「さよなら たりないふたり」演出・安島隆&構成・佐藤満春に直撃!【前編】「若林さんがいきなり漫才を始めちゃって裏方が超バタつきました(笑)」

「さよなら たりないふたり」演出・安島隆&構成・佐藤満春に直撃!【前編】「若林さんがいきなり漫才を始めちゃって裏方が超バタつきました(笑)」

2012年の4~6月、そして14年4~6月まで日本テレビで深夜に放送された伝説のバラエティー「たりないふたり-山里亮太と若林正恭- The (without) gentle and The (without) sociability.」をご存じですか。同局が主催するお笑いライブであり、後にテレビ番組として放送された「潜在異色」のスピンオフとして誕生したこの企画は、人見知りで、社交性・恋愛・社会性が足りないと知られている南海キャンディーズ・山里亮太さんとオードリー・若林正恭さんが、自身のコンプレックスを存分に生かし、漫才やコントを披露する内容の番組です。山里さんと若林さんは、“恋愛”や“結婚”というご自身の得意分野ではないテーマにおいても、人並み外れたひがみや妄想をさらけ出して、それを笑いに昇華してきました。

テレビでのレギュラー放送が終わった後は、それぞれ「たりないふたり-山里亮太と若林正恭-presents たりふた SUMMER JAM ’12 -We wanna be a human ASAP!-」(12年)、「たりふた SUMMER JAM ’14 -山里関節祭り-」(14年)といったタイトルのライブで番組ファンと顔を合わせました。そして、今年の11月には5年ぶりに「さよなら たりないふたり ~みなとみらいであいましょう~」というライブを開催。ライブが行われる数カ月前、“たりない”側の1人だった山里さんは電撃結婚を発表し、“山里たりてる説”が浮上するほど世間を驚かせました。山里さんが結婚発表される前からしばらく公私ともに関わることがなかった“たりない”2人は、ライブの本番まで丁々発止のやりとりを繰り広げ、いよいよ本番を迎えるわけですが…。なんと、ライブ前の打ち合わせはなく「ならば舞台上で打ち合わせを」というスタッフからの提案を若林さんがすっ飛ばし、ぶっつけ本番で即興漫才を披露されたらしいですよ!

「打ち合わせなしのぶっつけ本番」の約80分と20分にわたるこのライブは、お笑いライブ史上最高館数の53館でライブ・ビューイングも実施され、およそ1万5000人の観客が山里さんと若林さんの漫才を見守りました。そんな中、イベントを見ることができなかったファンのテレビ放送を望む声も殺到し、ついに今夜テレビで放送されます。

番組をご覧になる前に「たりないふたり~」テレビ版や舞台版の手掛けた演出家の安島隆さんと、番組の構成を担当する“サトミツ”こと佐藤満春さんに、番組のことや山里さん&若林さんのことをたっぷりと伺いました!

── 11月3日に行われた「さよなら たりないふたり」をご覧になって、お二人の目にはどのように映りましたか?

安島「山ちゃんと若林くんが本当に打ち合わせをしていなくて…というよりも、9カ月くらい会ってなかったんです。まったくコミュニケーションがないという状態でライブが決まったので、2人ともすごく忙しいこともあったし、それならこのまま会わずに本番を迎えてどうなるのかを演出したいと思って。僕自体もどういうふうになるのか読めていなかったので、普通にお客さんとして楽しみましたね(笑)」

佐藤「今回、こういう形で5年ぶりに『たりないふたり』をやることになって。僕は作家という形で入りましたけど、2人の一ファンとして楽しみにしていたんです。それで安島さんが1回も打ち合わせをしない形を取ると言った時点で『頭おかしいのかな?』って(笑)。2人とも本当に天才だし、『どうにかなるだろう』って安島さんが言うんだから、何か見えているんだろうなと思いました」

安島「元々想定していたのが、1時間2人で話し合いをして、20~30分くらいの漫才をする。それを振り返るトークをして、全部で2時間くらいで終わるということだったんです。ところが、開始して5分経ったくらいで全くネタの話をしないまま若林くんがいきなり80分くらい(の漫才を)始めちゃったんです。それがちゃんとした漫才になっているんですよ。終わった後に、サトミツが反省会用にホワイトボードに書き込んでおいたことに全然触れずに、若林くんが『もうちょっと漫才やれるんじゃないか』って。急きょもう1本やることになって…30分くらいかな。彼らは計2本漫才をやっているんですよ。それは想定していなかったので、どうなるんだろうってドキドキしていましたね。ライブビューイングが全国の映画館であったので、そのあたりの段取りは大丈夫なのだろうかと…。裏方なのでそれを考えてしまいましたね(笑)」

佐藤「何が起こるか分からないまま当日を迎えて、1時間打ち合わせするはずの時間を若林くんが勝手に5分にして、いきなり漫才を始めちゃって裏方が超バタつくという(笑)。その漫才が長くて、しかも全部が面白くて。本来の漫才はしっかりと台本に落とし込んで、“ボケ”と“ツッコミ”があって、その“間”を練習して作る作品ですよね。2人の掛け合いや間の妙で見せるものじゃないですか。それをその場で、その時思いついたことを若林くんが言って、山ちゃんが絶妙な間で突っ込んで…。誰も止めなかったら夜中までやり続けるんじゃないかっていうくらいなんです。それなのに窮屈じゃないというか、ずっと爆笑を取り続けてたから。2人のことは天才だしすごいと思いっていましたけど、怖くなるくらい…(笑)。エンターテインメントをスタッフとしても楽しめました」

安島「さっきサトミツが『安島さんが見えているんだろう』って言っていたけど、結論からすると見えてなかったという(笑)」

佐藤「そこを決断するのも演出家の勇気だろうし。事前に打ち合わせしてからやるものに比べて、より面白いものになっていると思うんですよね。山ちゃん、若林くんの絶妙な距離感の2人がいて、そこに安島さんが間をうまく取っていて、それが大いにはまった日でしたね。2人ともすごい売れっ子で、ギャンブルみたいな挑戦をする必要がないのに、わざわざ大ばくちを打つというのが頭おかしいなって思いましたね(笑)」

安島「だから、全員安心感がない中で本番を迎えるっていう…。ダメですよね、本当は(笑)」

── 80分も漫才が続いたとのことですが、見ている方も体力を必要とすると思います。それでも爆笑が続いていたということでしたが、お客さんの反応はいかがでしたか?

安島「お客さんからはいい反響しかないです。とにかく『すごかった』『面白かった』って、皆さんSNSでつぶやかれてますね。2人が披露したのは、ドキュメント性が高い漫才なんですよ。ずっとお互いを削り合うような、さらけ出すような(笑)」

佐藤「『たりないふたり』はずっと前からやっていたので、昔からファンでいてくれていた人もたくさんいらっしゃって。年を重ねてきて環境が変わっても、今回見に来てくださった方もいらっしゃるだろうし。そんな人が今の『たりないふたり』を見て…というドラマもあったのかもしれません。新たに知ってくださった方は、記念すべき出合いとして面白く見てくださったと思うんですけど、昔の2人を知っている人からすれば“面白”のさらにもうちょっと先にある何かが見えたのではないかと…。」

安島「2009年から『たりないふたり』が始まっているので、今年でちょうど10年なんですよ。そんな年に山ちゃんがすごい方と結婚して」

佐藤「今2人がどんな話をするんだろうという興味がわれわれにもありますし、元々見てくださっていた方もそこに興味があると思うんですよね。2人が普段連絡を取り合ったりしないというのが、よりよかったのかなという感じはしますね」

── ライブを終えた山ちゃん、若林さんはどんな様子でしたか?

佐藤「若林くんは、終わってすぐに帰ったんですよ(笑)。打ち上げ的なものにも行かずに。それで、僕と一緒にチェーン店でカレーを食べて。食事の時に言っていたのが『もう舞台上で全部言っちゃったからな』と。『打ち上げで今さら話すこともないし、(山ちゃんから)全部聞いたし』という感じでした」

安島「山ちゃんは当然飲みに行くだろうと思ってたはずです(笑)。打ち上げで山ちゃんはとにかくご機嫌で、ずっとエゴサーチしていましたね(笑)。酒が進んでいたし、すごい充実感があったと思うんですよね。今回は漫才が2本あって、その2本目のところで僕らが想像する漫才を越えるドキュメントのような語り口のところがあるんですよ。山ちゃんの芸人という部分に加えて、1人の男性としての生きざまを吐露する部分があったんです。それをできたということに対して、山ちゃんはすごく充実感があったようですね。お客さんも共感して笑ってくれたし。その吐露のところは編集していて振り返ると、僕も泣いてしまいますね(笑)」

佐藤「僕と安島さんは舞台袖で、逆側にいて見ていたんですよ。山ちゃんの独白があって、安島さんを逆から見ると泣いていて、それを見て僕は泣いてしまったんですよ(笑)」

── お客さんもそういう反応だったんですか?

安島「はい、『泣ける』とか『感動した』とか」

── そんな中での若林さんはどんな反応でしたか?

安島「正直言うと、僕もサトミツも横から見ているので、若林くんの顔とかは見えてなかったんですよ。僕は後から映像を見て『おお!』と思ったので、ぜひ放送を見ていただきたいですね」

佐藤「いい告知だ(笑)」

安島「あの部分は『たりないふたり』をあまり知らない人でも、『山里ってこういうことを思っていたんだ』とスッと入ってくるようなお話だと思います。あくまでも漫才の中で、それをやっているんですよ。漫才の中で山ちゃんが吐露せざるを得ないところに追い込んでいった若林くんが、どれだけ意図してやっていたのかは分からないですけどね」

たくさん裏側をお話いただきましたが、まだまだ紹介しきれなかったので、後編で山里さんと若林さんのよりディープなことをお届けします!

【プロフィール】


安島隆(あじま たかし)
日本テレビ所属の演出家。バラエティー番組や舞台などの企画および演出を担当。オードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太に番組「たりないふたり」(2012年4~6月)、「もっとたりないふたり」(2014年4~6月)をはじめ、若林と水卜麻美アナウンサーがMCを務めた「犬も食わない」、田中圭と千鳥・ノブがタッグを組んだ「凄技!仮スマ動画」など、多数のバラエティー番組を手掛ける。11月3日に横浜で行われたライブ「さよなら たりないふたり ~みなとみらいであいましょう~」の企画・演出も担当する。

佐藤満春(さとう みつはる)
お笑いコンビ・どきどきキャンプのメンバーとして活動するかたわら、「たりないふたり」や「スッキリ」(日本テレビ系)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など、さまざまな番組の構成作家としても活躍中。現在、bayFm「ON8+1」の火曜パーソナリティーも務めている。

【番組情報】


「Hulu傑作SP『さよなら たりないふたり』」
日本テレビほか
12月30日 深夜1:59~2:59

放送終了後、完全版をhuluにて配信
https://www.hulu.jp/tarinai-futari

ライブグッズを「日本テレビ屋web」にて数量&期間限定で販売!
https://www.ntvshop.jp/shop/g/g210-bz00149-01/
※2019年12月30日午前10時~販売開始

日本テレビ担当 K・T&Y・P

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