昨季MVP・早田ひな、劣勢をひっくり返した2つの戦術転換<TOP名古屋vs日本生命>

写真:早田ひな日本生命レッドエルフ)/提供:©T.LEAGUE

Tリーグの見逃せない名勝負をラリーズ編集部独自の視点で解説する【T.LEAGUE 名場面解説】。今回は12月28日のノジマTリーグ・TOP名古屋(以下、トップ)vs日本生命レッドエルフ(以下、日本生命)の一戦から、第4マッチの梁夏銀(ヤンハウン・韓国)と早田ひなの試合にスポットライトを当てる。

梁夏銀(ヤンハウン)は、今シーズンの8月28日にTOP名古屋からの参戦が発表され、今季ビクトリーマッチを含めシングルスに4戦出場し未だ初勝利を挙げてはいない。しかしながら、鈴木李茄と組んだダブルスでは2勝1敗と成績を残している。

対する早田ひなは昨シーズンからTリーグに参戦し、ファーストシーズンMVPに輝いた。2019年に入ってチャレンジシリーズで5度シングルス優勝を果たしており、2月のポルトガルオープンでは中国主力の劉詩雯(リュウスーウェン)を破ったこともあるなど、国際大会で成績を残している。今シーズンでも6勝を稼いでおり、チームの首位に貢献している。

今回の試合では早田ひなが3-2で梁夏銀に勝利し、勝利数がサウェータブット スターシニー(日本ペイントマレッツ)と並びトップになった。0‐2と追い込まれた状態から早田が勝利を引き寄せたポイントはどこか解説する。

ノジマTリーグ TOP名古屋 対 日本生命レッドエルフ:梁夏銀VS早田ひな

詳細スコア
梁夏銀 2-3 ○早田ひな
11-10/11-4/8-11/5-11/8-11/

1.ミドルへのサーブで相手のレシーブを限定する

図:早田のサーブのコース/作成:ラリーズ編集部

1、2ゲーム目は早田のフォアの強打を嫌った梁夏銀が早田のバックハンドを狙いミスを誘う。バックを思いっきり振れない早田はフォアの展開に持っていけず0‐2とリードを許す苦しい展開となっていた。

後がなくなった3ゲーム目、8-5とリードされる展開から早田はサーブのコースをミドルに変更した。梁夏銀のようなリーチの長い選手にとってフォアサイドを切るようなサーブは取りやすく、早田の得意な展開に持ち込むことが出来ない。

そこで、梁夏銀のバックへの厳しいレシーブにミスが出ていた早田はミドルへ出すことに変更。梁夏銀は角度をつけられず、バックの厳しいコースにレシーブを送れなくなってしまう。結果早田のバックも入り始め、6連続ポイントで早田が逆転で3ゲーム目を奪った。

2.前陣でのコンパクトなバックハンド攻撃

図:早田のサーブからの展開/作成:ラリーズ編集部

早田の武器は前中陣での女子離れしたパワーによるフォアハンド・バックハンドである。バックサイドからサーブを出し、積極的にフォアで振っていくのがいつもの早田の展開でもある。

1,2ゲーム目は大きく振りすぎて空振りをしたり、中途半端な振りでネットにかかるなどのミスが出ていた。バックのミスの多さから、ミドルサイドからサーブを出し前陣で両ハンドをコンパクトに振る作戦に変更。

前陣でバックを振るため早い打球点で梁夏銀を押し込むことが出来る。1、2ゲーム目は梁夏銀が前陣、早田が中陣で戦っていたのが、4ゲーム目以降早田が前陣でのプレーを増やしたことで梁夏銀が中陣に押し込まれ、ラリー戦で早田が有利となった。

文:ラリーズ編集部

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