世の中にはとんでもない犯罪者がいる(写真はイメージです)
都内にある大型雑貨店で商品を見ていた被害女性Aは、背後になにか違和感を感じて振り向きました。彼女のすぐ後ろに、陰茎を露出し握りしめている見知らぬ男が立っていました。
「何やってるんですか! やめてください!」
そう声を挙げると男は、
「すいません、すいません」
と繰り返しながら陰茎をズボンにしまいました。この時彼女が着ていたカーディガンには男の精液がべったりと付着していました。
Aはその後、警察官への取り調べに対して、
「男の人が怖い、気持ち悪いという偏見を抱くようになってしまいました」
と答えています。
この事件で逮捕された加藤朗希(仮名、裁判当時30歳)は都内の専門学校に通う学生でした。逮捕後、余罪も判明しその事件でも起訴されています。こちらの犯行の舞台は都内の大型書店です。本を立ち読みしていた被害女性Bを見かけた彼は、
「いい匂いがしたのでとても興奮しました。匂いを嗅ぎながらオナニーをしたくなりました」
という理由でBに背後から近づき、スマートフォンで後ろ姿を盗撮した後にBの髪の毛の匂いを嗅ぎながら自慰行為をはじめました。そしてBが背負っていたリュックサックに精液をかけて現場を去りました。
起訴されたのは2件の事件だけですが、逮捕前の半年の間に他にも10件以上の余罪があると見られています。犯行現場はだいたい同じ雑貨店か書店です。
「バレにくいと思ったのでよく盗撮をするために行っていました」
と供述しています。押収されたスマートフォンには、盗撮したものと思われる画像が多数保存されてました。
彼には類犯前科がいくつもありました。
初めて捕まった時は迷惑防止条例、盗撮です。女性の靴に精液をかけ器物損壊で捕まったこともあります。最終前科は「下着の匂いを嗅ぐために」女性の住居に侵入した建造物侵入で、この時には実刑判決がくだされています。
そして、出所してから約半年後に今回の事件での逮捕となりました。
過去、裁判を受けるたびに「病院に行って治療をする」「もう二度と繰り返さない」と言っていたようですが、結局彼は病院には一度も行くことはなく今回の事件を起こしました。
弁護人、検察官、裁判官は犯行動機や、何故自分を抑えられないのか質問を繰り返しました。それに答える彼の言葉からは、とても理解しがたいほどに認知が歪んでしまっているのを感じました。
「自分の性欲を満たすためにやりました」
「髪の毛の匂いを嗅ぐとやりたくなってしまいます」
「その時は興奮していたので、精液をかけると女性が嫌がるとか気持ち悪い思いをさせるとかは…考えられなかったです」
「女性が何をしたら嫌がるのか、それをしっかり考えていなかったからやってしまったのだと思います」
「盲目的になっていて、もし捕まったらとかそういうことを想像できませんでした」
「前は示談で済んだこともあったので、最悪お金を出せば許してくれるという考えも多少ありました」
何度も捕まり、服役まで経験した人間の言葉とはとても思えません。彼が言っている過去に行った「示談」ですが、この示談金を払ったのは父親です。父親は「大変な病気」で「もう長くない」そうです。それでも今回の裁判の弁護士費用を払ってくれています。
そして今回の裁判でも、過去に法廷で何度も口にしながら守られることのなかった誓いの言葉を話していました。
「出所後は病院に行って治療を受けます」
「もう二度と繰り返しません」
次の被害者を出さないためにもこの言葉が守られることを願っています。願ってはいますが…。
犯行時、彼は調理師免許取得を目指して専門学校に通っていました。
「おいしい料理で人に喜んでもらいたい」
という夢のためです。逮捕されたことで専門学校は辞めざるを得なくなりましたが、出所後は再び調理師を目指すそうです。
彼がどんな「人に喜びを与えられる人間」像を思い描いているのか、傍聴席で観ている限りでは全く想像もつきませんでした。(取材・文◎鈴木孔明)