「優越的地位の乱用」

 今年、経済ニュースでしばしば見聞きした言葉の一つに、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」がある▲強い力を持つ企業が、その力関係を背景に、取引相手に一方的に不利な契約や条件変更をのませる行為のことだ。公正取引委員会がそう認定すれば、行政処分の対象になる▲その一例が、コンビニエンスストアの24時間営業を巡る議論。客が少なく人手の確保が難しい時間帯にオーナーが店を閉めたいと求めても、なかなかそれを容認しないフランチャイズ本部の姿勢を、問題視する声が上がった▲インターネット通販の楽天市場は来年3月から、一定額以上の購入を送料一律無料とする方針だが、それについても同じ指摘がある。今まで自由に送料を決めてきた出店者は「店に送料負担を強いるのか」と反発している▲IT関連や芸能界などフリーランスが多い業界からも、取引先から不合理な契約を強いられて泣き寝入りしたという訴えが上がる。そんな人々にとって、「強い立場を利用した不利益の押しつけは許さない」という法律の規定は頼もしく映ることだろう▲強者と弱者の取引であっても、弱者の立場は公正に守られる。そんな社会であってこそ、誰もが安心して事業を営むことができ、経済活動が回る。来年がそんな年になってくれることを願う。(泉)

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