【随時更新】青春と無縁でも18きっぷで旅をしたい 2019冬帰省編(3)大晦日は温泉でのんびり

青春18きっぷでお家に帰ろうというこの企画もそろそろ完結。三日目は敦賀から城崎温泉を経由して福山へ向かいます。

昨晩七尾から敦賀へ向かったときは金沢行きの列車が遅れて金沢乗り換えのタイミングで何も食べられず急いで買った駅弁の柿の葉寿司が美味かったなあ、という話しか出来ないので割愛。今朝の始発で敦賀から東舞鶴へ向かった際も乗った瞬間に寝入ってしまい気付けば東舞鶴に。疲れが出てきていますね……?

東舞鶴に駅そばはありません。駅付近で朝食をいただこうとすると商店街で開いてる喫茶店を探すことになりますが、乗り換えに間に合うかどうか怪しかったので、駅構内のセブンイレブンで鯖寿司とキリマンジャロブレンドを買って車内でいただくことにしました。

舞鶴といえばかつて舞鶴鎮守府が置かれた軍港の町。舞鶴線は日露戦争の勃発した1904年に開業し、軍港への輸送を担いました。東舞鶴の隣の西舞鶴は京都丹後鉄道(丹鉄)の起点でもあり、ここから天橋立などに向かうのも面白いでしょう。写真は舞鶴線の113系。

福知山では乗り換えの時間があるので暫し外に出て街の様子を堪能します。

福知山駅南口のC11

 

福知山駅の南口を出ると、C11形蒸気機関車が展示されていました。

C11 40は1933(昭和8)年に川崎車輌株式会社で製造された小型の機関車です。1944(昭和19)年から1956(昭和31)年まで篠山線を走り、1972(昭和47)年から篠山市旧丹南町の公民館広場に展示。2007(平成19)年に福知山へ。転車台は福知山機関区で使用されていたものです。

いざ城崎へ

ここから先は10時12分発の城崎温泉行きに乗車。

山陰本線は福知山から一駅先、上川口のあたりから牧川に沿うように走り始めます。下夜久野〜上夜久野間では、山間を縫うように走っていたかと思うと、いつの間にか牧川の川面が視界に飛び込んでくる。春頃には桜も咲きますし、フォトスポットとしてもかなり映える場所ではなかろうかと思います。

播但線と接続する和田山駅では大勢の乗客が乗り込んできました。播但線といえば特急「はまかぜ」。この時期はJR西が「かにカニ日帰りエクスプレス」というカニ料理を日帰りで堪能する旅行商品を発売しているため「かにカニはまかぜ」号が走っています。

ゆるい名前ですが実はこのかにカニ、20年以上続くJR西日本の大人気ロングセラー商品だそうで……お申し込みは2名以上からなので「漢は黙って18きっぷ」みたいな限界旅行を楽しんでいる記者には縁のない話というのが悲しいところではありますが。

また今年「天空の城 竹田城址号」がリニューアルし、新観光列車「うみやまむすび」になったのも記憶に新しいかと思います。出発式の様子は鉄道チャンネルの記事にあるのでよかったら見ていってくださいね。

城崎にて

志賀直哉が山手線の電車にはねられて湯治へ向かったとされる城崎温泉に着きました。観光地仕様の可愛い駅舎です。

天気は不安定で雨が降ったりやんだりの繰り返し。でも駅前には城崎温泉だけで使える貸し傘があるため濡れずに観光出来るようになっています。最近「アイカサ」という”LINEで雨の日に傘を借りられる”サービスを取材した折にも感じたことですが、貸し傘サービスが充実していると傘を持ち歩く必要もありませんしいざというときに買わなくても済むから大変ありがたいですね。観光地側の立場としてもそこら中にビニ傘を捨てられるよりは貸し傘を充実させた方が良いのでしょう。

城崎駅周辺には七つの湯があり、全て徒歩で回れる程度の場所に集中しています。その気になれば数時間で全ての湯をコンプリートするのも不可能ではありません。記者は城崎温泉11時33分着、14時57分発予定にしておよそ3時間半の余裕を持たせていました。20分ごとに次の湯へ移ればギリギリ間に合う計算です。

ただ、現在は「御所の湯」が設備の問題で休湯中、また「柳湯」と「まんだら湯」は普段は15時からということで、この旅程ではどうあがいても入れません(御所の湯の休湯を受けてまんだら湯が朝から入れるようになっていました。他の湯の営業時間や臨時開業日も変わっているので、事前に下調べをしてから行くべきでしょう)。いずれにせよ3時間程度で湯巡りタイムアタックに挑むのは忙しなさ過ぎるということで、今回は「地蔵湯」「一の湯」「まんだら湯」に入ることにしました。

まずは手早く駅近の「大黒屋」さんで腹ごしらえ。

醤油など一切必要ないカニの旨味を堪能。五分もかからずに出てくる提供スピードもありがたい。カニ味噌などは頼みませんでしたが、これは物足りなければ通りで美味そうなカニ物件を買い食いして回ろうという算段から。城崎温泉ではふらっと入ったお店に志賀直哉の直筆の手紙が展示されていたりするので、行き当たりばったりの散歩もいいものですよ。serendipity、みたいな?

湯巡りしていてちょっと面白いなと思ったのが城崎温泉のシステム。PayPayでの支払いに対応しています。また全ての湯に入ることの出来る「1日ぐるっと、入り放題 外湯めぐり券」は大人1,300円ですが、名刺大のチケットに印字されているのはなんとQRコード。これを入り口の読み取り機にピッと読み取らせます。

外国人観光客の姿はあまり見かけませんでしたが、各店舗の看板にも当然のように英語メニューが評価されていますし、インバウンドの取り込みに気合を入れている様子が伺えます。

温泉寺も見に行きました。城崎温泉駅から最も遠い外湯「鴻の湯」のすぐそば。駅から徒歩で20分くらいでしょうか。

城崎温泉ロープウェイはタイミングが合わず乗れなかったので徒歩で山頂へ向かいます。18きっぷ旅行三日目、MacBook Airも背負っている状態でぬかるんだ階段を登るのはインドア派には厳しいものがあり、山頂から降りる頃にはすっかり汗だくで膝が笑っていました。もし湯巡りに温泉寺を追加するなら素直にロープウェイを使うか、最初に山頂まで登ってから各温泉を巡るべきでしょう。湯巡りタイムアタックなら初手温泉寺は定石。

温泉寺から帰る道すがら、城崎かにまん(カニ焼売みたいなお味……)やちまき、アイスクリームに日本酒をかけるなどしたもの、甘酒などをいただきました。時間の都合上温泉卵体験はスルーしてしまいましたが、そこはロープウェイや今日入らなかった湯と合わせてまたいつかリベンジするつもりです。

城崎温泉は駅の近くに観光施設が集中しているおかげで三時間でもかなり楽しめました。もし日帰りで朝から晩まで滞在したら全ての湯をコンプリートした上で駅周辺を遊び尽くすくらいのことは出来るんじゃないでしょうか。これにカニ料理も付ければ日帰り旅行としては非常に満足度の高いものになりそうで、かにカニがロングヒット商品になった理由がよく分かります。まあ城崎温泉以外のエリアもありますけどね、かにカニ。

智頭急行には乗りません

今回は18きっぷを使う旅ですので、智頭急行線は使いません。山陰本線から因美線、津山線、山陽本線と乗り継いで実家を目指します。まずは山陰本線で浜坂を経由して鳥取へ。

城崎温泉を出て山陰本線で浜坂まで向かうと、一駅先の竹野のあたりから海岸線沿いを走り始めます。メモが吹っ飛んでしまったので正確な場所が分かりませんが、写真は香住〜鎧付近の車窓からの眺め。山間部と海沿いを通る山陰本線の冬景色は侘び寂びにも通ずる美を備えており、なるほどこれは「鉄道ひとり旅 偉大なる山陰本線編」も再販するわけだと膝を打ちました。

浜坂で鳥取行きへ乗り換え。猶予は2分しかありません。そのまま山陰本線で鳥取へ向かい、16時47分に到着します。

鳥取駅では特急「スーパーはくと」と遭遇。じっくり見る時間はありませんでしたが、HOT7000系気動車の非貫通顔は塗装も形状も良いですね。ヒゲのように見えるワイパーが可愛らしさと親しみやすさを生んでいると思いませんか?

さて鳥取からは因美線で智頭へ。17時50分頃着。陽が落ちて外の景色が見えなくなってきました。

智頭から津山は因美線快速で。どこかで見た顔だと思ったら一昨日も見たキハ120形です。慌てて撮ったので見切れています。仕方がないので津山に着いた時の方向幕が回る様子を……ってこっちも見切れてる(笑)

津山には時間通りに19時3分着。岡山行きは19時11分発と少し余裕があるので、急いで改札外に出てトイレを済ませ、セブンでたこめしおにぎりを一つ購入。朝晩の飯時に長距離列車に乗るとこうなるという良い例です。

思い返して見れば初日の駅そば、氷見の寒ブリ、二日目夜の駅弁として買った柿の葉寿司、カニちらし以外はこんなんばっかりで「俺は年の瀬に一体なにを……」という気持ちにならなくもなく。でもこれが18きっぷの旅なんだよなあ。

岡山駅には「津山まなびの鉄道館」の宣伝パネルがありました。今回は夜ということもあり立ち寄りませんでしたが、いずれ時間を取って見に行きたいものです。

黄色い電車だらけの山陽線ホームに行くと、今度はキハ115系がお出迎え。行先の「糸崎」は今回使用した青春18きっぷを購入した駅です。このまま終点糸崎まで行けば綺麗にオチが付きそうなものですが、今日中に実家に帰らないとおじさん(のお年玉)と会うのを楽しみにしている甥と姪を悲しませてしまう。

というわけで今回の18きっぷ旅はこれでおしまい。お疲れ様でした。せっかくなので最後に今回の走行距離と18きっぷを使用しなかった場合の料金合計でも出しておこうかな……と思いましたが事前に用意したメモが飛んでしまった上に疲れて計算を間違えそうなのでやめておきます。気になる人は出してみて。

2019年も今日でおしまいです。今年入社したばかりの新米が言うものでもないとは思いますが、2020年も「鉄道チャンネル」をよろしくお願いします。

記事/写真:一橋正浩

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