令和元年も残り少なくなりました。「結婚難民の羅針盤」では今年も、社会的な思い込みがかなり強いといえる日本の結婚について、正確なデータ発信を続けてきました。全国の結婚支援センターや相談所の方々にデータでレクチャーさせていただく機会の多い筆者は、「婚活疲れ」という現象の原因について、以下のことを感じています。
(1)手当たり次第に行動してしまう
(2)思い込みに基づく行動なので結果が出ない
(1)(2)ともに、行動の背景に欠落しているのは「正確な状況判断」です。「結婚難民の羅針盤」はこの「正確な状況判断」力を強化することを目的として、結婚を希望する読者が正確な知識を得るための連載ともいえると思います。
さて、今回は日本における国際結婚について、正確な発生状況をお伝えしてみたいと思います。
国際結婚は全成婚のわずか3.5%
大都市東京の繁華街だけでなく地方都市を歩いていても、それなりに外国人をよくみかけるようになりました。「国際結婚もかなり増加しているのでは?」と思う読者もいるかもしれません。
しかし、2017年に提出された婚姻届60万6,866件のうち、外国人との結婚は2万1,457件で、わずか3.5%にとどまりました。1970年からの国際結婚比率をみても、2006年の7.4%をピークに国際結婚の割合はむしろ下降傾向にあります。
こういったことからも、私たちの結婚に対する感覚がいかにズレやすいか(いい加減か)ということをうかがい知ることができるのではないでしょうか。
2万1,457件の国際結婚のうち、夫が日本人の結婚が1万4,795件、妻が日本人の結婚が6,662件で、それぞれ69%と31%でした。男性の国際結婚の方が女性の国際結婚よりも2.2倍多い計算になります。もちろん、外国人と結婚した場合に、外国籍に移行する場合はカウントされていませんので、正確には「外国人と結婚して日本人のままでいる国際結婚について」は圧倒的に男性が多い、というデータになります。
外国人妻のトップは「中国人妻」34.6%
妻が外国人のパターンで見てみると、最も多かったのは中国人妻の34.6%でした。外国人妻の3人に1人以上が中国人という状況です。その次に多いのがフィリピン人妻で24.5%、4人に1人です。この中国人妻とフィリピン人妻で約6割を占めます。
その他の国の妻も2割程度発生し、(10人に1人の)韓国人妻よりも多いことから、こういったことがダイバーシティを感じさせるようになった(国際結婚が増えたような気にさせる)一因にあるのかもしれません。
外国人夫のトップは「その他の国」32.3%
筆者の親戚・知人・友人にも外国人と結婚した女性がいます。お相手を思い出すと、イタリア人、スペイン人、イラン人、ドイツ人……。確かに、国内にとどまった女性、海外に転出した女性どちらを思い出してみても、国の統計の「その他の国」の男性との結婚です。
同じ日本人といっても、男女でマッチング親和性の高い外国人が異なる、というところがとても興味深い結果です。1国ベースで見ると、韓国人夫が25.4%と外国人夫の4人に1人です。男性は東アジア人女性とのマッチングにほぼ特化している一方、女性はグローバルな傾向です。
計量的な分析を行うと、男性に比べて女性は結婚の条件が多様(人によって条件がそれぞれ異なる度合いが高い)であるという特徴を、国際結婚の相手分析の結果もよく表しているように思います。
国際結婚は簡単ではない
今回は国際結婚の最新動向をお伝えしました。長期推移でみると、むしろ10年前よりも日本人としてとどまるケースの国際結婚は難しくなっているようです。また男女でマッチングする相手にもズレがあります。
国内での国際結婚が難しくなっていることを意外と感じる方に、データで考えるところのダイバーシティについてお伝えしたいことがあります。ダイバーシティという言葉を聞いて、「ようやくマイノリティの数が増えて以前のマイノリティが量的にそうでもなくなった」と勘違いする方がいます。
ダイバーシティは、そもそもいろんな価値観の人が増えたという数の話ではありません。超少数の方も含めた様々な価値観の人がいることを認知する、という言葉です。そして、ダイバーシティ推進ではどちらが多数派か少数派かは関係なく、互いに「そういうこともあるよね」と感じられるようになることが求められます。
それがマイノリティであれ、マジョリティであれ、互いに「勢力を増した」などとマウントをとることを目的とはしていません。国際結婚は増えたのだ、と信じ込んでしまっていた方は、もしかすると上記のような「ダイバーシティの誤解」を生み出してしまった原因となる「量的拡大誤解癖」があるのかもしれません。
こういった事実誤認しやすい思考癖こそが、実は思い込みの行動でアタックし続けた結果などの「婚活疲れ」の元凶、といえるのかもしれません。