【MLB】20歳マイナーリーガー“初任給”は3万6000円! 元大リーガー告白「衝撃を受けた」

フィリーズなどで活躍したダグ・グランビル氏【写真:Getty Images】

カブス、フィリーズで通算1100安打を記録したダグ・グランビル氏がマイナー時代を述懐「貧困から脱することはできない」

 メジャーでは活躍次第で大金を手にすることができる一方、メジャー昇格するまでは過酷な生活を過ごす。マイナーリーガーの給与明細が公開され、その年俸の低さが米国で話題となったが、それは今も昔も変わりないようだ。米メディア「ジ・アスレチック」は1996年から9年間活躍した元メジャーリーガーの特集記事を掲載。“初任給”の手取りが327ドル(約3万6000円)と衝撃的な内容となっている。

「ジ・アスレチック」が特集したのはダグ・グランビル氏。1991年ドラフト1巡目(全体12位)でカブス入りし、96年にメジャーデビュー。フィリーズなどでメジャー通算9年間でプレーし、通算1100安打、168盗塁を記録。2002年には年俸400万ドル(約4億4000万円)を稼いだ俊足巧打の1番打者だ。

「私がマイナーリーグにいたのはかなり前のことだが、それほど変わっていない。最初の給与に衝撃を受けた。これはピラミッドであり、私はそのピラミッドを登っていた。最初の契約をした時、私は20歳。最初のマイナー契約の交渉をした。そして、ニューヨーク-ペンリーグのジュネーブ・カブスでプレーする自分の給与を確認した。月850ドル。そして、最初の給与を受け取った。(税引き後の手取りは)327ドルだった」

 327ドルは2週間分とはいえ、1か月分に換算しても700ドル(約7万6700円)足らず。これは日本の高卒初任給の水準(19年は約17万円)にも大きく劣る額となっている。それでも、多くの選手がマイナーでプレーするのはメジャー昇格の「夢」を追っているからだという。グランビル氏はこう述懐している。

「しかし、それがどうした。メジャー昇格するんだ。プロ野球の経済的ヒエラルキーを理解していた。マイナーリーグはトライアルの場。重要なのは給与ではなく、機会だった。メジャーリーグで何百万ドル稼ぐことになれば、+Aの給与なんて誰が気にするだろうか?」

「こうした選手たちの大多数は貧困から脱することができない。誰も我々の貧困に関する主張を受け入れてくれないだろう。真剣に教育を受ければ、その後に別の道に進むこともできると思われるだろう。この状況についての認識は、内部の人間も外部の人間も、うのみにしている。将来手にするものが重要である。だから、誰もシステムを変えなかった。私はメジャーリーグで9年プレーし、マイナーリーグの問題について考えなくなった」

大金を得られるメジャー昇格を目指して、マイナーリーガーは低賃金に屈せず汗を流す

 マイナーリーガーは生活面の充実よりも「夢」。将来メジャーの大舞台で大金をつかむチャンスがあるからこそ、選手たちは低賃金にも屈することなく一心不乱に汗を流すという。

「メジャー昇格を果たす選手はほとんどいない。そうした選手たちの多くがそれほど長くはプレーできない。プロ野球選手の大多数が最低賃金で多くの時間プレーする。しかし、彼らには夢を叶えるチャンスがある。その夢が我々に公平さを見えなくさせる。同じ職業で年俸3000万ドル(約33億円)もいれば、1.3万ドル(約142万円)もいる。この隔たりは資本主義で説明できるかもしれないが、意図的にそうなってもいる」

 今オフはアストロズからFAとなっていた剛腕ゲリット・コールが9年3億2400万ドル(約356億円)でFA投手史上最高額で契約。毎オフ、超大型契約が話題となっているのが「夢」をつかむのはごく一握りだ。グランビル氏は、こう締めくくっている。

「私を含め多くの選手たちがマイナーリーグについて受け入れている意識を変えなければならない。選手たちは力を持っているが、厳しいメジャーリーグで戦って大金を得ている時に、自分が直面していないことを考えるのは難しいし、過ぎ去ったことを考えるのはもっと難しい。システムが存在する理由はもちろん雇用主サイドによるものであるが、選手たちがマイナーリーグが過去のものになった時にこうした問題をそれほど考えないことにもあると、私のような元選手たちが示すこともできる」

 現状では多くのマイナーリーガーたちが生活のためにウーバードライバーなどの副業を行っている。現在のMLBと選手会の労使協定が終了する際にマイナー選手たちの待遇改善も議題となりそうだ。メジャー昇格の夢があるとはいえ、“ハングリー精神”だけでは片付けられない厳しい議題となりそうだ。(Full-Count編集部)

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