故郷を想う 県内ウイグル人の訴え(上) 生きていてくれれば…

市民ら25人が参加したウイグル問題の講演会=11月23日、逗子市内

 新疆ウイグル自治区で続く中国政府の少数民族ウイグル人への弾圧政策に、国際社会が批判を強めている。「このままでは故郷のウイグル人は全員、収容所に入れられる」。講演や地域活動などを通じ、支援と理解を求めて訴え続けている在日ウイグル人らの想(おも)いを伝える。

 「何か罪を犯したわけではない。ウイグル人というだけで逮捕され、強制収容所に送られる」「習近平国家主席や中国共産党を崇拝するよう(ウイグル人を漢民族と同化させる)漢人化教育を強制されている。拷問などで死者も相次いでいる。民族浄化そのものだ」

 11月23日、神奈川県逗子市の逗子文化プラザ市民交流センターの会議室。関東在住のウイグル人男女4人が市民25人の前で語気を強めた。いずれも現地での弾圧の実態や家族らの窮状を広く伝えたいとの思いだった。

 古代東西交通路「シルクロード」の要衝として栄えた中国最西部の新疆ウイグル自治区は、独自の歴史と文化を持つ。ウイグル人の大多数がイスラム教徒とされ、中国政府の支配が半世紀以上も続いている。

 国連人種差別撤廃委員会は昨年8月、テロ対策名目で多数のウイグル人が不当に長期間拘束されていると指摘。思想改造する収容施設の存在の可能性にも触れた上で、収容者が100万人以上と推定されるとして直ちに解放するよう勧告した。

 日本に移住して14年になるグリスタン・エズズさん(35)=千葉県=の弟も、拘束された一人だ。2017年の夏、「勉強に行く」と言って連れて行かれたと姉に聞いた。その後は音信不通となっている。

 「22歳の弟は自動車の整備を日本で学ぶのが夢だった。収容所にいる数百万人の一人一人に私のような家族がいる。ただ元気で生きていてくれれば、それでいい」。涙ながらに訴えた。

 共同通信など世界各国のメディアが参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)による調査では、中国政府がウイグル人らを監視する大規模なシステムを構築し、行動を把握している実態が明らかになっている。

 日本国籍を有する日本ウイグル協会の賢慈ハイレット理事(52)=相模原市=は、日本にいてなお不安を感じる。「2カ月前まで毎週のように中国大使館を名乗る不審な電話がかかって来ていた。『おまえたちの行動は全て見張っているぞ』という脅しのようだ」

 ◆ウイグル人 トルコ人と同じテュルク系の民族で、多くがイスラム教徒。中国政府の統計によると、新疆ウイグル自治区を中心に約1千万人が住む。多数派である漢人中心の政策を強いられている反感から、2009年7月に区都ウルムチで大規模衝突が発生。中国政府は過激主義によるテロとして監視を強めている。在日ウイグル人団体「日本ウイグル協会」によると、日本には約2千人、県内には少なくとも数十人がいるとみられる。

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