「韓係」改善は

 ジャージーの胸に桜を咲かせ、ラグビー・ワールドカップで日本代表は心一つに躍進した。一心同体をもじって〈一心桜体(おうたい)〉。住友生命保険が募り、先ごろ上位作品が発表された今年の「創作四字熟語」にある▲リチウムイオン電池の生みの親で、ノーベル化学賞を受けた吉野彰さんは〈電池創造〉(天地創造)-と秀作ぞろいだが、願い事をつぶやくような〈韓係(かんけい)改善〉(関係改善)という一作もある▲日韓関係が戦後最悪といわれた1年だった。先日の日韓首脳会談では、対話を続けることで一致したが、歩み寄りの一歩を踏み出したとは言い難い▲首脳が対話したというだけで「前進」とみる向きもある。確かに、にらみ合う表情はいくらかほぐれたとしても、元徴用工への賠償問題で折り合える案が何か示されない限り、らちは明かないだろう▲視界不良の〈韓係改善〉だが、それを願う声に今や切実さもこもる。韓国からの訪日客数は落ち込むばかりで、釜山から海上航路で対馬市を訪れた今年の観光客は昨年よりも4割減、つまり15万人ほど減ったらしい▲深謀遠慮(しんぼうえんりょ)を〈辛抱遠路(しんぼうえんろ)〉。かつての創作四字熟語の秀作にある。マイホームを持つ人の遠距離通勤のつらさを表す一作だが、歩み寄りの道のりがなお遠い隣国との関係もそうだろう。一歩を踏み出す新年に。(徹)

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