あの『映画秘宝』も休刊 これを窮地と取るか好機と取るか コンビニで成人誌が置かれない今こそ試されるライターの力|藤木TDC

画像は『映画秘宝 2020年 01 月号』より

年末に突然舞い込んだ月刊誌「映画秘宝」休刊の知らせ。驚いた方や残念に思っている方も多いだろう。版元の洋泉社を親会社の宝島社が吸収合併するのにともなう休刊、というより部署の廃止という感触だ。

実は私は宝島社が「(月刊)宝島」を休刊した時もそこに原稿を書いていて、その時の同社の即断即決的な休刊方針を知っていたので、似た経緯があるのではと感じた。ただ「映画秘宝」は黒字雑誌で特約のある書店も多く、また映画宣伝部やDVDメーカーなども頼みにする媒体だから、「映画秘宝」の誌名が使えるかは別として、誰かが編集部を会社登記して立ち上げればあっさり復刊はなるだろう。案外大きなところがバックにつく可能性もなくはないと思う。

それはそうと2019年、休刊のニュースはそればかりではなかった。

1月にコンビニエンスストアが成人向け雑誌の取り扱い中止を発表。8月末をもって大手コンビニのほとんどが原則、成人誌コーナーを撤去、それにともない多くの成人誌が休刊になった。その出来事をもって「エロ本の終焉」と発言する人もいたが、私の考えは少し違う。

私が2016年に高松で撮った写真Aを見てもらえば分かるように、地方では成人誌コーナーにかなり大きなスペースを使っていたコンビニがあり、成人誌はそれなりに力のある商品だったのだ。そうした商品が撤去されたあとにも、地域によってまだまだ男性向け雑誌に大きく棚を取っている店もある。

写真Bは2019年の札幌のコンビニだが、棚に並んでいる雑誌のいくつかは成人棚の撤去前後に新たに出版されたエロ強めの実話雑誌だ。

成人誌のほとんどはヌード写真中心のグラフ雑誌で、実話雑誌はザラ紙の文字中心である。こうした実話雑誌の中には、成人棚消滅後にグラフ雑誌の代替として購入され売上げを伸ばしたものもある。それは男性にとってエロ情報の載った紙媒体はまだまだ重要な商品であると示すデータでもある。

つまりコンビニにおいては小口にシール貼りのある成人雑誌は消滅したが、それに代わる媒体が早くも登場して増殖しつつあり、それらもエロ本の一種と考えるなら、エロ本はまだ終らず、新たな芽吹きが始まっている段階ともいえる。

そして私のようなフリーライターの立場からすると、そうしたザラ紙の実話雑誌に書き続けられることがひとつの希望であり、ザラ紙雑誌の持つアナログでアナクロな触感の上で活字で何ができるか問われることに意義を感じる。

実話雑誌は60年代にブームになった紙媒体だが、ピンク映画やカセットテープが生き伸びているように、ザラ紙雑誌も若い読者を獲得できると思うし、そこからエロ文化の新たなサムシングが誕生する可能性もある。その意味ではエロ本はまだ「終焉」していないのだ。

私は「映画秘宝」にも長く書いてきたが、同誌は“老眼殺し”といわれるほど文字を詰め込んだ雑誌であり、やはり活字で何ができるか問われていたように思う。同誌がなんらかの形で復刊するならば、そこでは映画に対する活字の新たなアプローチが探求されるべきだ。そうでなければ雑誌、紙媒体として復刊する意味はないのだから。

そのような意味で雑誌の衰退はライターにとって実は新たなチャレンジの機会でもある。ライターとしての資質が問われる場であり、そこに楽しさややり甲斐を感じなければライターをする意味はない。雑誌の現状は私にとっては案外、好機なのだ。(文◎藤木TDC)

※タイトル画像は休刊が発表された『映画秘宝 2020年 01 月号』より

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