古里から世界へ 教育振興に1億円寄付 11月死去の細野六郎さん

©株式会社上毛新聞社

 古里の群馬県伊勢崎市の教育振興のために1億円を寄付し、11月に病気で亡くなった細野六郎さん(東京都国立市)=享年92歳。大手種苗会社でプリンスメロンの開発などに携わり、退職後は若い世代を世界に羽ばたかせようと私財を投じた。伊勢崎市に贈られた浄財は中学生の海外研修事業などに活用され、国際人材の育成につながっている。

 「とにかく負けず嫌いで、思いついたら動かずにいられない性格だった」。細野さんのおい、細野正夫さん(74)=伊勢崎市太田町=は故人の人柄をこう振り返る。

 六郎さんは1927(昭和2)年に農家の六男として生まれた。市内の農業学校(現伊勢崎興陽高)に在学中、海軍飛行予科練習生に志願。終戦後は坂田種苗(現サカタのタネ)で、キャベツやトマトの種子開発に取り組み、専務を務めた。

 同社が海外に生産拠点を拡大するに当たって交渉役を任され、国内外を奔走した。外国企業との取引で悔しい思いをした経験が、英語教育の重要性に気付くきっかけとなった。

 2012~13年に伊勢崎、横浜、国立の各市に教育目的で1億円ずつ寄付。伊勢崎市は13年度にグローバル人材育成奨励基金を立ち上げ、12年度から始めた中学生海外語学研修の参加費用の助成に活用している。

 今年8月、姉妹都市の米国ミズーリ州スプリングフィールド市を訪れた伊勢崎四ツ葉学園中等教育学校3年の大塚大智(だいち)さん(14)は、地元州立大での研修やホームステイを体験した。「本場の英語を聞くことで、リスニングの課題に気付けた。何より積極的に挑戦する姿勢が身に付いた」と実感を込める。

 基金から毎年約1000万円が拠出され、計480人の中学生を海外に送り出してきた。このほか、留学費用として10人以上が活用している。基金はあと3年ほどで底をつき、事業を続けるかどうかは未定という。伊勢崎市の徳江基行教育長は「生徒も教員も英語の表現力が向上し、市全体の教育の質を高めている」と研修を評価。その上で「今後も中学生のチャレンジを支えたい」と故人の遺志を引き継ぐ方策を検討している。