自己最高の戦果を記録したフェルスタッペン、2020年はF1王座獲得に集中/今宮純のF1ドライバー採点総括(後編)

 これを書かないと年を越せない。2019年シーズン、グランプリごとに『ベスト・イレブン』ドライバーを選び、☆数で採点してきた。それを基にF1ジャーナリストの今宮純氏が『2019ファイナル・ランキング』を一挙発表。後編は10位から1位までを紹介。

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■10位 ピエール・ガスリー/トロロッソ・ホンダ(FIAランキング7位)

ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)

 シーズン中に自らをバージョンアップしたガスリー。上層部の決定によりレッドブルからトロロッソに“配置交換”された夏休み明けの第13戦ベルギーGPから、前半とは違ういきいきしたレースをつらぬいた。レッドブル12戦で63点、トロロッソ9戦で32点。ブラジルGPの2位表彰台(18点)には二つの意味がある。チームのベスト・ランク6位を確定させたこと、みずから野心と自信を取り戻したこと。さらなるニュー・バージョンを2020年に期待しよう。

■9位 ランド・ノリス/マクラーレン(FIAランキング11位)

ランド・ノリス(マクラーレン)

 ルーキーにとって最初の予選はプレッシャーがかかる。開幕戦オーストラリアGPのフリー走行1回目から3回目まで18番手だったノリス。そのときはアルボンのほうをマークしようかと迷った。しかし、なんとQ1でノリスが8番手に飛びこんできた。Q2も9番手で突破した。そしてQ3は8番手。19歳の衝撃が走った。全21戦を終えチームメイトのカルロス・サインツJr.に予選は<11対10>、決勝は<8対13>。課題が分かった2年目ノリスの“吸収能力”がマクラーレンを変えていく。

■8位 ダニエル・リカルド/ルノー(FIAランキング9位)

ダニエル・リカルド(ルノー)

 ジェットコースターのように上がったら、急降下を何度も繰り返した前半数戦に彼はつかんだ。ローダウンフォース仕様ならやれる。第3戦中国GP7位、第7戦カナダGP6位(予選4番手)、第14戦イタリアGP4位(予選5番手)。上位争いではなくてもどこにいてもオーバーテイク・プレーを決めた達人(TVに映らなくてもラップチャートを見ればよく分かる)。

■7位 アレクサンダー・アルボン/レッドブル・ホンダ(FIAランキング8位)

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)

 パドックでの好感度がしだいにアップ、新人には大切なことだ。3戦目の中国GPでピットスタートから10位、これでますます存在感を強めた。フリー走行時点ではミスしても決勝までに自己修正、果敢な「バトル・プレー」が上層部の夏の決断につながった。レッドブル・ホンダ昇格・初戦のベルギーGPスパでそのプレーをやって見せ5位、鈴鹿ではマックス・フェルスタッペンと予選同タイム3列目を。アピールできた後半9戦を終え、“エース”と組み合う2年目の進化が注目される。

■6位 セバスチャン・ベッテル/フェラーリ(FIAランキング5位)

セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)

 キャリア13年目の“曲がり角”だったのだろうか。第7戦カナダGPの48周目、3コーナーをターンインできず芝生をカット、トップのままコースに戻ったプレーが断罪された。危険な行為に5秒タイムペナルティ、「53勝目を奪われた」と怒り心頭のベッテル。この事件後から彼はルクレールに予選でかなわず、コース上ではミスが相次ぎちぐはぐなレースがつづくようになっていった(スランプと言わざるを得ない)。それでも第15戦シンガポールの勝利と第17戦鈴鹿のPPに、『ふつうにあたり前のセブ』を見た気がする。

■5位 カルロス・サインツJr./マクラーレン(FIAランキング6位)

カルロス・サインツJr.(マクラーレン)

 オフに入り各国メディアが報じる数々の『19年ベスト企画』で、彼は上位にランクされている。まったく異議はない。2019年シーズンのドライバー採点で☆☆☆☆を6回、☆☆☆も含めるとサインツは中間チーム勢でもっとも多いのだ。キャリア5年、25歳の彼は年下の早熟年代と年上のベテラン世代のど真ん中、中間世代リーダーのポジショニングについた。

■4位 バルテリ・ボッタス/メルセデス(FIAランキング2位)

バルテリ・ボッタス(メルセデス)

 わずかの差でサインツより上にノミネート、開幕序盤の2勝と3連続PPで満点☆を重ねたからだ。しかし、終盤の日本GPとアメリカGPで勝つまでが長い“足踏み状態”だった。1年を戦いきるさらなるメンタル・スタミナ力、それがそなわれば名実ともに『四天王』にきっとなれる。

■3位 シャルル・ルクレール/フェラーリ(FIAランキング4位)

シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 2000年代王者たちとくらべてまだ2年目の彼が際立っていたのは、落ち着いた態度と言動、芯の強さを秘めた振舞いだろう。シーズン当初にチームから“セカンド扱い”されるのを受け入れ、コース上で速さを示すことで周囲の見方を変えていった。

 19年のハイライトであるフェルスタッペンとの勝負を振り返ると、第9戦オーストリアGP終盤の3コーナーできわどくも彼にしてやられた。この雪辱を果たす場が日本GP、スタート直後のあの2コーナーだった――。これを書いている23日『2024年までの長期契約』が発表された。フェラーリは5年後までエースの座をルクレールに託した。

■2位 マックス・フェルスタッペン/レッドブル・ホンダ(FIAランキング3位)

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 ナチュラルなスピードとアグレッシブなバトル、武闘派らしい闘いで3勝+2PP+278ポイントの自己最高戦果を挙げた。レッドブルの『ビッグ・エース』はこの戦果にけして満足していない。2020年シーズンこそ開幕ダッシュを可能にするシャシーとパワーユニット(PU/エンジン)をと、いまから声高に望んでいる。

 フカヨミするなら“パフォーマンス条項”を担保するのか、「20年途中時点で万一満たされなければ?……」とも思えてしまう。22歳で『ビッグ・エース』に昇りつめたマックス、しゃれではないがテッペン王者になることしか頭にない(どこのチームであろうと)。

■1位 ルイス・ハミルトン/メルセデス(FIAランキング1位)

ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 これまでの採点で☆がつかないレースはなかった。全戦入賞・パーフェクト周回記録は素晴らしい。<チェッカー優先主義>をさらに高めたハミルトンだからこそ五冠から六冠をきわめた。

 PPは少なくても勝ち上がるレース・マネージメントは亡きニキ・ラウダ(70年代フェラーリ)のようであった。個人的に“2019タイプ・ハミルトン”を強く感じたのは、セルフ・マーケティング意識だ。F1レーサーでありながらあらゆる分野に関心を抱き、触発され、PR活動しようとしている。ここまでやり遂げたからいつヘルメットを脱いでもいいのだろうか。1年後のハミルトンを想像しながら後編を閉じよう。

PS 今シーズンもご愛読ありがとう。よいお年を、2020年シーズンを期待しましょう。

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