継者不在による廃業も増えつつあります。

 渡辺 中小企業の事業承継については、喫緊の課題だととらえています。都市圏に比べて中小企業の占める割合が高い本市経済の持続的な発展のためには、既存企業に蓄積された技術・ノウハウの継承がとても重要です。対策として昨年11月、中小企業支援機関等で形成される事業承継支援相談窓口が開設。2021年度にオープンする市産業交流スペースには、県央連携都市圏域まで範囲を広げての支援サービスの展開が予定されています。

雪舟生誕600年、東大寺サミットなど予定

 

▲開作真人サンデー山口社長

 -では最後に、今年山口市内で開催が予定されている催しについてお聞かせください。

 渡辺 ①東京オリンピック・パラリンピック関連事業、②雪舟生誕600年記念事業、③東大寺サミットなどがあります。①ではまず、5月14日に市内を通る聖火リレーの到着を祝うイベント「セレブレーション」を中央公園で開催。また、水泳スペイン代表チームの事前キャンプを受け入れることにしており、期間中には市民との交流事業も予定しています。加えて大会中には、同チームや本市ゆかりの出場選手らを一体応援するパブリックビューイングも実施予定で、皆様とともに熱く盛り上がるのが今から楽しみです。一方、スペインとのつながりでは、2月にパンプローナ市との姉妹都市締結40周年を迎えます。そのため、様々な記念事業も年間を通じて計画しています。次に②は、室町時代に活躍した水墨画家・禅僧の雪舟生誕から、今年は600年という記念の年になります。市内にある常栄寺雪舟庭、雲谷庵跡、常徳寺庭園等の地域資源を活用し、さらには彼の才能を見出し開花させた「大内氏」の存在も重ね合わせながら、各種イベント等を通じて広くアピールしていきたいと考えています。また③は、10月3日、4日の市内開催が決定。東大寺サミットは、造営や再建などに関係深い市町村が友好と連携を深めたりするのを目的に1991年に発足し、合併前の旧小郡町と旧徳地町が加盟。1992年には、防府市、旧小郡町、旧徳地町、旧美東町の4市町合同でサミット開催を引き受けました。今回、27年ぶりとなる地元開催が決まり、徳地地域ではあらためて重源上人に関する歴史検証が行われています。サミット時の具体的な催しの内容については、現在関係団体と協議中ですが、これを機に市内外の方々に本市と奈良・東大寺、俊乗房重源上人とのつながりを知っていただき、徳地地域にも足を運んでいただきたいと思います。

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