ゴールの数だけで評価すべきではないJのアタッカー5人

攻撃的な選手は基本的にゴール数で評価される。それがもっとも分かりやすい評価軸であり、アタッカーにとってゴール数は世界共通の名刺代わりになる。

しかし、中にはゴール以外での貢献が光るアタッカーも存在する。今回は、ゴール数などの分かりやすい数字だけでは正当な評価ができないJリーグのアタッカーを紹介する。

杉本 太郎(松本山雅FC)

今シーズンの成績:32試合3ゴール

今シーズンから加入した松本では、序盤戦はベンチスタートが続いたが、途中出場から出番を増やし、夏が来る前に定位置を確保した。

核となるセンターフォワードが不在で、得点力不足が顕著だった松本において、シャドーの位置から独力で相手守備陣を切り裂きにかかるドリブルはチームの武器となり、攻撃の突破口となっていた。

かつて世代別代表のエース格として活躍したエリートで、チームの主力としてJ1を戦うのは今年が初めてだったが、その輝きは随所で発揮されていた。

クラブは降格という憂き目に遭ったが、攻撃の流れを変える切り札としての立場を受け入れるのであれば、個人残留の可能性もある。

ルキアン(ジュビロ磐田)

今シーズンの成績:13試合1ゴール

攻撃の大黒柱だった川又堅碁が早い段階で離脱し、工夫の感じられないロドリゲス頼みとなっていた攻撃陣において、夏のマーケットではそのロドリゲスの移籍が決定。その大きく空いた穴を埋めることが期待されて獲得されたのがルキアンだった。

タイで得点を量産しているという、どう評価するべきか難しい経歴で、加入後3試合目に、スタンドにボールを蹴り込む奇行によって開始14分で退場した時には、またこの類のプレイヤーか、と感じたのは自分だけではないはず。

しかし、その後は悪目立ちすることなく、ダイナミズム溢れるプレイでチームの終盤戦の持ち直しを支えた。

1得点で終わったように、決定力には大きな問題を抱えているが、J2のレベルなら大暴れするタイプのストライカーと言えそうだ。

土居 聖真(鹿島アントラーズ)

今シーズンの成績:36試合6ゴール

優秀選手賞に選出され、終盤まで優勝戦線に残った鹿島を支えた印象は強いが、リーグ戦で記録した得点は5つ。また、これまでのキャリアで二桁ゴールを達成したことがないことも少し意外である。

しかし、土居の真価はゴール以外にある。「伝統の4-4-2」とよく表現されるが、土居はトップから少し下がった位置を取り、攻守のリンクマンとして機能する。

また、誰とでもコンビを組める柔軟性やサイドハーフでもプレイ可能な利便性もあり、攻撃の駒が豊富な鹿島においてその存在は欠かせない。

セルジーニョの中国移籍が濃厚とされているが、得点を取るために抑えるべきツボを知り尽くしている上田綺世との2トップが完成すれば、そのポテンシャルは計り知れない。

ドウグラス・ヴィエイラ(サンフレッチェ広島)

今シーズンの成績:25試合7ゴール

リーグ戦で7ゴールを記録したが、J2で見せていた得点力やACL出場権を争ったチームのエースとしてはやや物足りない数字だろう。

それでも、昨シーズンに20ゴールを記録していたパトリックをベンチに追いやって定位置を確保し続けたのには理由がある。

まず、パトリックとの決定的な違いは守備面にある。精力的にプレスに走り、ビルドアップの制限もうまい。城福浩監督の志向したサッカーには不可欠な能力だった。

また、長身を活かしたポストプレイも正確で、2シャドーや両ウイングバックの攻め上がりを助ける時間や起点を作り出す。若手の台頭が著しかった今年の広島だが、最前線はまだこのベテラン外国人を頼りとするだろう。

武藤 雄樹(浦和レッズ)

今シーズンの成績:25試合1ゴール

かつては得点力が最大の魅力だったが、今シーズンは負傷の影響もあってわずか1得点。チームも最終節まで降格の可能性を残し、今年のリーグ戦における明るい話題は興梠慎三の8年連続二桁得点達成くらいだった。

しかし、そのJ1新記録は、武藤の貢献があったからこそ。位置や体勢を含めてボールの受け方が秀逸で、相手の守備組織を混乱に陥れ、チャンスの起点を生み出せる。

いるといないではチームの機能性が大違いで、負傷離脱していたACL決勝や終盤のリーグ戦ではその不在が目に見えて明らかだった。

興梠との連携は職人の域で、他人が簡単に入り込めるものではない。鳴り物入りした杉本健勇の居場所が無かったのも頷ける。煩わしい表現になってしまうが、数字に表れないアシストの数が非常に多い選手だ。

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