帰省しない人必見 ここは人類の実家か!? 誰もがホッとする“家すぎる居酒屋”で一杯やってきた!|Mr.tsubaking

元気でいるか? お金はあるか?

まもなく年が明けて、令和初のお正月を迎える。私は例年、福岡の実家に帰省して父の生家であるお寺などで正月を過ごすのだが、この年越しは事情により帰省が叶わず東京で過ごすことになった。

つまり「実家不足」に見舞われることになる。ということで、ビタミンJ(実家のJ)を摂取するために、友人と都内にある「実家すぎる居酒屋」でビタミンJを摂取して血中実家度を上げておくことにした。

地下鉄丸ノ内線の新大塚駅から歩くこと10分弱。飲食店どころかお店もない住宅街のなかに、実家すぎる居酒屋「ふくはら亭」が見えてくる。

外観はほとんど単なる一軒家なので、スマホの地図アプリと周囲をしっかり見ていないと絶対に見つけられない。

この店は50がらみの店主がひとりで切り盛りしているため、予約のみで料理は2000円(5品)のコースだけ。入店というより、人の家にお邪魔するような気持ちで中へ入ると、そこはまさに実家(誰かの)だった。

もちろん自分の実家ではないのにどうしてこんなに落ち着くのだろうというほど、日本人の遺伝子に組み込まれているレベルの実家がそこにあり、入店早々やたら落ち着くことができる。

テーブルにはコースの最初の料理が用意されていて、これもまさに親戚が集まる日の実家のそれとしか言いようがない。

なぜこんな空間が誕生したのか店主に聞いてみた。

知らない人の家の仏壇までも……

それによると、西新宿の立ち飲み屋の店長をしていたそうで、その店は一緒に行った私の友人も知っている人気店だった。しかし、糖尿病で店をたたむことになりこの自宅に戻ったが、料理を食べてもらいたいという情熱は冷めず、自宅をそのまま居酒屋にしてしまったという。

この日の料理は、ニシンの昆布巻き・マグロの皮の酢の物・刺身盛り合わせ・ウインナーと里芋のチーズ焼き・車麩の玉子とじの5品。さすが人気店を支えた腕前でどれも美味しい。しかも刺し盛りは、数人前にも思えるような量が出てきて、これで2000円とは信じられない豪華さだ。

また、店主の手が空いていてその日に仕入れがあれば、単品のメニューも注文できる。この日は美味しい牡蠣が手に入ったとのことで、いただくことにしたらこれもまた大粒でプリプリとした食感が美味い。

日本酒を注文すると、一般的なお店であればコップの下に敷いた升にまで酒を溢れさせるのが作法だが、ふくはら亭で日本酒を頼むとコップの下の升のもう一つ下に皿が敷かれ、皿にまで酒を溢れさせるという大盤振る舞いだ。

料理の提供が終わると、店主は隣の部屋でタバコを吸いながらテレビを見ている。音楽がかかっているわけでも無音でもなく、隣から漏れてくるテレビの音がBGMというのも実家っぷりをあげている。

美味い肴と酒で程よく酔っ払うと、この空間では横になりたくなる。友人はコタツでゴロリと腕枕。

こんな叔父がいたなと思い出す。その頃になると、はじめは違和感満点だった誰だか知らない人の仏壇も、親戚の爺さんくらいに思えてくる。試しにその前で写真を撮ってみるとこれがまるっきり、正月の親戚の集合写真だった。

この正月、帰省することができないが、ビタミンJをしっかり摂取できたことで深刻な実家不足は免れた。これは、再訪必至の良店だ。と、書いてみたが「店」という表現に違和感を持つほどに、ザ・実家だった。(Mr.tsubaking連載 『どうした!?ウォーカー』 第48回)

■ふくはら亭
東京都文京区大塚4-34-10
※完全予約制

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