被爆体験語り継ぐ 横須賀の市民団体 発足2周年

和気あいあいとした雰囲気の中、定例会で話し合う「被爆体験を語り継ぐ会」のメンバー

 横須賀市民らでつくる市民団体「被爆体験を語り継ぐ会」が、12月で発足から2周年を迎えた。メンバ-は当初の2人から15人ほどに増え、活動の幅も被爆者の話をまとめたDVDの観賞から核兵器の現状などを伝える展示企画などへ広がってきた。メンバ-の中には被爆体験の伝承者に名乗りを上げる人も。同会は「原爆の実相の継承に向けて、できることをやっていきたい」と話している。

 発足は2017年12月。同市在住の三澤幸子さん(71)が呼び掛けた。きっかけは、74年前の声が少しずつ遠ざかっていることへの危機感だった。

 三澤さんは、広島や長崎で原爆に遭った人に話をしてもらう活動を10年以上前から続けていたが、被爆者の高齢化に直面した。

 講師を依頼してきた人が他界したり、体が弱って会場まで来るのが難しくなったり…。「このままでは駄目だ。これからの人に被爆体験を残していく方法を考えなくては」と思い、講演の様子を撮影したDVDを活用しようと知人の沼崎真奈美さん(56)=同市=と会を立ち上げた。

 月1回の定例会ではこれまで、市民向けにDVDの観賞会を開催したほか、被爆者による講演も継続。DVDを基に体験談の書き起こしにも努めている。

 こうした取り組みへの賛同の輪は徐々に広がり、メンバ-は会社員や主婦らを加えた15人ほどになった。

 今夏には市民活動サポ-トセンタ-(同市本町3丁目)で展示発表を開催。原爆投下時の広島と長崎の町並みを再現した手製のジオラマや、核兵器の恐ろしさを伝える研究などを紹介した。いずれも各自がそれぞれテ-マを決め、主体的に励んだ成果という。

 一方、2年間の活動は効果や反響も生んでいる。DVDの観賞会を通じてメンバ-になった男性は、広島市を訪問。体験者に代わり、戦争や核兵器の悲惨さを若い世代に伝える同市の「被爆体験伝承者養成事業」に参加している。

 また、会の存在を知った横須賀市内に住む「被爆2世」は、亡くなった親が残した被爆瓦を会に寄贈。貴重な遺品は今夏の展示発表で展示物の一つとなった。

 その展示発表では、長崎で被爆した女性が来場。メンバ-が後日、その女性から家族にしか伝えてこなかった体験を聞くことにもつながったという。

 会の代表を務める沼崎さんは「地道に続ける中で思わぬ広がりがあった」と手応えを得る一方で、発信の難しさも感じている。

 「被爆者の声を伝える朗読劇の開催など、夢は広がるが、全員が素人。技術的に難しい面もある」。展示発表の場に、若い世代の姿がなかったことも課題として受け止めている。

 それでも、歩みを止めるつもりは全くない。「どんな形であっても被爆体験を次の世代に伝える方法を編み出せたら」と三澤さん。沼崎さんは「平和は命の問題。まずは核兵器がどれだけの暴力なのか知ってもらうきっかけをつくりたい」と前を向いている。

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