名前に込めた平和の祈り 長崎大3年・入江和祈さん 若い世代 核廃絶「継承」

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「自分の名前に恥じない生き方をしたい」と話す入江和祈さん=長崎市、平和公園

 2020年は広島・長崎に原子爆弾が投下されてから75年となる。核兵器廃絶の願いが実現しないまま、被爆者がこの世を次々と去っていく中で、一筋の希望と言えるのは被爆者の思いの「継承」を志す若者たちの存在だ。「長崎原爆の日」の8月9日に生まれた長崎大多文化社会学部3年の入江和祈(かずき)さん(21)は、核兵器のない世界は可能と信じ、未来を見詰めて仲間たちと共に活動している。

 入江さんは福岡県糸島市生まれ。フリー編集者の母が「世界平和を祈り、間違いがふたたび起きそうなときは人々を導いてほしい」との願いを込めて「和祈」と命名した。「人はなぜ宗教の違いで争うのか」という問題意識があり、宗教学を学ぼうと長崎大多文化社会学部を進学先に選んだ。
 2年時の18年11月、核兵器がテーマの講義の一環で「第6回核兵器廃絶-地球市民集会ナガサキ」の実行委員長を務めた被爆者の朝長万左男さん(76)にインタビューした。そこで教わったのが「非核兵器地帯」という言葉だった。
 既に南半球など地球の半分以上が、核兵器を持たず、使わない非核兵器地帯になっていて、110以上の国・地域が属している。その事実を知り「世界はそんなに進んでいるのか」と驚いた。理想論と思っていた核廃絶という言葉が、自分の中で一気に現実味を帯びた。
 インタビュー後、長崎市で開かれた地球市民集会の分科会に参加し「若者をどう核問題に関わらせていくか」をテーマに議論した。ところが一部の年上の参加者は「若造が何を言うのか」と言わんばかりの態度で聞く耳を持つ意思が感じられなかった。「大人たちがこんな態度ならば核廃絶に対する若者の関心は離れていくばかりだ」との思いが込み上げてきた。
 地球市民集会では、長崎大の学生が、平和活動に関わる全国の若者をつなぐ組織「ユース・ネットワーク・フォー・ピース」(YNP)の設立を提唱した。若者が平和活動をしやすい環境をつくるという理念に賛同し、昨年4月に発足したYNPの設立メンバー7人の中の一人となった。
 昨年11月、長崎に来たローマ教皇フランシスコは「核兵器廃絶は可能であり必要」と世界に呼び掛けた。YNPは来崎翌日に開いたパネルディスカッションで、教皇のメッセージの意義を考え、未来について語り合った。今後も「楽しくカジュアルに考える機会をつくりたい。平和や核兵器の問題に関心のない若者たちを巻き込んでいきたい」と考えている。
 母が付けてくれた「和祈」という名前を普段から意識してはいない。だが、自分の名がふとした瞬間に自信や支えになっていると言う。核兵器のない平和な世界は母や被爆者だけでなく、地球上のたくさんの人の願いでもある。「自分の名前に恥じない生き方をしたい」と力強く誓った。