石川佳純との大接戦 勝利を掴んだ早田ひなの“勝負勘”とは<KA神奈川vs日本生命>

写真:早田ひな日本生命レッドエルフ)/提供:©T.LEAGUE

Tリーグの見逃せない名勝負をラリーズ編集部独自の視点で解説する【T.LEAGUE 名場面解説】。今回は12月30日のノジマTリーグ・木下アビエル神奈川VS日本生命レッドエルフの一戦から、第2マッチの石川佳純と早田ひなの試合にスポットライトを当てる。

先日五輪代表内定を決めた石川は、Tリーグでは木下アビエルの主力として6勝3敗(ビクトリーマッチ含む)と活躍している。3ヶ月ぶりの出場となった29日には李皓晴(リホチン・日本ペイントマレッツ)にストレートで快勝し、久々の舞台でも強さを見せた。

対するは1stシーズンMVPの早田。28日の試合で劇的な逆転勝利で7勝目を上げ、個人勝利数では2位につけている。首位を走る日本生命レッドエルフを引っ張る存在だ。9月の試合でも石川をビクトリーマッチで下し、チームを勝利に導いている。

今回の試合はフルゲームデュースまでもつれる大接戦となったが、3-2で早田が勝利した。ギリギリのところで勝敗を分けたポイントについて解説する。

木下アビエル神奈川対 日本生命レッドエルフ:石川佳純VS早田ひな

詳細スコア
石川佳純2-3 ○早田ひな
11-10/10-11/10-11/11-8/11-13

1.コースを読み切った勝負所のチキータ

図:早田のレシーブイメージ/作成:ラリーズ編集部

一つ目のポイントは第2ゲーム、早田から見て6-5の場面で繰り出したクロスへの強烈なチキータだ。それまで早田はフォア前への石川のサーブに対しほとんどフォアでレシーブしていたが、そのあとの石川の3球目攻撃に苦しんでいた。

第2ゲームは一進一退の攻防が続き、点差が離れずにいた。中盤1点リードの場面で早田は思い切ってフォア前を回り込み、それまで見せていなかったスピードのあるチキータを決めた。これにより早田は勢いに乗り、リードを広げた。

このような完全に相手のコースを読み切ったプレーはミスをすると相手に流れが傾きかねない。ハイリスクハイリターンの難しい戦術だが、早田は絶妙な勝負勘で完璧なタイミングで決めてみせ、流れを引き寄せた。

2.バックハンドとの連携でプレッシャーをかける巻き込みサーブ

図:早田のサーブイメージ/作成:ラリーズ編集部

1ゲーム目から早田は3球目バックハンドでの得点を重ね、石川に対して強く印象付けた。その起点となったのがミドルからの巻き込みサーブだ。

左利き同士のため、ミドル周辺への巻き込みサーブはバックハンドでバック側へレシーブするのが無難である。しかし、それでは早田の得意パターンにはまってしまう。加えて、早田は長短やコースに少しずつ変化をつけた配球で的を絞らせない。石川は試合が進むにつれ、無難でない、リスクのあるレシーブを求められるようになっていった。

結果として、強力な3球目という見えないプレッシャーが、マッチポイントでの1点を含めた最終ゲームでの2本のサービスエースにつながった。

まとめ

ほぼ互角の試合内容だった今回の試合。早田の要所での的確な判断と、序盤からの布石が最後に響く形となった。試合全体を通して“3ゲーム取るための戦術”という点で、学ぶべきことが多い内容だったと言えるだろう。

今回の勝利で8勝目となった早田、再び勝利数1位タイとなった。2020年のさらなる活躍に注目が集まる。

文:ラリーズ編集部

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