北東アジア平和へ 教材・教育課程を開発 長崎大レクナとICU 包括連携協定 日韓の人材育成

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)と国際基督教大(ICU)平和研究所は、日本と韓国の大学向けに「平和・軍縮教育」の教材・カリキュラムの共同開発に取り組む。日韓関係や北朝鮮の非核化が重要課題となっている中で、北東アジアの平和構築に貢献する人材を育成したい考えだ。
 両大が3月に結んだ包括連携協定の一環。世界の核情勢や原爆関連の教育・提言に特徴を持つレクナと、紛争や人権、貧困、環境など幅広い分野の平和研究・教育で実績があるICUがノウハウを持ち寄る。知識を学ぶだけでなく、行動する力も育む。
 これまで核拡散防止条約(NPT)再検討会議の関係文書や核兵器禁止条約の条文で軍縮教育の促進がうたわれてきた。だが具体的な手法や成果の評価などに関する体系的な研究はほとんどないのが実情という。
 構想では来年春、日韓の教育の現状と課題、ニーズの調査に着手。歴史認識や平和観の違いを互いに理解し、北朝鮮非核化などの共通課題に向き合うために効果的な教材・カリキュラムを検討する。両大や、連携する韓国の大学で試験運用し、他の大学にも広める。
 今後2、3年かけて調査や実証研究を進めた後、開発した教材・カリキュラムを日韓の多くの大学に普及させたい考えだ。
 レクナの吉田文彦センター長は「北東アジアの平和は正面から取り組むべき課題だ。日韓の学生の交流など新たな動きが出ることを期待している」と話す。ICU平和研究所の笹尾敏明所長は「頭でっかちではなく、考え、実践できる学生を育てたい」としている。
 レクナは将来的に、長崎市など世界7800超の都市でつくる平和首長会議などと連携し、国内外のさまざまな教育や講座の現場で使える核軍縮教育プログラムの開発も目指している。

◎長崎大とICUの連携

 戦時中、長崎市の長崎大文教キャンパスには1941年12月の真珠湾攻撃で使われた航空魚雷を製造した三菱長崎兵器製作所大橋工場が立ち、東京都三鷹市の国際基督教大(ICU)のキャンパスには真珠湾攻撃の日に着工された軍用機メーカー中島飛行機三鷹研究所があった。両大は3月に包括連携協定を締結。平和の現在・過去・未来を考えるため「グローカリゼーションと持続可能な開発目標(SDGs)」「長崎歴史文化(世界遺産)」「平和」の3分野で共同研究を進める。

© 株式会社長崎新聞社